2018年立川防災航空祭レポート
文・写真:海猫
9月29日に立川飛行場で行われました立川防災航空祭に行ってきたのでそのもようを画像をメインで報告していきます。
なお画像はかなり大きめですがご了承ください。
中央公論新社
売り上げランキング: 441
大正時代に帝都防衛構想の陸軍航空部隊の中核拠点として当時立川駅北口に広大な土地があった事と鉄道に近く物資輸送や兵員輸送の面でも好都合だった事から1922年立川の現在地に開設されました。
太平洋戦争中は陸軍航空技術研究・開発を担い、更には海外機の試験・評価も行われていましたが戦後は進駐軍が駐屯し、主に物資輸送の拠点として活用されました。
(画像引用:http://www.mod.go.jp/gsdf/eae/eaavn/history.html)
その後ベトナム戦争終結や駐屯部隊の横田への移転や解散が続き、1972年アメリカ軍に代わり陸上自衛隊が移駐を開始し、立川駐屯地を開設しました。
1977年に全敷地が日本に返還された後は一部は学校や体育館等の公的施設用地となり、海上保安庁・警視庁・東京消防庁等の関連施設が設置され、立川防災基地として運用されています。
立川飛行場開設後96周年となる今年度の航空祭はあいにくの雨模様のなか撮影は困難を極めましたが雨に濡れた機体もそれは精悍な映えで晴天時とは違った魅力があるものと思います。
(ちな私はTシャツ姿で雨具無しで行ってました。)
一部レンズが曇ったり等見苦しい点もございますが楽しんでいただければ幸いです。
10:30時過ぎより編隊飛行が開始されました。
先頭はUH-1J多用途ヘリコプターです。
UH-1シリーズは1955年に開発されたベルのモデル204に始まり、合衆国陸軍で正式採用された後世界中で採用された現代汎用ヘリコプターのさきがけとなった傑作ヘリコプターシリーズです。
日本では1962年から富士重工がUH-1Bのライセンス生産を開始し、UH-1Hを経て現在ではAH-1Sとエンジンを共通化した富士重工の改良型UH-1Jが陸上自衛隊のヘリボーン能力を支えています。
続いてAH-1S対戦車ヘリコプターです。
AH-1シリーズは攻撃ヘリコプターを模索していた陸軍が空軍の強い反対によりUH-1の武装型で対応していたところベトナム戦争では抜本的な解決策となり得なかった事からUH-1から大胆な設計変更をもって産まれた現代攻撃ヘリコプターの手本となった機体です。日本では1981年から富士重工のライセンス生産と併せて運用開始し、74号機からはFLIR搭載等のC-NITE改修を経て運用しています。
東京消防庁からはEC225・AS332・AS365の参加しました。
東京消防庁航空隊は1967年よりシュドカラベル製SE3160の受領を以って運用を開始し、首都圏のエアレスキューの一翼を担っています。
出場件数は部隊発足から約20年後の1989年に通算2000件を超えましたがその後急増の一途をたどっており2016年に通算10000件となりました。
現在は2017年に受領したAW139と併せて大型機と中型機の8機を運用中です。
警視庁航空隊からはB412EP・EC135・AW139が参加しました。
警視庁航空隊は1959年に受領したベル47を以って1964年に発足し、現在では大中小合わせて14機のヘリコプターによりパトロールや犯罪捜査の航空支援活動の他エアレスキュー支援を行っています。
この悪天候だと中止だと思っていたのですが空挺降下は予定通り行われました。
編隊飛行が終わったらそのまま何処かへ行くか解散だと思っていたのですが......
なんとそのまま、というより先ほどよりも密集して再度進入。
滑走路上に全ヘリコプターが集まると羽音に次ぐ羽音で大迫力でした。
ここら辺実はレンズに曇りが....OTL
近いうちに良い曇り止めポチります。
気づいたら我慢ならなくなったので対物レンズカバーを外す暴挙に出たもよう。
やはり精悍なシルエットのAH-1Sはイケメンであります。
駆動系はヒューイのものなので無茶な機動は出来ないらしいのですがそれでも俊敏な機動で飛んでいきました。
ここから災害訓練展示になります。
まず最初にパトカーが到着し現場確認と現場保存を行います。
要救助者への処置も始まりました。
続いて陸上自衛隊と警察のヘリコプターが情報収集を行います。
次に東京消防庁と陸上自衛隊のヘリコプターが傷病者後送の為着陸します。
遠くで待機する化学災害が得意なフレンズ(?)
