ファントム最後の百里基地航空祭/展示飛行編

文・写真:nona


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 2019 年12月1日、百里基地で航空祭が開催されました。航空祭一番の目玉は、来年3月に退役を控えたF-4ファントムⅡによる展示飛行です。
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https://www.mod.go.jp/asdf/hyakuri/index.html
百里基地のホームページに掲載された航空祭の模様を伝える写真


 航空祭の会場である航空自衛隊百里基地は、茨城県小美玉市に所在する官民共用の航空基地です。2016年以降はF-4が最後まで配備されている基地になりました。

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 百里航空祭の観客者数は2日開催で例年5万人前後だそうです。お隣の埼玉県に所在する入間基地(最多で30万人)よりは少ないものの、百里基地周辺は交通手段が限られ、道路の渋滞が深刻な問題になっています。

 石岡駅から発するシャトルバスに乗る場合、(朝6時30分の時点で)1時間以上は行列に並ぶ必要があります。乗車券は大人料金で片道820円。

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 駅から2時間以上をかけて基地に到着したところで、気象観測から帰投したF-4EJ改が飛来。オーバヘットアプローチで滑走路へ進入しました。

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 ドラッグシュートを展開して着陸するF-4。同機が所属する第301飛行隊はF-4のマザースコードロンであり、1972年に百里基地にて臨時飛行隊として編成されました。最初にして最後のF-4飛行隊です。

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3機のF-4EJによるエシュロン編隊。

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RF-4EJを戦闘にRF-4E 2機、F-4EJ改 3機によるデルタ編隊。

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偵察航空隊・第501飛行隊のRF-4E偵察機。1974年から75年にかけ、アメリカからの輸入で調達されました。

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 同じくRF-4Eですが、こちらはF-2戦闘機を模した洋上迷彩が施されています。2003年ごろに第8飛行隊のF-4EJ改が海洋迷彩を施したことがありますが、同機に海洋迷彩が施されたのは比較的最近(おそらく2015年頃)だそうです。

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 空自のF-4は空中受油機能が外されているはずですが、RF-4Eには受油口のパターンがはっきりと確認できました。写真を編集しているときに気づいたので、その理由は聞けずじまいです。

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 こちらも後になって気づいたことですが、パイロットは眼鏡をかけられていました。話には聞いていましたが眼鏡をかけた戦闘機(偵察機)パイロットを見たのは初めてです。

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第501飛行隊の偵察機RF-4EJ。「獲物をにらむ猛禽」の構図で撮影できました。

同機はRF-4の不足を補うため、余剰となったF-4EJの一部に偵察ポッドの運用能力を持たせた機体ですが、RF-4Eと異なり暗色系の迷彩が施されています。

ところで、空自機のうちRF-4E・C-1・F-1・CH-47Jは明色系、RF-4EJ・C-130は暗色系の森林迷彩を採用していますが、どういった理由で使い分けていたんでしょうか。海外の例では、ベトナム戦争中の米空軍機は明色の森林迷彩、欧州・NATO軍は暗色と使い分けていた印象がありますが。

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RF-4EJの偵察ポッド(TACポッド)からフィルムが取り出されます。

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RF-4各機が撮影した写真がお昼休みに公開されました。

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いずれも高解像の写真でしたが、目を凝らすとフィルム特有(?)のグレインが目立ちます。

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百里救難隊の救難捜索機U-125A。

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同じく百里救難隊のUH-60J。

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小松基地から飛来した第303飛行隊のF-15Jイーグルによる展示飛行。

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離陸直後に低空を突っ切る大胆な機動。

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同機の所属する第303飛行隊も一時期F-4を運用していたようですが、配備から10年ばかりでイーグルに機種変更しています。

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 F-2は地上展示だけでしたが、来年には第3飛行隊のF-2が百里基地に配備されることになっていますので、次回の航空祭に期待です。

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 今年はブルーインパルスの展示飛行がありました。百里航空祭は他の航空祭と日程が被ることも多く、ブルーインパルスが来ない年もあります。

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午後の航空祭ではF-4だけの展示飛行が実施されました。

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2機のF-4EJ改がスクランブル発進を模した形で離陸。

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続いてスペシャルマーキング機のF-4EJが離陸します。

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F-4EJ改の演目はこんな感じだそうです。すっごい詳しい。

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 3機のコールサインは"ワイバーン"。某アニメシリーズの劇場版2作名に登場する爆装したF-16Jと同じ名前じゃないか、と思っていたら場内BGMとアナウンスまで、そのアニメに寄せていました。

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最後の航空祭なのにネタに走りすぎるF-4に対して、空包射撃を実施するVADS。

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ハイレートクライムに挑むスペシャルマーキング機。

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 このように構図を工夫すれば、F-4が筑波山を飛び越えるかのような躍動ある写真も撮影できる、とのこと。

 この技法は「つくば山チャレンジ」と名付けられていますが、今年流行したタピオカチャレンジとは無関係と思われます。

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〆のRF-4E

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 1972年に配備が開始されて以降、48年にわたり空から日本の安全を守ってきたF-4ですが、まもなくラストフライトを迎えます。

 航空祭のシーズン後は一般公開の機会もなさそうですが、百里基地の近辺であれば来年3月までフライトがあるため、興味のある方は茨城までお出かけされてはいかがでしょうか。

(次回の記事は航空祭の地上展示関係の写真を紹介いたします)