空自の日本防空史37
新時代の早期警戒機
文:nona
http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2001/photo/frame/ap133012.htm
警戒監視活動中のE-2C早期警戒機
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海自との連携不備が露呈
冷戦の終結後、日本をとりまく安全保障環境は大きく変わり、空自とE-2Cに求められる任務も変化しています。
1999年3月23日に発生した北朝鮮の不審船による領海侵犯事件では、海自と共に不審船および周辺空海域の監視を実施しました。
しかしながら、このときE-2Cと護衛艦の間で秘匿通信ができなかったことが判明しています。(この問題は2002年までに対策がなされています)
陸海空3自衛隊間の連携体制の不備は1976年のMiG-25事件でも指摘されており、対策が進められていたのですが、これは総監部や司令部のレベルに留まるもので、現場部隊間の横の連携は十分ではなかったのです。
ホークアイ2000へアップデート
http://www.mod.go.jp/j/yosan/2000/y2000.pdf#page=13&zoom=90,573,-187
平成12年度防衛力整備と予算の概要
2004年以降、空自のE-2Cはホークアイ2000と呼ばれるアビオニクスのアップデートが実施されています。
防衛庁はアップデートの目的を「航空軍事技術の進展に伴い、現有の早期警戒機(E-2C)のレーダー探知距離が相対的に縮小してきていることに加え、平成11年度に発生した不審船事案等の経験からレーダー反射物の多い海域や島嶼部上空での監視能力を向上させるため、現有機のレーダー機能の向上を図る。」としています。
また、通信機能の強化に伴いリンク16に対応し、同じくリンク16対応改修を施したF-15JやF-2の自動迎撃管制も可能になったと思われますが、JADGEやE-767を差し置いて、E-2Cが管制任務に投入されるかは不明です。
なお、ホークアイ2000改修時にはNP2000プロペラへの換装は見送られたのですが、2017年頃より、プロペラ換装が実施されているようです。
NP2000は複合材の8翅のブレードを有するプロペラで推進効率が高く、燃費改善や騒音低減の効果が期待できるようです。
E-2C部隊を沖縄へ
20世紀中は全てのE-2Cが青森県の三沢基地に配備されましたが、2000年代以降、東シナ海における中国の活動が活発化したことで、2012年ごろからE-2Cの一部が沖縄の那覇基地に移動し、西南諸島空域の監視体制を補強しています。
2012年12月13日には、尖閣諸島魚釣島南部を中国海洋局所属のY-12機が低空から領空侵犯し、これを発見した巡視船の通報をうけ、E-2Cが1機、F-15Jが8機、緊急発進する事案も発生しました。
その後は長らく中国「有人機」による領空侵犯は公表されていないものの、領空の近くまでは頻繁に飛来しているとされ、しばしば示威行為をとっています。
2014年4月に那覇の分遣隊は603飛行隊へ発展し、4機のE-2Cと130名の隊員で任務を継続しています。
E-2Dの配備で戦力を増強
603飛行隊が新設された2014年の11月、防衛省は4機のE-2D導入を決定し、2019年の配備にむけ準備が進められています。
E-2Dは2007年に初飛行したE-2シリーズの最新型で、外観は50年前のE-2Aと大差ないものの(ある意味驚くべきことですが)、レーダーは電子捜査式のAN/APY-9を搭載し、味方の艦艇や航空機から発射されたミサイルを誘導するリモート交戦機能が付与されています。
導入検討時に同じく候補とされたボーイング737AEW&Cと比較した場合、E-2Dは滞空時間や機材人員の搭載能力で劣るものの、レーダー性能は737AEW&Cを上回る面があり、初期費用・維持費用ともに安価で長期にわたるサポート体制が見込める点などが評価されたようです。
空自向けE-2Dの価格は1機あたり144億円ですが、予備部品代金を含めた場合の価格は約260億円で、1979年に1機86億円(部品代込み)で購入したE-2Cと比べると、(理由はあるのでしょうが)その価格には驚かされます。
なお、E-2Dの導入後も当面はE-2Cの13機体制も維持される見通しで、E-2Cの置き換えは2020年代以降に、後述の国産早期警戒機によってなされると想定されています。
47年ぶりに国産早期警戒機を検討
防衛省は2014年に国産早期警戒機の開発にむけた研究を、2015年度から2018年度の期間で実施する方針を発表しています。
