レーダーシムっぽいのを作ってみた
文:誤字脱字
レーダーをもっと身近に感じたい(`・ω・´)
レーダー画像の一例、中央の光点が自艦(USS Denver)で左の大きな光点が駆逐艦村雨、小さな光点が沈みゆく峯雲である。 と書かれてすぐに理解出来る人はどれだけいるのだろうか?(画像:1943年USSデンバー、米海軍[a])
レーダーは今日の世界において軍民問わず広く利用されていますが、詳しく知りたいと思って調べても聞きなれない専門用語が多く頭の上に「?」マークが乱舞する事になります(私はそうなりました(´・ω・`)
レーダーについてもっと理解して身近に感じたい、そのためには実際のレーダーを操作できたら良いけど、そんなことは難しい・・・
それならば自分で簡単に操作できるのを作ってしまえ(`・ω・´)
って事で簡単なレーダーシミュレーターを作っちゃいましたので、今回このブログを利用してご紹介させていただきます。
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レーダー方程式を凝視しても普通は何も分からないよね(´・ω・`)
レーダーを理解するのに重要なレーダー方程式。導出を含めて面白い方程式なのだが、ここでは詳細は割合
詳しいことは省きますが、レーダーについては上のレーダー方程式を使えば探知距離や必要なアンテナの性能など色々なことを求めることが出来ます。
レーダーを実際に運用する人たちはこの方程式についてアレコレ勉強して計算を解いたりするのですが、我々一般人には方程式の意味を理解するだけでも一苦労です。
しかしながら素晴らしい事に現在史上まれに見るほど世に電子計算機が溢れている時代、あなたが今この文字を読んでいる機械を使えば簡単即時に方程式の答えを導き出すことが出来ます。
しかしながら計算を解くだけではまったく意味不明でレーダーを理解できる気がしない(´・ω・`)
なのでこの計算を最大で毎秒1万回ぐらい行うプログラムを使い、レーダーシミュレーターという形で計算結果を意味ある形で示したのが下のものになります(`・ω・´)b
誤字脱字式RadarSimulator
シミュレーターを読み込めませんでした。
WebプラウザのJavaScritに関する設定をご確認ください。表示説明
画面各部の意味はだいたい次のような感じです。
表示結果は上記のレーダー方程式を使っていますが、それを意識せずともとりあえず使えるレーダーシミュレーターとして仕上げています。
操作方法を交えて詳細を説明しますが、長いので複数のページを立ち上げて操作しながら説明を読むのをオススメします。
操作説明
それでは実際に動かして見ましょう。
大きく「全体図」と書かれている画面の「スタート」をクリックするとシミュレーターが開始します。
シミュレーター画面の上にも色々とボタンが並んでおり、「スタート」や「ストップ」などの基本的な操作はここでも行えます。
この中の「更新頻度」のチェックボックスは画面の更新頻度です。
最初は「一秒毎」なので動きはかなり緩慢ですので、使いながら各々パソコンの性能に合わせて随時「カクカク(0.5秒毎)」や「スイスイ(0.1秒毎)」に変更してみてください。
「スタート」ボタンを押した後に全体図を見ると左側のお椀型のアンテナ・自分のレーダーから白い破線が右端まで伸び、全体図のところどころに赤い目標が現れるはずです。
下の操作説明の画像を参考にレーダーが向いている方向を表す白い破線・ボアサイトを動かして赤い目標にを重ねてみて下さい。
ボアサイトを目標に重ねると下のAスコープやRスコープに反射波が現れます。みんなが夢見る理想的レーダー
どこもクリックしていなければレーダーは最初「理想」レーダーなっています[1]。
この時レーダーを動かしてボアサイトを目標に重ねると下のスコープにすぐに反射波が表示され、外れるとすぐに反射波が消えるという素直で分かりやすい動作をします。
多くの人々が予想するレーダーの動きとはこのくらい素直なものではないでしょうか?
