令和2年第1空挺団降下訓練始め

文・写真:nona


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4年ぶりではありますが、第一空空挺団降下訓練始めを見学しました。
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「降下訓練始め」とは、毎年1月の上旬に千葉県の習志野演習場で実施される、第一空挺団を中心とした諸部隊による空挺降下訓練です。

近年は地上展示に島しょ防衛(奪還)シナリオが組み込まれ、(2017,18年を除き)海自の哨戒機や戦車などの重装備も加わっており、2019年には水陸両用車と機動戦闘車が初めて参加しました。

2017年以降は米陸軍も演習に参加しており、本年は空軍のC-130J輸送機も始めて投入されます。

さながら総合火力演習のようなイベントになりつつありますが、「機動力の発揮」という点においては、降下訓練始めが総火演を上回っている、とさえ思えます。(ただ、機動戦よりも火力戦を好む人には物足りないかもしれません)

なお、NHKニュースによると、予行訓練中に一名の隊員が演習場外の野球用グラウンドに誤って降下するトラブルがあったそうですは、本番においては、そうしたトラブルはありませんでした。

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今回のスケジュール表ですが、開始時刻は1100頃と遅め。


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開始時刻を遅らせた理由ですが、おそらくは河野防衛大臣が習志野駐屯地にて飛び降り訓練体験をしていた為、と思われます。

現職の防衛大臣が飛び降り訓練体験をしたのは中谷氏以来、2人目だそうです。
時刻は1100頃と遅め。

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防衛大臣の臨席と部隊長による空挺降下の後、P-3C哨戒機が演習場に進入します。

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今年のも島しょ防衛を想定した展示のようです。

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P-3Cに続いて陸自のLR-2連絡偵察機が演習場に進入。

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LR-2が入手した情報をうけ、CH-47JAが上空に飛来。第一空挺団の偵察小隊および降下誘導小隊が降下しました。

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自由降下傘MC-4で降下する隊員。

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偵察小隊および降下誘導小隊が降下を終えると、3機のC-130が演習場に飛来。

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これらのC-130は東京の横田基地に展開する米空軍第374空輸航空団所属のC-130J-30です。

日米の部隊が相互運用できることを示すため陸自の隊員が先に降下しますが、会場に響く降下のかけ声は米軍式に「execute! execute! execute !」でした。

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C-130J-30は横田基地に2017年から配備されている新型機で、C-130Jの胴体を15フィート(4.57 m)延長した派生型です。通常型のC-130Jでは空挺隊員を64名運べるところ、-30型では92名に拡大されました。

胴体の延長は離陸重量に達する前に貨物室の容積が足りなくなる問題に対応するもので、C-130Hの時代に登場しました。

このC-130J-30は新造機かと思いますが、かつて米空軍で使用されていたC-141輸送機は、わざわざ完成品の胴体を輪切りにして延長用区画を差し込む大改造をしたそうです。

元から胴長のC-141をさらに拡張した結果、輸送機としては異様な姿をしていたらしく、日本の飛行機マニア界隈では「長イモ」と呼ばれていたとか

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こちらは空自のC-130H。

本記事を制作していた1月15日に、オーストラリアの大規模森林火災に対応するため「オーストラリア国際緊急援助空輸隊」として2機が同国に派遣されました。

任務は支援物資や消防士等の輸送支援などで、輸送機自体は消火活動など直接的な援助には加わらないようです。

2011年の東日本大震災においては、豪州空軍が保有していた4機のC-17大型輸送機のうち3機を派遣してくれたそうです。同国からの要求次第ではありますが、日本はもっと多くの輸送支援をすべきかもしれません。

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降下始めに参加した輸送機のうち、一番小さなC-1輸送機、とはいえ古い設計のエンジンなので騒音は一番大きいです。

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C-2輸送機も降下訓練始めに参加しました。昨年に続き2回目の参加です。

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C-2の後部ドア付近に小穴がついた板がありますが、これは風よけを目的とするものです。

