空自の日本防空史66
AWACSの買い時は?
文:nona
http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2002/photo/frame/ap143025.htm
2002年の防衛白書に掲載されたE-767。
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E-3AWACS導入計画の復活
MiG-25事件の対策として1978年にE-2Cが採用された際、対抗馬であったE-3Aは、性能、価格、機体規模が過大だとして、防衛庁から「適当でない」と評価されました。
しかし、1980 年代に入り、シーレーン1000海里防衛構想が再浮上したことで、E-3の評価は変わります。
新1000海里防衛構想では「バックファイア」爆撃機を洋上で早期に発見する必要があったのですが、この用途ではE-2Cの航続能力に不足があるとして、1982年にE-3の導入が再検討されたのです。
この時期にはE-3も能力向上が進み、海外への売り込みも活発化。エンジンには推力が増強されたCFM56が採用され、離陸距離も短縮されています。
それでも滑走路の補強工事は必須でしたが、滑走路の延長に比べれば、はるかに容易と思えます。
価格は依然として高かったようですが、当時は日米間の経済対立も激しく、これを和らげるためであれば、高額装備の輸入も致し方ない、という政府の思惑もあった、と考えられます。
E-3の生産終了とE-767AWACSの誕生
http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/1993/w1993_02031.html
1993年の防衛白書で公開されたE-767の完成予想図
とはいえ、防衛予算はそう簡単に増えなかったため、1980年代中はE-2CのFMS調達が優先されており、E-3の導入は見送られました。
1991年に開始される中期防衛力整備計画において、ようやくE-3の購入方針が認められますが、当初はE-2Cの改修(初期導入機のAN/APS-125をAN/APS-138へ換装)を優先し、E-3は発注できませんでした。
すると、E-3の母体であるボーイング707の生産は1991年に終了、翌年にはE-3AWACSの改造ラインも閉じてしまいます。
防衛庁はE-3を1機あたり325億円での購入を想定していましたが、ボーイング側は生産ラインの再開コストを機体価格に転嫁する必要があるとして、1機あたり7~800億円の費用を要求しました。
法外な価格ではありますが、一方では現行機のボーイング767-200ERにAWACSシステムを組み込むのであれば、費用は六百数十億円で済む、と提案します。(767-200ER 単体の価格は110億円前後)
その後の値下げ交渉を経て、1993年度予算で1機あたり570億円、翌年度は543億円で、計4機の購入が決定しました。値下げのため、JTIDS(統合戦術情報伝達システム)や受油装置など、一部の構成品を後日装備とする措置もとられたようです。
E-767の運用部隊
1998年に最初のE-767が浜松基地の実用試試験隊に配備され、1999年から地上シミュレータ(1基20億円)が稼働、2000年には正式運用が開始され、2002年ごろに戦力化に至ります。
他国ではAWACSの戦力化に7~8年の歳月を要したそうですが、空自はE-2Cの運用経験があったことから、半分の期間で達成しています。
E-767は4機とも静岡県の浜松基地に配備され、当初は第601飛行隊第2班に属していたものの、2014年には602飛行隊として独立しました。
E-767運用部隊の人員数は370名程度で、各機には18名前後の要員が搭乗します。
常に1機は地上待機状態にあり、24時間、日本全国どこにでも展開できる状態が維持されています。
E-767のレーダー
E-767は機体背部のロートドーム内にAN/APY-2パッシブ式フェイズドアレイ・アンテナを格納します。
APY-2は電子走査により空中目標の高度を判定できる三次元レーダーであるため、前任のEC-121が搭載していた測高レーダーは廃され、E-2Cのように機体の水平を保ち続ける必要もないことから、比較的自由な機動が可能です。
ただし、IFFアンテナアレイはAPY-2アレイの反対側に搭載されており、目標の探知と識別に若干のラグが生じる欠点があります。
また、初期のE-3が搭載したAPY-1には海洋モードが存在せず、E-2Cとの性能比較において能力の不足が指摘されていますが、APY-2は海洋モードを実装し、海上の空中目標と艦船の探知に対応しました。
