大胆予想!2030年代を見据えて、自衛隊の未来を予測する

文:ミラー

 今年は猛暑と豪雨が大変な夏ですが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。
余りの暑さに日々蕩けておりましたミラーです。
コミケ参加の方々はお疲れさまでした。


 今回は、個人的に予測している自衛隊の将来に関して予想してみようと思います。
 思えばWW2の終戦から73年が経ち、自衛隊の歴史は旧大日本帝国軍を超えつつあります。そんな中で、陸海空自衛隊は冷戦体制からの脱却という大きな転換期を迎えつつあります。

 そこで、大局的な意味での自衛隊の将来像を簡単に書いてみました。

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1、人材問題と陸自のスリム化


 現在日本は少子高齢社会を迎え、自衛隊も募集年齢を32歳まで引き上げる事で人員の確保を行えるように進めています。

 しかし、将来的に日本の人口は総務省の平成24年の発表に基づくと(http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h24/html/nc112120.html
15~64歳の生産年齢が60パーセントを割るとの事で、自衛隊にも大きな影響が出てきます。
 現在自衛隊の人員は約25万名を擁しており、特に陸自は15万人と半数に及んでいます。

 そこでまず現れる影響が陸自の編成数と人員の削減です。
 今までの冷戦型編成を残した状態では、完全充足にはとても足りない人員しか集められないでしょう。そこで、現在行われているのが機動師団の編成と特科と機甲といった重装備の方面直轄化です。

 機動師団の特徴は、普通科連隊の数を3個から2個へ減らしつつ、新たに即応機動連隊という16式機動戦闘車などの走行車両を中心とした編成を加えます。これは現在も連隊を編成する中隊のひとつを96式装甲兵員輸送車を集中配備するというやり方の拡大版でもあります。

 ただ、これでも人員が不足する可能性があり、一部では旅団というより小さめな編成を行う事も行われていますが、人員が3分の1程度になるという事もあり、師団数そのものを削減するか旅団として水増し編成とするかの選択が迫られるでしょう。

 特に災害派遣では人手が必要となるので、余りに少人数の編成も問題です。
 将来的には、それぞれの特色を持った方面直轄の師団が編成されていくと考えています。

例えば
第1空挺団を中心とした緊急展開戦力としての陸上総隊直轄部隊
第7師団を中心として機甲打撃力に特化した北部方面隊
即応機動連隊を主軸とした機械化歩兵戦力を中心とする東北方面隊
首都防衛の普通科戦力を主軸とした東部方面隊
水陸機動団の運用支援に集中する中部方面隊
小規模な機甲戦力を含めた対艦誘導弾などの特科を多く編成に含む西部方面隊
第15旅団の空中機動能力を充足させた南西航空方面隊
といった編成がみられるかもしれません。

 陸自のコンパクト化で重要なのは、部隊の機動化と情報偵察能力の強化、そして支援火力の強化です。部隊の機動化に関しては機動戦闘車などの路面機動可能な装備の増強により、動的防衛の実現へと増強を続けてきました。

 情報偵察能力の強化に関しては小型UAVの運用が一部部隊で試験的に始まっており、今後も増強が続けられると考えられますが、現状で陸自は世界の流れに対して遅れをとっている状況であるので迅速な改善が急がれます。

 最後の火力支援能力に関しては現在すでに行われている施策とこれから努力が必要な施策があります。
 
 まず前者は普通科連隊に配備されている重迫撃砲の配備数増強と火力戦闘車という155mm榴弾砲を
自走トラック化させる計画です。重迫撃砲の配備は特科部隊の削減と並行して行われていますが、その火力は昔の105mm榴弾砲の射程に匹敵すると共に榴弾の威力はそれを上回ります。
火力戦闘車は削減されていく火砲の数を火力の機動によりカバーする事でしょう。

 努力が必要な項目としては、戦闘ヘリといった近接航空支援能力です。
 それには武装UAVも含まれますが、ヘリによる部隊の空中機動を考慮するなら戦闘ヘリの類もまだ必要と言えるでしょう。武装化した汎用ヘリも有用ではありますが、人的資源に乏しく、配備する装備数を制限しなければならない自衛隊には専用の生存性を考慮した専用の戦闘ヘリの価値はまだあります。