実際に最新のレーダーではこれに似た挙動をするようですが、現実のレーダーは少々勝手が違います。
現実は面倒:照準レーダー
レーダータイプを「照準」レーダーに変えてみましょう[2]。
「照準」レーダーに変えると全体図のボアサイト上下に新しい薄い点線が出現します。
現実のレーダー電波は少々へそ曲りで、上下左右に広がりつつ進みます。この広がる幅をビーム幅と言いますが、このために遠距離の目標の場合はレーダーの向いている中心よりいくらかズレた範囲、今回の場合はビーム幅を表す薄い点線に目標がかかるあたりで反射波が帰ってくるのです[3]。
レーダーに近い5km地点の目標はほぼ「理想」レーダーと似た反応になるでしょうが、遠くの目標だと少し異なる動きが見られます。
ここで全体図右端、25km先の4つ並んだ目標をよく見てみましょう。操作説明の図を参考にRスコープを25km地点に合わせてみて下さい。
「照準」レーダーでは目標が全体図のビーム幅を表す点線に入ったあたりからRスコープ上には反射波が現れるはずです、反射波は徐々に大きくなり、ボアサイトに重なる頃にほぼ一定となり、ボアサイトから外れると徐々に低下していきます。しかし反射波が下りきる前に次の目標をレーダーがとらえるので反射波がまた徐々に大きくなる という興味深い反応を示します。
「照準」レーダーで25km先の並んだ目標を照射した時の反応の例
実戦ではこっちも重要:捜索・警戒レーダー
今度はレーダータイプを「捜索」レーダーに変更してみましょう[4]、このレーダーはビーム幅が広いため5km先の目標でも反射波はほとんど1つに重なって表示されてしまい、個々の識別は相当困難になります。
さらにレーダータイプを「警戒」レーダーにしてみましょう[5]、このレーダーはビーム幅が大変広いので、目標の反射波はほとんど巨大な一枚の壁のようなものになってしまっています。
また「警戒」レーダーでは反射波の幅がRスコープからはみ出るほどになっていますが、これはレーダー波のバルス幅が長いためで相手の正確な距離も掴みにくくなっています。
このようなレーダーだけだと個々の目標識別や正確なレーダー射撃などは到底不可能である事が安易に想像できます。
しかしながらこの手のレーダーはおおよその目標の位置を知ったり素早くて小さな航空機を捜索するのには適しており、「捜索」レーダーや「警戒」レーダーと同じビーム幅やパルス幅などのレーダー諸元を持つSG−1レーダーやSKレーダーは第二次世界大戦で広く用いられました。
真珠湾攻撃時の米側レーダー(SCR-270警戒レーダー)のスコープ画像、右端の大きな反応が日本軍攻撃隊である。このレーダーシミュレーターを操作していれば、このスコープ画像が何を表しているのか少し分かるようになるかもしれない。(画像:1941年オアフ島、米陸軍[b])
扱いやすいが注意も必要:PPIスコープ
最後に「全体図」右上の「目標」と書かれているボタンをクリックして「全体図」の表示を「PPI」に切り替えてみましょう。
ただその前にプログラム的に「警戒」レーダーで以下の操作を行うと無駄に多くの計算を行っているためにパソコンに多く負荷がかかります、「更新頻度」によってはパソコンの挙動が重くなり、最悪止まってしまうかもしれませんのでご注意下さい。
PPI表示の一例、ビーム幅の広いレーダーの場合は全体図は緑色の反応で埋め尽くされる事になる。
レーダーが「警戒」レーダーであれば全体図は上のような黒い背景に緑の帯が広がる異様な光景になるはずです。
これは反射波をレーダーを中心にして2次元的に表したもので、レーダーの反応を俯瞰的に把握出来るようになります。
一方で処理は大雑把なのでRスコープではギリギリ見えていた目標が見えなくなったり、Rスコープを凝視すると見えてくる個々の目標の細かな違いが分からなかったりと目的や役割による使い分けも重要となります。
レーダータイプの変化によるスコープの反射波やPPI表示の変化に注目するとレーダーの特性やその限界を理解するのに役立つでしょう。
例えば冒頭のレーダー画像は「捜索」レーダー相当のSGレーダーを最大レンジ約14kmで運用している状態でのPPI画像ですので、反応を見比べてみると面白いでしょう。
またレーダー切り替えると全体図右にある自分のレーダーを表すお椀型のアンテナが大きくなったり小さくなったりしているのにお気付きでしょうか?