APY-2の最大探知距離は7~800kmとされますが、水平線内の見通し距離は360㎞程度に制限されます。しかし、BTH(水平線越え捜索モード)を使用すれば、精度は低下するものの、水平線に隠れた範囲の捜索が可能です。
AWACS Long Caster
<<悪いが俺は食いながらやらせてもらう
腹が減ると判断力が鈍るんでな>>
Cyclops 2 Count
<<とんだ食い意地だな>>
E-767の任務は平均して10時間以上、最長12時間に及ぶため、機上食も2食搭載されます。
緊急発進時などは保存用のレトルト食だけが搭載されますが、通常は一食目が冷蔵の「生食」を、2食目はマイナス35°で急冷された「冷弁」を1400Wの電子レンジで解凍して食します。(E-767自体も電子レンジのようなものですが。)
「続・ミリメシおかわり!―兵士の給食・レーション 世界のミリメシを実食する」によると、 メニューは米飯(内地米と明記)に、野菜炒や揚げ物、サラダ、煮物、漬物、佃煮など多彩な副菜が特徴のようです。
なお、E-767は食事および休憩専用の区画があり、お茶やコーヒーのディスペンサーも搭載するため、長時間任務の疲労を軽減するのに役立っているそうです。
次回は米空軍におけるAWACSの運用例などについて解説いたします。
参考
日本の防衛戦力③航空自衛隊(読売新聞社編 ISBN4-643-87032-X 1987年5月14日)
丸NO.5831 994年11月号 特集 アンノウン機撃墜法 システム防空戦(潮書房編 1994年11月)
エアワールド1998年4月号別冊 空中警戒管制機AWACS(青木兼知 編 ISBN4-89310-074-1 1998年4月5日)
航空自衛隊「装備」のすべて「槍の穂先」として日本の空を守り抜く(赤塚聡 ISBN978-4-7973-8327-0 2017年5月25日)
続・ミリメシおかわり!―兵士の給食・レーション 世界のミリメシを実食する (菊月俊之 ISBN 978-4-8465-2637-5 2007年3月20日)
ワールドフォトプレス
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コメント
ニコニコにうpされたE-3/E-767の解説動画によると長距離捜索モード/近距離捜索モード/対地上捜索モード/対水上捜索モード等を各方位ごとに範囲を分けて一度にスイープできると銀河万丈さんが言ってた記憶。
https://sp.nicovideo.jp/watch/sm24414853?ss_id=86242c6f-03e4-4f8b-874c-cd29221410c0&ss_pos=3&cp_in=wt_tg
ゲリコマによる基地破壊で飛行不可能なレベルまでやられる場合、ぶっちゃけ人数いれば1箇所だろうが2箇所だろうが変わらないんじゃないか。
>>9
あれってそもそもどうやってAWACS補足するんだろうね。
空対空なら相手もAWACS並の索敵距離が必要になるわけだが。
戦闘機搭載レーダーで長探知距離の物だとロシアの"イールビス"・"ベルカ"レーダーで約400km
アメリカのF-14DのAN/APG-71で370kmらしいし併せてロシアは中国にイールビスレーダーを搭載したSu-35を輸出しているらしい。
E-2C/D相手でも難しいだろうけど発射母機がステルスならそれなりの脅威にはなりそう。
標的がAWACSで無くともより探知距離が狭まる戦闘機・攻撃機の場合は「"それ"が見えたら終わり」になりますな。
シークラッターに紛れたりステルス機なら発射母機も相手より接近できるしWoWsで言うところの"隠蔽率"が上がるのは射たれる側からするとかなりキツい。
一方でインドネシアには同機10機の輸出を決めていたりインドとは次世代機の共同開発計画があったりとロシアもまあ全方位というかもはやばら撒きというか...。
>悪いが俺は食いながらやらせてもらう
某ガーリーに出てくる某キャラと声も物腰も一緒なので、立て続けに見たりプレイしたりすると混乱するのでオススメ(もうコンソールの前でハンバーガー食ってる技官の姿しか思い浮かばない)。
※1
一応ちょっとした改造で空中給油を受けられるように燃料配管が走ってるけど、まだ未改造とのこと。
あと空中給油を受けられないのは、実は新旧政府専用機も一緒だったり…(まあ最終戦争が起こったところで、日本じゃどうすることもできないし…)。
ちなみにアメリカのエアフォース・ワンは、有事に備えて毎回2週間分の食料を積み込むため、一度飛び立って帰って来る度に、莫大な量の廃棄食品が発生するそうな。
これはどういった仕組みなのだろうか
水平線の向こうまで電波が届くということなのか?