以前に防衛省(庁)が国産機の検討を開始したのは1967年のことなので、実に47年ぶりのことです。
一般報道ではP-1哨戒機を母機とし、背部にロードドーム型のアンテナを搭載した姿のイメージ図が公開されていますが、実際にどのような形状となるかは、実のところ不明です。
それどころか本当に国産早期警戒機が開発されるかについても、現時点ではよくわかっていないのですが、来年2019年には新しい防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画が開始されますので、近いうちに続報があるかもしれません。今後に注目です。
https://news.northropgrumman.com/news/releases/northrop-grumman-completes-first-flight-of-japans-e-2d-advanced-hawkeye
ノースロップ・グラマンが公開した空自向けE-2D
ここまでF-1、F-14、E-2と70~80年代の航空機装備を中心に解説してきたので、次回以降はレーダーサイトや基地防空隊、基地抗堪化施策など、地上の防空部隊とその装備、施設を中心に解説する予定です。
参考
航空自衛隊「装備」のすべて「槍の穂先」として日本の空を守り抜く
(赤塚聡 ISBN978-4-7973-8327-0 2017年5月25日)
E-2D Advanced Hawkeye: The Sixth Sense of the XXIst Century US Navy Fleet
(2014年8月29月 navyrecognition.com )
Northrop Grumman E-2C Hawkeye 2000 Brochure
(ノースロップ・グラマン )
Northrop Grumman Expands Industry Support for Japan E-2C Hawkeye Program
(ノースロップ・グラマン 2013年12月23日)
Developmental Flight Test of a Powered Approach Stability Augmentation System on the U.S. Navy's E- 2C Hawkeye 2000 Aircraft
(Robert K. Williams, University of Tennessee 2002年12月)
Detect and Direct - The Navy’s newest Hawkeye gets closer to the fight.
(Preston Lerner, Smithonian Air & Space Magazine 2008年7月)
ー自衛隊の現状と課題ー
(2002年7月13日 防衛庁)
平成12年度防衛力整備と予算の概要
(2000年 防衛庁)
行政事業レビューシート 早期警戒機(E-2C)の改善
(2013年 防衛省)
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コメント
物価や為替の変動があるとは言え、外見が同じ飛行機でも主に中身の電子機器のおかげで価格が3倍にもなるんだから最近の兵器は恐ろしい(´・ω・`)
E-2Dは新規増勢という事で、警戒航空隊に新しい飛行隊が新編されたりするのだろうか?
なんにしろNIFC-CA対応のE-2D導入に続いて海自のP-1を母機とした国産早期警戒機が導入されれば空海の連携がさらに進むことは間違いなし! これが実現すれば西南諸島の守りも安心だな〜(E-2DのCEC搭載のゴタゴタから目をそらしつつ・・・
メガワット級レーザーではシステムが巨大すぎて早期警戒機に積むには他の機材も圧迫、射程も200kmでは短い
冷却問題で連射も効かず費用対効果が悪そう
…でアメちゃんは計画放棄
航空機搭載レーザーは、小型化と冷却問題をクリアするブレイクスルーが必要だ
…日本がそこまでのものを開発したなんて話もないし
「E-2DのCEC搭載のゴタゴタから目をそらしつつ・・・」
いやいやコレが一番問題でしょ。目をそらすナーッ!
P-1母体のは、もはやAEWではなくてAWACSでしょう。待ち遠しいもんだなあ。
B–1BやAC–130に積むのもポシャッたんかな?
空自の日本防空史35 幻の国産早期警戒機 から
> 同じく国産のPX-S(後のPS-1哨戒飛行艇)を母機とするAEW
今度は艦隊随伴兼用としてUS-2にお皿を乗っけて、更に飛行艇母艦も建造しよう(泥酔中
離島での整備能力支援の為にあったほうが良いかも!甲板はヘリデッキにも使えるし補給・支援能力もあれば災害派遣でも活躍できるし!艦名は"あきつしま"が良いかも!