そこで突然化学事故が発生、化学物質が漏洩しました。
今回はここでいったん区切り、次回は化学事故から始まります。「○○○予告!化学事故について予習しよう!」
ということで化学事故について簡単な触りを。
過去に幾つかの大規模な化学剤漏洩事故がありますが、中でも有名なものの一つがインドのボパール化学工場事故です。
1984年12月インドのマディヤ・プラデーシュ州ボパールに所在するユニオンカーバイド・インディアの農薬工場からイソシアン酸メチルが漏洩し、50万人以上が暴露負傷しました。
イソシアン酸メチルは微量を吸引、接触した場合咳・呼吸困難・喘息の症状が現れ、重篤な場合肺水腫・肺気腫・肺出血等の肺疾患により死に至る毒性の高い物質で、これにより1万5千人以上が亡くなり、また多くの後遺症に苦しむ重傷者が出ました。
事故の原因は主に管理マニュアル及び管理が適切でなかったことですが事故が拡大した要因として
・現地の医師等の対応要員の知識不足(もっとも診療所や町医者及び地方病院施設ににそこまで求めるのは非現実的ではありますし彼らもまた被災しながら献身的な活動を行い最善を尽くしました。)
・化学剤の特定が遅れ、適切な対処に時間がかかった
・被災地域が主にスラム街で正確な人口動態が把握されていなかった
等があげられます。
このような事態に備え、例えば相模原市ですと”スーパーレスキューはやぶさ”の資機材に特殊災害対応自動車があり、これは核物質・化学剤・生物剤の特定を迅速に行い、対処する装備があります。
(画像は2018年度防災訓練相模原会場に参加した特殊災害対応自動車
なおこの日も雨だったもよう...。)次回は消防救助機動部隊の除染車が活動します。
コメント
ちなみに今度6日に淵野辺の陸上装備研究所の一般公開に行く予定でしてレポート記事も投稿したいと思いますが
そこで関係者にしてほしい質問を※欄で募集したいと思います。
公式によると屋外展示では
・IED走行間探知技術(研究中)
・軽量戦闘車両システム
・16式機動戦闘車(試作車)
・10式戦車(試作車)
・軽装甲機動車(試作車)
が予定されているようです。
必ずしも聞けるとは限りませんが可能であればこれらの車両や現在研究開発中の装備等でwikiや雑誌等で語られていない項目を聞ければと思っています。
化学災害対処訓練・地上展示編があります。
そちらもご覧いただけたら幸いです。
立川飛行場と言えば映画「シン・ゴジラ」で災害対策本部予備施設として使われていたのが印象的だったw
暗雲の中進むUH-1JやAH-1Sもええもんですな〜、消防や警視庁のヘリがいるのも自衛隊機とは違ってまたええ感じ。
災害では地域の消防や警察と自衛隊の連携が重要になるので、こういった三機関連携の災害訓練は重要ですね。
化学事故とは少し違うけど、今年6月の豪雨では岡山県のアルミニウムの溶解炉が爆発したし、先日の台風21号ではコンテナに積まれたマグネシウム が燃え出していまだに完全には鎮火出来てないみたいで、類似の事故は日本でも起こりうる話。
こういう時の消防や他の組織との連携が重要なんだと実感しますな〜(そして連携に失敗するとインドの事故のように酷いことになるorz)
編隊飛行が終わった後自衛隊・消防・警察が密集体形でホバリングしていた時の迫力は
"怪獣大戦争"が聴こえてきそうでした。
学生時代〜40代半ばまで八王子・日野に住んでいた者としては、とても懐かしい。立川が昭和天皇の陵墓候補地だったという説?もあったなあ。チト感傷的になって場違いにも自分語りをしてしまいました。
淵野辺のレポート、楽しみにしております。
ありがとうございます。
一般公開の放送解説やツアーのガイドを意識してみました。
興味深い記事をありがとうございます。
雨のイベントのあとはカメラの手入れが大変ですよね(泣)。
ヘリの異機種大編隊、生で見たら凄い迫力でしょうね~。
湘南在住当時は毎年正月に陸自木更津駐屯地所在の様々なヘリの大編隊が江ノ島上空を航過するのを見ていました。
私はおっさんなので、UH-1の大群を見ると脳内で「ワルキューレ騎行」が自動再生されてしまいますw