これは実際のレーダーの大きさを参考にしてアンテナの大きさを変化させたものです。レーダーアンテナの大きさは周波数やビーム幅などで大きく左右されるものなので、レーダーの諸元の変化がアンテナの大きさに与える影響をなんとなくでも感じて頂ければ幸いです。
操作が難しい時は「||」や「ストップ」ボタンを押して動きを止めた状態でもレーダーを動かすことができるので、是非利用してみて下さい。
目標のRCSなどの設定。艦船は時速15ノットで下に向け移動している。この値を参考にレーダー方程式を使い計算すると、ビーム幅が極端に狭い場合を覗き反射波の強さはほぼ計算通りになる。
おわりに
冗長な説明にお付き合いいただきありがとうございました。
今回の記事が皆様のレーダーに対する理解に少しでも役立てられたら幸いです。
なお注意点としてこのシミュレーターはレーダー方程式とメインローブのビーム幅、パルス幅”のみ”を参考に作られています。
地球の丸みや大気の減衰を無視しており、地面・海面も反射も計算していません。そのほか受信機の能力は適当でノイズは完全にランダムな値を入れているだけ、レーダー電波の回折、散乱、干渉、サイドローブなどといった重要ながら面倒なものは全て無視しています。
さらに目標からレーダー反射波は幅や凹凸を無視している上にRCSは角度によって変化しない一定の強い反射波を返しているなど、かなり理想化された条件のシミュレーションで現実の反応とは大きく異なる事をご了承ください。
上図はA-26攻撃機の詳細なレーダー反射断面積、方位によりに相当細かく変化している事に注意。このような現実の細かい反応をシミュレーターで再現しようとすると大変な手間と苦労と設備とお金とパソコンスペックが必要となるのである。(画像:ウィキメディア・コモンズ[c])
長々と記事を書き連ねてきましたが、実際のレーダー運用で大きな問題となる地面や海からの反射波・クラッターの除去方法やアンテナ利得や周波数の話のほか、軍事系の話で問題となる様々なスキャン方式やステルスの効果、妨害方法や妨害回避技術などなどレーダーに関わる話題は事欠きません。
今回のシミュレーターの評判がよければ、こんな感じのお手軽に操作できるシミュレーターを使った連載記事でも書けたら面白いな〜 とか考えておりますので、色々と感想をコメントしてくださると嬉しいです。
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コメント
そして改めて見て見たらスマホで見た場合はシミュレーターが動いてくれないようになってたや(´・ω・`)
その他パソコンで主に作っていたのでスマホ対応が色々とイマイチな感じ(汗
近いうちにプログラム的な訂正を管理人さんに送ります、それまでスマホでは動かないと思いますのでご了承ください。
雨雲レーダーなんかは身近じゃないかな。
人工衛星とかに使われている合成開口レーダーは興味あります。
時間と手間をかけて大変だったでしょう
これからも頑張って下さい
<分析してくれるようになったのはいつ頃なのか
分析自体はレーダーが登場当初からレーダー手が波形とにらめっこしてどこのドイツからの反射波かを見ていたはずです。
山や地面の反射は比較的わかりやすいですが、低空侵入の航空機となれば油断していると簡単に見逃してしまいます。(本シミュレーターでも、他の艦船の反射波に航空機の反射波が簡単に紛れ込んでしまうのを見ることが出来るでしょう)
敵については今も昔もかなり苦労しておりIFFやトランスポンダを作って信号応答から敵味方を判別するようにしていますが、いまなお味方機のみならず民間機に対する誤射までもが発生しているのが現実です。(シミュレーターを作って見て反射波からの機種識別なんて夢物語なんじゃ無いかと疑うようになりました(´・ω・`)
全自動で分析する装置としてイージス艦のイージス・システムは目標の捜索・識別を自動で行い驚異に応じた迎撃システムを備えているとされていますが、相手もステルス性の重視とかデコイとか使うのでここら辺はイタチごっこで、人間の経験と勘と責任に頼る場面はずっと残されるでしょうね
※3
<とりあえず動かしてから理解してみようって発想は素晴らしい。
ありがとうございます。理屈や理論も大事ですが、とりあえず手と目を動かして学ぶのはとっかかりとしては最適だと感じています。
雨雲レーダーや気象衛星などは今や生活を支える無くてはならないものですね!
一方で空気のごとく当たり前になってしまったので、逆に特に知る機会が無いのが悲しいところ(´・ω・`)
そういう話題もいつか取り上げたいな〜(いつになるかはわかりませんがw
※4
<時間と手間をかけて大変だったでしょう
ありがとうございます、寄り道や作業中断の期間もありましたが半年ぐらいかかりましたかね〜
ネタは色々と思いつくので沢山作りたいところですが、時間と手間がかかるのが難点です(´・ω・`)
まとまった時間をとって遊びまくってみます!