電波は回折するからな
波長により程度は変わるが
<他国ではAWACSの戦力化に7~8年の歳月を要した
やっぱり複雑な機体(システム?)はモノにするのも時間がかかるんだな〜
ここら辺冷戦終了後の比較的平和だった時期でも計画的に必要な装備を揃えるのを努力を続けるのが大事なわけだ。
<E-767の任務は平均して10時間以上、最長12時間に及ぶため、機上食も2食搭載されます。
E-2Dは随分と乗り心地が悪いみたいで、空中給油装置が付いた時にどこかで「まるで拷問のよう」と嘆く記事を読んだ覚えがw
E767などでは旅客機譲りの乗り心地と休憩室付きの機内での任務なので安心快適、広くて余裕のある仕事場は複雑な戦闘機管制を続ける集中力を維持するのに不可欠なはず!(とはいえ、連日12時間連続勤務が続くと大変そうだけど(汗
※8
<基地一か所だとゲリコマなどにやられて機能停止になる恐れがある
非常時には常時一機ぐらいが飛んでいるはずだし、滞空時間が長いのでゲリコマの攻撃から最低限基地機能が復旧するぐらいの間は飛ばせるはず?
重要機体をゲリコマに完全に破壊されるぐらいなら基地警備からして相当ヤバイし、そんなゲリコマがいるのなら少数の重要基地に陸自の防衛戦力を集中させた方が合理的ではある。
まぁ警戒・警備に当たる陸自の戦力が足りてないのが不安ではあるのだけど(´・ω・)
<中国で対早期警戒機・早期警戒管制機用に射程数百kmの大型空対空ミサイルが配備され始めてる
※10
<あれってそもそもどうやってAWACS補足するんだろう
AWACS自体がレーダー電波を出しているので、それを逆探知装置(ESM:ES)で捉えれば位置の割り出しは出来るはず。
そしてアクティブレーダーホーミングのミサイルならRCSの大きな大型機であればより遠方からでもロックオン出来るのである程度位置が絞れればいける可能性はある。
単独の戦闘機では厳しいものがあるが、レーダー範囲外の遠方から複数の電子偵察機(ELINT機)で位置を推定、高速ステルス機でヒットアンドウェイ的に攻撃すると対処はかなり難しそう。
まぁ対策も色々とあるだろうが、個人的には中国が目指している高速ステルス機と長射程ミサイルの併用はAWACSの活動をそれなりに制限出来るんじゃないかと感じている。
※13
<BTH(水平線越え捜索モード)
大気の屈折率などの関係で可視光も電波も少々曲がり、水平線の先まで見えることがある。また周波数によっては回折といって電波が山やビルの後ろ側まで回り込むことがある。
こういったものを利用すれば水平線の先からでも電波は帰ってくる、ただどちらも電波の減衰が激しくノイズも多くなるので高性能なレーダーを持ってしても探知能力は相当限定されたものになるはず。
あとは電離層反射を使うOTHレーダーってのもあるけど、あれは大きすぎるのでAWACSでは使えないはず
日本がそれだけ領海も含めると広い上に固定サイトは真っ先に攻撃されるから、密度の維持という点では有益ではあるのかな
Today is my birthday. The victory sure would be nice!
可能と実際やれるかは別問題ですからねぇ。
ただ、その議論の背景って執拗にいずもはAEWはないから無駄だのそうじゃないだのの水掛け論になってた時だし、AEW機能はE-2Cにはないかあるかは問題視されてなかったせいもあるかも
C-130にE-2のレーダーシステム搭載もあるように、無理に国産システムを載せるよりかはニフカやCECもあるし、P-1にE-2Dのシステムを載せた方が日米での情報共有とか相互運用性で有益に思うんじゃが?
教えてくれてありがとう
いろいろ調べてみたけれどE-767に搭載されてるAN/APY-2が地表や障害物を回折しやすい波長を使ってるのかどうかはよくわからなかった
水平線の向こうがわかると言っても数十km程度の範囲だろうし、ミサイルの小型の目標やステルス機の探知は困難かもしれない
海洋監視モード時のシークラッター(地上反射含む)の自動除去やら戦闘機に積める程度のレーダーで出来る事はAWACSならより高い領域で実現出来てる。
勿論それぞれが個別にレドーム内に収納されてるので海洋監視モードと空対空モード等多数のモードを同時に使用出来る。
ただ電子妨害装置の類については仕様によって異なるから、実際に※11や16の言うような状況下では護衛機を伴わないと運用しにくそう。
>>23
水上艦じゃあるまいし高高度飛行する航空機から観た水平線見通し距離が数十km程度なんてあり得ないですよ。
実際にはAWACSの通常のミッション遂行高度9,000m時の水平線見通し距離でも約360kmです。
E-767の実用上昇限度が12,222mですので、11,000mなら400km近くなります。
BTHは本来水平線超えというより超長距離を探知するためのモードですので、上記の数字+αがBTH索敵距離という事にはなりません。
・・でもパルス送信しないって事はエコーパルスを受信しないわけで、じゃあパッシブなんじゃないかと勘ぐったりしてしまう素人感、しかしE-3には専用のパッシブアンテナがあるんだよなぁあああああ!!