AH-1Sはシーソー式ローターヘッドなのでマイナスG機動の制限がありますが、それでも熟練したパイロットが操縦すると凄い機動を見せてくれますね。
以前ATHの飛行隊長さんが「いや~、そろそろ中年にはキツいですわ。Gスーツ欲しい」と仰っていました。
※3
先日の総社市のアルミ工場爆発では、我が家から直線で数km離れているのに家全体が揺れました。
急いでテレビをつけてもネットのニュースサイトにも地元自治体の防災ツイッターにも全く情報がなく、結局通りすがりの個人のツイートで事故の内容を知りましたが、あれが有毒化学物質の流出事故だったらそれこそインドのユニオン・カーバイドのような大惨事になったかも知れません。
市内には各種化学物質を扱う水島コンビナートがあるので、爆発音を聞いた時はそちらで事故が発生したのかと思いました。
化学災害は見えないのと身近にあるのとでヤバいっすね。
ちなみに自分はボパール化学工場事故の事はwikiで概要は知っていたのですがドキュメンタリー動画で見ると全く印象が変わりました。
http://sp.nicovideo.jp/watch/sm29789376
リアル"バイオハザード"というか見えない恐怖というか....。
我が家の近くの橋本工業地帯でどのような化学剤を扱っているかは分かりませんが備えは必要なのかもしれませんね。
(中古の放出品MCU-2/Pマスクとフィルターは持っているけど使えるかな...?)
相模原もお気をつけて!
防災訓練懐かしいなぁ。
ベテランの方がやってた軽傷者の区分け方が秀逸過ぎて・・・
「怪我されてる方はこれから治療を受ける場所へ案内するのでこちらへ集まって下さい!」と呼び掛けると釣られた方々が寄ってくるので、一人で簡単に誘導し、残りはトリアージに掛かれるという。
化学災害は関東大震災の火災元が薬品関連だったという話もあるので、特殊な症状に限らず危険がありますよね。
はえー。それで"緑"を省ける訳ですね、賢い。
化学火災だと下手すると四川の爆発みたいになりますから備蓄物の把握も大事ですね。
※10
たまに合衆国陸軍のUH-60が飛んでいますね。
今日も夕方に低空で周回飛行していましたし
最近だと牽引榴弾砲っぽいものとその弾薬のようなものをスリング輸送で吊ったり下ろしたりしながら周回飛行していたのを覚えています。
そういえば最近は警察のパトロール飛行をあまり見かけないような。
アメリカ製は小型機が少ないから大型ばっかに集中してるのかと思ったら、AS332のような大型機も購入してる。(もちろん、S-92を買ってたりするので米国製もある。)
何となく、調達費の削減のために自衛隊と同じS-70シリーズ買ったりしないのかなと気になるところ。あとは、米国のヘリって思ったより種類ないかんじ…?
まあ自衛隊は米軍機と同系でないと共同で動く時に色々と不都合だろうし
壁透過レーダーの話とか気になったけど、質問は現地で展示されているものに関する方が良いかな?
ちょっと長いけど
IED走行間探知技術(研究中)について
・2016年の展示では「IED探知システム」という名称で白いトラックに載せた状態で展示されていたが、今年のイベント紹介のページでは高機動車に載せられた状態の写真が掲載されていた。これは研究で一定の成果が得られて装備化に進んでいる という理解で良いのか?
・また同じ写真でIED探知システムが上に伸びているような写真があるが、これはどういう意図で上に伸びているのか?
参考:防衛装備庁:陸上装備研究所一般公開2018
http://www.mod.go.jp/atla/gsrc_opentech2018/index.html
「MAMOR(マモル) 2014 年 05 月号」の「技本レポート:IED探知技術の研究」では
・「水分子は、電磁波を阻害する要因となるため、水分量が異なると計測結果に大きな差が出てしまう」とあるが、雨が降ると使えない、地質によって探知確率が異なるなどの問題が出て使用条件が狭まりそうだが、地質や気候で性能が大きく左右されるという理解で良いのか?
・また同書では今後の課題として小型化と振動や凹凸の自動補正、IEDを探知すると自動ブレーキをするシステムなどの構想が書かれているが、それらはどの程度実現したのか?