ドアの付近に生じるエンジンの排気流やそのほかの気流により隊員の飛び出しが困難になる場合があり、これを緩和する効果があるようです。

欧州のA400M輸送機でも採用されていますが、こちらにはトム・クルーズが張り付いたことがあります。

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上空からT-11パラシュートで降下する米陸軍の隊員。

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今回の降下訓練始めに参加した米陸軍の部隊は、沖縄の第1特殊部隊群第1大隊(グリーンベレー)、アラスカの第25歩兵師団第4歩兵旅団戦闘団17全般支援大隊、ノースカロライナの第82空挺師団だそうです。

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一斉降下の最中に、パラシュートの上に別の隊員が接触するアクシデントもありましたが、下方の隊員が先に接地できたので、大きな事故にならかったようです。

空挺降下の際は、開いたパラシュートの上に別の隊員が乗っても大事故にならないよう、降下する隊員の順番を(降下速度が速い)重い隊員を先に、(降下速度が遅い)軽い隊員を後に並ばせるそうです。

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なお、第1特殊部隊群第1大隊(グリーンベレー)の指揮官降下の際はMC-6パラシュートが使用されました。

T-11とMC-6の違いですが、海外情報によるとT-11の構造は「十字型」と呼ばれ開傘時や接地時に生じる衝撃の軽減する効果があり、MC-6は基本的には古典的な形態をとっているものの(陸自の696M1や13式のように)多少のコントロールが効くよう設計されている、とのことです。

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陸自の隊員は13式空挺傘を使用。2016年の見学時に使用されていた空挺傘696M1(12傘)は用いられなかったようです。

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全ての隊員がパラシュート降下を終えた後、AH-1SとUH-1Jが、敵役の装甲車へ模擬攻撃を実施。

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狙撃班がUH-1Jによって運ばれます。

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CH-47JAから発進するオートバイ偵察組。

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島しょ防衛でもバイクは活躍。

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CH-47JAからエキストラクション・ロープで降下する隊員。

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UH-1Jからリペリングで隊員が降下。

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87式地雷散布装置を搭載したUH-1J。

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敵装甲車の足止めとして、演習場に地雷を散布。

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CH-47JAに吊り下げられた重迫撃砲。

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重迫撃砲には軽自動車ほどの重量があるようです。

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射撃態勢をとる中距離多目的誘導弾。この装備は2018年に空挺団に配備が始まったもので、CH-47等での空輸を想定してか運転席の幌が外されています。

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CH-47JAに吊り上げられて演習場を離脱する隊員。


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展示の終盤に水陸両用車AAV7が投入されます。

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上下に車体を揺らしながら走行する水陸両用車。

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水陸両用車に続き16式機動戦闘車が突入。所属は宮城県・多賀城駐屯地の第22即応機動連隊のようです。

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最後に90式と10式戦車が並んで突撃。直後に状況終了を告げるラッパが鳴り、今年の降下展示は無事に終わりました。

「降下訓練始め」は、都心に近い場所で開催されるうえ、演目も総火演に近いボリュームがあるので、関東近辺でまだ見たことのない人には、来年の見学をお勧めしたいイベントです。

ただし、今回のような曇り日は冷え込みも厳しいため、暖かい服装はもちろんのこと、使い捨てカイロなど暖をとれるアイテムの携帯をお勧めします。(油類は持ち込み禁止物品なのでハクキンカイロはNG)

余談ですが今回の会場BGMはフリー素材が多く、この曲が使用されたことには驚きました(YouTubeでHoI動画や戦史解説動画を見る人は聞いたことがある...かもしれません。)

「降下訓練始め」では、空自の航空祭と異なり露骨な形で「深夜アニメ」や「テレビゲーム」音楽は使わないのですが、何処かで聞いたような打ち込みのフリーBGMを使用することはあるようです。

いずれにしても、展示にマッチする楽曲選びの難しさを感じます。
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