イギリス海軍23型フリゲート「モントローズ」
文・写真:nona
2019年3月8日に、東京の晴海埠頭に入港したイギリス海軍のフリゲート艦、モントローズを見学して参りました。
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HMSモントローズ(F236)は「Duke Class Type 23 Frigate (デューク級23型フリゲート)」の7番艦として1993年に就役しました。排水量4100トン、全長133m、全幅16m。
艦内の各所にこのようなパネルが展示され、同艦の任務や能力などが大まかに解説されていますが、写真のモントローズは改装前の姿となっています。
モントローズが属する23型フリゲートではステルス設計が採用されたそうですが、側壁に沿って様々な備品が設置されているため、ステルス艦という印象は感じられません。
モントローズの定員は士官16名、准尉3名、下士官35名、海軍兵(水兵)軍属の民間人119名。見学当時、約半数の乗組員が上陸中でした。
一般公開中、モントローズの警備にあたる隊員。見学時は気付きませんでしたが、実弾を携行していたようです。
「危険 砲口は警報なしに上がったり旋回したりするかもしれない」
「警報がなったとき、魚雷は発射されようとしている」
「魚雷は警告なしに発射されるかもしれない」
側壁の警告文はこんな感じ。警報ブザーは各所に設置されていますが、過信はできないようです。
モントローズの兵装技術部門は、士官2名、准尉1名、下士官12名、水兵27名で構成されます。
イギリス海軍の乗員は、戦闘時に白い頭巾と手袋「アンチフラッシュギア」を着用します。火災現象に「フラッシュオーバー」からとった呼称でしょうか。この装備が普及したのは1916年のユトランド沖海戦がきっかけでした。
応急員は専用の防火衣があるようです。
艦首の4.5インチMk8 Mod1艦砲。陸軍のFV433アボット自走砲に搭載されていたL13A1 105mm榴弾砲をもとに開発されました。就役当時は球形のGFRPシールドだったようですが、改装でステルスシールドへ改められています。
ホストシップの護衛艦むらさめの76mm砲は、1996年の就役以来、球形のシールドが用いられています。
46ポンド砲弾。
対空ミサイルのVLS区画。以前はシーウルフ艦対空ミサイルが装填されていましたが、現在はシーセプターCAMM(M)へ換装されており、911型射撃管制レーダーも撤去されたようです。
シーセプターはアクティブレーダー誘導方式を採用した艦対空ミサイルで、射程は25km。同時多目標攻撃能力や超音速目標の迎撃能力を有します。
ホストシップの護衛艦むらさめも、シースパローSAMに代わりESSMへ換装したそうですが、16セル入るはずのVLS区画はスカスカでした。
VLSと艦橋の間にハープーン対艦ミサイルのランチャーも設置されています。
映画007シリーズの「トゥモローネバーダイ」の冒頭に登場した23型フリゲートは、この発射筒から巡航ミサイルを発射していました。
23型フリゲートはオープニングテーマを挟み再登場しますが、今度は悪の組織のステルス双胴船から「ドリル魚雷」で攻撃され、南シナ海に沈みました。作中の23型フリゲートはかなり雑に扱われています。
ただし、映画のような巨大な破孔でなければ、このようにして穴をふさぐようです。
モントローズのアンテナマスト。最上部に997型三次元対空レーダーが設置されています。以前は996Mod.1型レーダーが搭載されていました。
そのすぐ下にUAT Mod1 ESMのアンテナ。球形の光学センサーは4.5インチ用のシーアーチャーGSA-8A射撃管制装置。
対水上レーダーは1007型と、航海用の1008型を搭載。
艦橋に設置されたシーナット・デコイ発射装置。チャフ、フレア、アクティブデコイの発射に対応します。
こちらはEAD(消耗型音響デバイス )発射装置で、対魚雷用のデコイを発射します。これとは別に182型曳航式デコイも搭載し、2170型SSTD(シーセンター魚雷防御)システムを構成します。
DLF3デコイの格納筒。DLF3は空気充填式のレーダーリフレクターであり、海面に浮かべることで対艦ミサイル用のデコイとして機能するようです。
23型フリゲートは多種多様なデコイを搭載していました。
両舷1門ずつ搭載されるDS-30M Mk30mm機関砲。以前のDS-30Bから遠隔操作式に改められたそうですが、遠隔操作用のセンサー類は確認できませんでした。
魚雷発射管は片舷2門ずつ、固定式で装備されており、通常は外蓋で覆われています。
解説パネルでは「MTLS(弾薬庫魚雷発射システム)」と呼ばれており、即応性の高さを謳っていますが、射出の際に魚雷が甲板に接触しないか気になります。(高圧蒸気で射出すれば問題ないのかもしれませんが)
モントローズは2050型中距離アクティブソナーと2031型曳航ソナーも装備しますが、曳航ソナーについて詳しい説明はありませんでした。
モントローズの煙突。同艦は推進方式にCODLAGを採用し、巡航時にはディーゼルエレクトリックで推進、高速時にガスタービンを併用します。
ガスタービンとしては、ロールス・ロイス社のマリンスペイを採用しており、日本の護衛艦と数少ない共通点となっています。
ヘリ格納庫にAW159ワイルドキャットHMA.2対潜哨戒ヘリコプターが格納されていました。
ワイルドキャットは、これまで用いられていたウェストランド リンクスがベースとなっています。
ワイルドキャットのテールブームとローターブレードは複合材が採用されており、エンジン排気口は赤外線緩和のため上方を向けています。