・最後に防衛装備庁のページでは「本研究は米国と技術情報の交換を行いながら実施しています」とあるが、具体的に米国製装備品を実験したりしたのか? また今後の研究の推移次第では本装備を米軍が試験したり、あるいは実地で利用する可能性はあるのか?
参考:防衛装備庁:陸上装備研究所
http://www.mod.go.jp/atla/rikusouken.html
質問続き
軽量戦闘車両システム
・本車両はインホイールモーター駆動のハイブリッド方式であると理解しているが、ハイブリッド車は通常車両に比べて重たいモーターとバッテリーなどを搭載しなくてはならずレイアウトの自由度は上がる一方で重量や構造面で別の課題が出てきそうだが、その点実際に開発してどのような知見が得られたのか?
・またインホイールモーターは構造によっては悪路での走行性・信頼性・耐久性に重大な問題が生じうるが、防衛装備品のインホイールモーターは類似の民生品と比べてどのような違いがあるのか?
・このようにハイブリッド方式はこのように従来車にはない課題がいくつかあるが、その中でも軽量戦闘車両システムにハイブリッドシステムを採用する一番の利点は何であるか?
・最後に軽量戦闘車両システムが装備化されると96式装輪装甲車や16式機動戦闘車、さらにこの前白紙撤回された装輪装甲車(改)や以前研究していた将来装輪戦闘車両と能力や任務が競合するように思えるが、将来的にはこれらの装備を更新する形となるのか?
てか16式機動戦闘車にも関わることだけど、陸自の将来車両整備はコマツのNBC偵察車・装輪装甲車(改)系列で行くのか?
それとも三菱の16式機動戦闘車・MAV系列で行くのか?
それとも軽量戦闘車両システム的な全く新規の車両を整備して行くのか?
そもそも能力も任務も違う車両を共通車体で行くのが本当に予算的・運用的に意義あることなのか? そこらへんが謎だ(´・ω・`)?
10式戦車
生産数が毎年一桁で生産ラインの維持が大変そうなんですが、その辺り大丈夫なんでしょうか(震え声
以上、色々とありますが出来るものだけでも質問していただけるとありがたいです。
アメリカ製ヘリとフランス製ヘリはローターの回転方向が違うのでー
トルクも逆になるので飛行特性が逆になります
機体の傾きやすい方向も変わるので、救助ホイストも傾いた方に付けた方が便利
日本の公官庁はフランス方式が救助に有利と判断して採用、一貫してフランス方式に
飛行特性の違うヘリでの更新はなかなか難しいであろうと
兵士が背負式の対IED電波妨害装備なども米軍では運用されてますけど
…多分起爆用の携帯電話電波妨害する程度のものであろうけど
インホイールモーターは不採用になったんじゃなかったっけ?
※1
相模原の行きたかったけど都合がつかないのでレポート楽しみにしております。
個人的には軽装甲機動車ば装備化から20年近く経つけど、最近車体の延長をした改良型が出たけど、更なる改良、発展があるのか気になります。軽装甲機動車関連の話題があると嬉しいです。
榴弾砲のスリングなんて羨ましいなあ。こっちはたまに下志津に降りるチヌークかUH-1ぐらいしかありません。場所柄、P-3Cはしょっちゅう見るし、民間機は数珠つなぎに飛んでいるけど。
※17
コレは貴重な情報を(自分が知らないだけかも)ありがとうございます。
※12さんと同じ疑問を持っていましたが、氷解しました。
ありがとうございます。
ただ装備品の採用に伴う選定や生産管理については政治や企業の意向や情勢が絡んでくるので技術者に聴いてもはっきりした答えを得るのは難しいと思いますが技術者視点からの感想や所見を重点に意見を得られれば良いかなと思います。
添付していただいた資料も見て新たな質問も考えてみようと思います。
軽装甲機動車の車体延長について差し支えなければ記事か情報をお教えいただけるとありがたいです。
以前ツイッターで見たのですが、防衛省から情報公開された資料の画像で、無人機を乗せるためのスペースを確保するとの理由で30cmぐらい延長した図面を見ましたが、今調べると非公開ツイートになってて画像が見れません。
申し訳ないです。
ありがとうございます。
それでは”軽装甲機動車の設計変更を伴う改修型案の研究開発はあるのでしょうか”
という形でもし質問が可能であればしてみたいと思います。
コメントする