全然分からん!教えてエロい人!
ロシアはA-50"メインステイ"ちゃんで中国は空警2000という中国版メインステイちゃんなんだがそういえば中国には昔Tu-4を改造した空警1というB-29に皿載せたようなすげえビジュアルの機体があったらしい。
いっそB-787にE-767のシステムを積む案を提案してみます?。
ありがとうございます
BTHモードですが説明に重大な誤りがありましたので追記します。
水平線内の目標は探知「できません」
BTHモードは背景に地形が写り込まない範囲でドップラー効果を用いず、低繰り返し周波数パルス圧縮波を用いるモードです。
探知距離は最大で800km辺りまで拡張されますが、OHTレーダーと異なり地平線や水平線の下の目標は...探知できません。
この条件で探知できるのはある程度の高度がある目標に限られた、また高度測定にも対応しないようです。
これは「エアワールド1998年4月号別冊 空中警戒管制機AWACS」に記されていましたが、完全に失念していました。
ご指摘ありがとうございます。
トム・クランシーの小説で日本のAWACSを潰すのがアメリカ側の反撃の第一歩だった覚え。
どうやったか記憶が無いけど。
搜索レーダーとミサイル誘導のパッシブは違うと理解してるな
パッシブ搜索レーダーは電波出す方式がパッシブとやらで、ミサイル誘導でパッシブというと電波を受信するのみになるけど
超長距離だと電離層と海面反射でジグザグにはね返る電波を利用するみたいな
正確な位置、特に距離はわからない、方位と航空機の動向を検出するような
https://www.northropgrumman.com/Capabilities/AWACSAPY2/Documents/AWACS.pdf
BTHについてはあんまり詳しいことは書いてないけどBTHの図を見る限りはOHTレーダーのように電離層反射を利用するわけでなく、通常のパルスドップラーでの捜索の延長上な感じ。
電波的に凝った方法を使っているわけでなく、地形的に反射が帰ってこないはずなのに帰ってきた、つまりなんかいるはずよね? ってぐらいのものかな?
どうもBTH専用の受信機があるようなので、周波数レンジとダイナミックレンジを絞って感度を特別に増した受信機を使えばドップラーシフトとか凝った方法を使うよりも単機能ながら高い感度=探知性能を実現できる って感じだと思われる。
インターリーブドモードなら通常のパルスドップラーモードとBTHモードを併用することで短距離から長距離までをカバー、BTHモードで超長距離を って事も出来るみたい。
逆を言うとBTHモードだけでは短距離から長距離までの探知は無理っぽい? BTHモードは周波数、受信機ともに超長距離探知に特化させる事で探知距離の増大を実現した 機内に専用受信機を載せる余裕のあるAWACS機ならでは装備と言えそうだのぅ
最初はF-15とF-22の組み合わせで、
初回は米F-15で攻撃失敗して撃墜されたが、データを入手して
2回目は同パターンと思わせてF-15に注意している間にF-22を近づけて撃墜
あとは、特殊工作員を潜入させて基地近辺に待機させ恐ろしく強力なライトで着陸時の操縦者の目つぶしをして2機撃墜と
ロシア沿海州からコマンチで本土に接近して、赤外線誘導ミサイルでE767を撃墜して太平洋へ
核ミサイルを放棄したオハイオ級に着艦して燃料補給してハワイへ、だったかと
最後に日本側かB747で米上院にカミカゼアタック
>>30
ありがとうエロい人!
そういや動画でもBTHの索敵範囲は超長距離限定だったね。
多種類レーダーの同時使用による広範囲スキャニングはレドーム内に複数のユニットが混在するAWACSならではの芸当ですね。
>>29
ほへぇ!パッシブという言葉にそんな用途の違いがあるとは知らなかった!
だからE-3は胴体前面側に専用のアレイなんか付いてるんですね。
地上スタッフが喰えばいいのに・・・
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