機首下面にはAESA方式の対水上レーダーを、上面に光学/赤外線タレットを装備。
スティングレイ短魚雷の訓練弾。スティングレイはマグネシウム塩化銀と海水の反応で発電し、低騒音のポンプジェットで推進、アクティブまたはパッシブで目標を追跡し、成形炸薬弾頭で目標を破壊する、とのことです。
「危険人物、さわるときれろせ」
「水の魔法師 綺麗とエネルギー」
ヘリ格納庫では謎の日本語が各所に書かれています。
ヘリ格納庫ではありますが、ウォーターディスペンサー、コーヒーメーカー、インスタントコーヒーが置かれています。
今やイギリス海軍もコーヒー党。
銃器類は小火器のみ展示。机の上に並ぶのはL85小銃、L22カービン銃、L7GPMG(FN-MAG)汎用機関銃、L129A1(LM308MWS)狙撃銃、グロック拳銃。
光学照準器はL85標準装備のSUSAT、トリジコンACOGサイト、Eo-techホロサイトなどが装着されています。
どちらの小銃もブルパップ式で全長が短いのですが、左のL22は特にコンパクトです。
乗員がサービスでポーズをとったりしてくれますが
その銃口は対岸の豊洲市場を向いていました。
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コメント
という話は横に置いて、スティングレイは艦上発射するときも減速用パラシュートがついていたような気がするワニ。
しかし艦名的になんというかお菓子のブランドにありそう
1回でもいいからこういうの行ってみたい
ただ、あごひげ生やしてるけどガスマスクと皮膚の密着に影響しないのだろうか?(素人考え)
艦船のステルス設計においては高い位置にあって遠くからもレーダーを反射してしまうマスト部分や艦橋部分を重視するようだけど・・・
う〜ん、ラティスマストを使っていないので自衛隊の護衛艦よりもRCSに配慮しているのはわかるけど外見的にはほとんど変わらないように見えるな〜
ウィキペディアを見る限りは「外壁には7度の傾斜が付されたほか、電波吸収体塗料が塗布された」ってあるのでユルイ角度の統一と塗料の工夫を合わせてそこそこのステルスが実現できたって事なのだろうか?
しかし英国水兵はフレンドリーな感じでええな〜 「危険人物」とか「綺麗とエネルギー」とか実は狙ってやっているんじゃないかと感じずにはいられないw
「危険人物」でお茶目狙ったのに違う効果を発揮しちゃった感が逆にイイ味出てるw
その昔ロシア艦が来日したとき見に行ったけど、ロシアの
水兵さんもみんなすげーフレンドリーでびっくりしたよ。
変な日本語わざとじゃないか?この前アルビオンが来日した
ときの大使館のツイッターもアレだったしw
二時間ほど並びましたがね…
やはり海外の艦となると、人も集まりますねぇ
流しに置かれたコーヒーメーカーとか興味深い!
これがあるなら、いつアクシズの返還交渉がまとまってもひと安心(律儀な男並みの感想
欧州艦は、日米ではあまり見かけないジャマーやデコイ・ディスペンサーを持っているので、非常に眼福であります。
この辺の違いは、外洋作戦の多い日米海軍と、沿岸作戦が主体の欧州海軍との違いなのではないかと。
あとむらさめ型のVLSにちゃんとSAMが入ってるところは、実は自分もあまり見たことがない…(汗)。
こんごう型もあれで漁船位のRCSだと言われてますしね。
ステルス風マストにしても、その上でレーダーがぐるんぐるん回ってるだけで、全てが台無しになるとかw
ラティスマストかどうかも現代の軍事用レーダーの前には誤差の範疇でしかなく、ステルスも予定されてた本来のズムウォルト並に殆どのアンテナを平面に埋め込むような徹底するならともかく、そこまでのものでないならレーダーや対艦ミサイルの自動抽出機能を遠方から誤魔化せればいいな的なものだとか(護衛対象がより狙われやすくなるやも)なので、海自は効果と使い勝手とコストのバランスを考えてステルスを取り入れているんでしょうね。
当時最大の護衛艦になるひゅうが型とかは、緻密なミニチュア模型を作って電波暗室でRCSを計測し、ステルス設計を徹底してますしね。全ての救助筏にまでRCS低減用のプレートつけてるのにはビビった。
各護衛艦群の護衛艦は(今の編成はどうだったか)、修理、休息、訓練、即応みたいにローテ回しているから、即応でない艦だったらミサイルもメンテに出してるハズ(怠ると、発射してもあさっての方向に飛んでいく)。
何だろう?ステルスなんか関係ないぜ的な、いかにも武骨な質実剛健さが英国人には刺さるんだろうか?
「初めて本物の軍艦を見た。我々の艦はレゴブロックだ」
数々の名門銃器メーカー差し置いてLM社をがL129a1に採用されたのほんと謎
だからすき
基本的に海軍は外交の一角を担う存在なのでどこの国も内心はともかく割とフレンドリーなのです。他の軍と比べて敵対国と交流を持つ機会も多いですし、世界共通、海軍特有の気質ですな。
あさぎりは船体デザインの英国面的なチグハグさが彼らに受けたのでは無いかと、
建造途中の改設計でヘリ格納庫の容量を1機から2機へ無理やり拡張した為に、
単なる四角い箱になったとこや、後部マストの配置等のやっつけ工事部分とか、
その割りにスマートな船体形状とか、英国好みの低い艦橋配置とかを含めて、
まるでブリストル級のレーダー塔艦橋やカウンティ級のシースラグミサイル発射機の
様に見えるからかもね?
欧州から特務艦がやってくる...何かの縁かね
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