 災害派遣に関しては捜索と偵察にしか使い道がないとは言え、中途半端にしてしまう方が任務遂行に影響があるでしょう。

 将来の陸自は少子化を視野に入れて編成数の削減と部隊当たりの火力情報力機動性の強化を進めて
行くでしょう。


2、海自の省力化と任務の明確化

 海上自衛隊はシーレーンの防衛を目的として対潜能力を中心とした外洋型の編成を取り続けてきました。そのため、比較的大型の護衛艦を中心とした編成を続けていましたが最近になってかつてのDEクラスにあたるFFMが計画されています。

 これは昨今の島嶼防衛の重要性から使い勝手の良い中小型護衛艦が必要となり、昨今の大型艦艇中心の建造計画から変わりつつある事を示しています。また、海自も人口減少の影響を受けており、省力化を進めるためにある程度規模を縮小した艦艇が少なくなったとも言えます。FFMは従来のDEと異なり比較的遠洋でも出られる事から、長期間の哨戒活動にも向いていると思われます。

 昨今の海自編成の移り変わりでは潜水艦の配備数増強も特徴として挙げられます。
日本が配備する通常型潜水艦は遠方へ展開するのではなく、比較的近場の海峡を守る事を想定していると考えられています。ここから分かるのは、海上自衛隊は洋上防衛に於ける艦艇数の不足をカバーする方向へと舵を取っているという事です。

 逆に大型艦艇はヘリ搭載型のDDHとイージス艦への移行が完了するDDGが中心となり、強力な防空・対潜能力を保有する護衛艦隊を編成します。彼らはFFMで対処しきれない強力な敵戦力への対応や従来のシーレーン防衛を担う中心戦力としてこれからも活動していくでしょう。

 DDHは災害時の救難拠点となりますし、イージス艦は弾道ミサイル防衛の要でもあるので、展開中は哨戒活動などに従事する事が難しくなります。哨戒機も従来機より高速なP-1への移行で少数で広域をカバーできるようになりますが、艦艇の不足はやはり問題です。水陸両用作戦を展開する際にも、直接揚陸を支援する艦艇は不足する事が予測されるので、FFMは現在考えられている20隻程度の数より多くなるかもしれません。

 これから海自は、人材の不足と戦いながら艦艇数の増強というジレンマに悩む事でしょう。


3、空自の多目的化と支援装備の増強

 航空自衛隊は新しい世紀を迎えて大きく躍進を続けている組織です。
F-2戦闘機への誘導爆弾JDAM運用能力付与に続き、各種スタンドオフ対地攻撃装備が配備される計画が組まれています。これはステルス戦闘機であるF-35Aの導入も響いている事でしょう。

 かつて制空戦闘を主体として徹底して考えていた空自に、対艦攻撃以外の支援攻撃要素が組まれたのは大きい変革でしょう。同時に敵防空火力への対抗が必要な事からエスコートジャマーとスタンドオフジャマーという2種類の電子戦機導入が考えられているのは、空自の本気具合を考えさせられます。
(他に詳しい方々が多くいるかと思いますが、前者は攻撃する航空部隊に随伴する電子戦機で後者は空域そのものに対して電子的妨害を仕掛ける機体と考えると分かりやすいかもです。)

 対地攻撃力の増強は、従来の対艦攻撃による洋上阻止だけでなく、島嶼防衛における敵火点の制圧といった危険度の大きな任務への投入が考えられ、従来の空自戦闘機部隊から多目的化を進めて大きく躍進していく過程にあるでしょう。

 近年、空自は航空作戦の支援機材導入にも力を入れています。
 直近ではKC-46空中給油輸送機の導入を決定しています。空中給油機を導入する理由としては、空自も人口減少の影響を避けられないという点があります。

 加えて戦闘機といった機材の価格高騰も大きく響いています。
 作戦機の削減を補うには、運用効率を高めて一度の出撃で得られる効果を増強する他にありません。

 早期警戒機と同じく空中給油機は戦闘機の作戦時間を引き延ばし、少ない戦闘機でも長時間の哨戒任務などを実現する事が出来ます。また、輸送機としても用いられるので、C-2輸送機などと並んで災害派遣を含めた各種輸送任務にも活躍を期待できるでしょう。

 これからの空自は、主力戦闘機部隊の多目的化と支援装備の増強によって数の減少を物ともせずに戦力を高めていく事でしょう。

 以上で簡単ですが、これからの自衛隊の予想を終わります。
 昨今は、新型装甲車の調達停止やヘリの新規導入の長期化、機関銃の輸入化と陸自装備調達計画に問題が多くあるようにも感じられます。
 今後も日本も守る自衛隊がその戦力をしっかり発揮できるような施策が続けられるように願います。

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