理屈としてではなく実感として難しさが伝わってくる
ぶっつけ本番で自動車の運転してる気分だ
レーダーの前に立って暖かくなりたいのか?
と思ってしまった。
レーダーの話題にあるといつもちんぷんかんぷんになってしまって
拒否反応が出るほどになってしまったけれどまた学ぶ元気が出てきた
こうやってとりあえず触ってみようって物を見ると昔買った電子回路の玩具を思い出しますね
しかし考えたらレーダーは出した電波の反射を捉えているわけだから、確かにこれだけで民間機か軍用機か、敵か味方かを判別するのは流石に(ヾノ・ω・`)🐌。
他のIFFやトランスポンダのような自ら発信してアピールしたり事前に航路を予告しないと訳がわからないままに誤認されかねないですね…
良いぞもっとやれ
頭では理解してた警戒レーダと照準レーダの差異とか、某これくしょんでのレーダ別の能力値の差とか、
現代のレーダシステムが如何に便利な物かがよくわかった
・・・・しかもこれで戦争をしろと?化物か先人たちは
「サーキットで最速の車は、公道でも最速だ!(危」
Nスペの「エレクトロニクスが戦を制す」の回で、二一号電探のスコープを再現してたのを思い出した。
初期のレーダースコープといえば、みんなこういうオシロスコープのことだったりするという。
大戦期の夜間戦闘機から戦後の全天候戦闘機まで、パイロットとレーダー手の二人三脚が必須だったことが、これでよくわかるのではないかと(単座機のF6F-NやF4U-Nなんかは、わかりやすさ重視でかなり指向性の強いレーダーとスコープを積んでいたりして)。
探知範囲の広いレーダーは精度が微妙で、精度の高いレーダーは範囲が狭いというせめぎ合いがレーダー開発の基本で、さらに精度に比例して拾うノイズの量も増えていくという…。
レーダー 画面でググっても取り締まり検知器やゲームのミニマップとかの動画ばっかでどんな風に見えるのか長年気になってた。
解説つきでしかも操作までできて分かりやい!
これはもっと評価されるべき
レーダーが如何に分かりにくい機械なのか、多くの方々に理解頂ける素晴らしい記事ですね。
これを理解した方はSAMシミュレータへ進み、更なる深みへ・・・
スマホ対応も上手く言ったようですね、ちょっと返信遅れたので一部だけ
※10
<拒否反応が出るほどになってしまったけれどまた学ぶ元気が出てきた
そう言って下さると作った甲斐がありました。
レーダーでは実機を触って見ようとしても難しいですが、こう言った簡単なシミュレーター的なものであればずっと触りやすくなるのでどんどん使われたらいいな〜 とか思っています。
※12
<スマホ(Android)でも動きました、凄い。
Androidのスマホは最後まで上手く動かなかったので、上手く動いて安心しました。
<確かにこれだけで民間機か軍用機か、敵か味方かを判別するのは流石に(ヾノ・ω・`)
実機では機体の角度や装備によって複雑に反射波は変化するはずなので、IFFやトランスポンダが無いと訳の分からないことになりますよね・・・
理屈の上では「理想」レーダーのように非常に細い反射波を使えば相手の幅や高さはわかりますが、現実のレーダーでそこまでやるには相当大きなレーダーを使うか十分に相手が近づかないとダメという(´・ω・`)
※14
<初期のレーダースコープといえば、みんなこういうオシロスコープのことだったりするという。
実は世界初の現代的なオシロスコープを売り出したテクトロニクス社の創業者の一人、ハワード・ボラム氏は二次大戦中に米陸軍で射撃管制レーダーの士官としてイギリスなどで従軍しており、逆に大戦中のレーダーが現代的なオシロスコープ を生み出したと言って過言では無いという・・・
※16
<これを理解した方はSAMシミュレータへ進み、更なる深みへ・・・
SAMシミュレータの目標捕捉レーダーは本シミュレーターの「警戒」レーダーの表示、シルカやSA-8Bの測距レーダーはAスコープとRスコープとほぼ同じなんで、より具体的な使い方やリアルな表示を知りたい人はSAMシミュレータをダウンロードしてやってみよう!
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