新AEW案、他の国産機の存続を危ぶむ声があるなかでどうなるか気になりますね。
F-35の導入でロシア機の様に機体間の情報共有を主体とした戦闘も出来る様になりそうですし。
空自による対地打撃力整備も近接支援が出来るかな程度から航空阻止まで視野を広めつつある様に感じるので期待です。(敵地攻撃からの派生ではあるでしょうが)
※3
防衛大臣からのトップダウン?で搭載が決定されたみたいで心配はなさそうです
共同通信の報道では哨戒機などにも搭載していく方針のようで、滞空警戒能力も持つP-1にCECを積めば、海自は70機ものプチAEWを持つことになるかも…
B-1やAC-130のレーザーは対地攻撃用では?
レーザーで弾道ミサイルを撃墜するには敵地深く侵入して発射直後のミサイルを狙うか、大気圏突入時の数百度もの熱に耐える弾頭を焼き切る超々大出力レーザーを準備しなければならないんだけど
前者はアメリカが検討しているように無人機にレーザーを積むことで防空網の弱い北朝鮮やイラン相手にならまだ実現可能かもしれないけど、後者は技術的にはまだまだ実現不可能なはず
だって日本が開発した「高出力レーザ」の20倍以上の破壊力を持つ巨大・大出力レーザー兵器を747に積んだAL-1でさえ
ブースト段階(弾頭分離する前)の液体燃料式弾道ミサイルを300kmという至近距離で撃墜するのが精一杯だってのに
軍研にあるようにP-1なんかにレーザー積んだとしても弾道ミサイルを有効に迎撃できるとは考えにくい……
しかしシステムを自前で作らない場合、新艦載SAMって艦隊の見通し距離内誘導で終わりってなるけどどうするつもりなのやら
米CECに組み込んでよとか言うならSM6買えよってなるだけだろうし
25年度の行政事業レビューだと、P-1は初度費除いた機体・エンジンで合計約130億円
あと洋上無線ルータの発展型として国産データリンクは普通に整備されるはず
てか万が一整備されなくても、SM-6を日本向けに改修したりしない限りはCバンドレーダーの国産護衛艦でSバンドレーダー用のSM-6を運用することはできない
まあ遠距離から長射程ミサイルを撃っても回避されるのがオチだけどさ。
それにP-1は前線には出せないからね。
だけどレーザー兵器と各種ミサイルと電子戦を組み合わせ、P-1に艦隊防空を専門とさせるのならどうなんだろ……
例えるならば砲兵や高射砲だね。戦闘機は戦車になる。
空中と海上から敵戦闘機等を十字砲火出来れば、防空に厚みが出てAEWやAWACSはより一層安全なんだけどな。
数キロ先まで近づいたミサイルを無力化できるだけでも哨戒機や早期警戒機の生存性を大きく高めるので、これまでよりもより積極的な作戦参加が可能になるはず・・・
そうだ! P-1用の近接防衛用レーザーが実用化したら早期警戒機型P-1に対空ミサイルを満載して空中防空巡洋艦にするのだ! 強力な全周レーダーでステルス機も即座に発見、敵のミサイルをレーザーで叩き落としてAAM-4を必中距離で打ち込むのだ! SM-3を装備すれば弾道ミサイル迎撃も出来るはず!(レーザー万能主義者並の発想
>国産AEW
ベース機に想定されているP-1は、微妙にP-8(ボーイング737)より大きいんだよね…(胴体長はほぼ同じだけど、胴体の断面積が1.5倍弱くらいある)。
中身はひとまず置くとして、P-1AEWはおそらく737AEWと同等かそれ以上の性能とすると、現行最新のE-767に対抗するにはチト厳しいか。
P-1AEWが導入されるとしたら、現行のE-2Cの後継としての可能性が高いが、この場合導入はE-2Cの半分の4機程度で、2個ある運用飛行隊を1個に整理すれば、運用側で元が取れるものと思えるが、どうだろう。
※13
そこはさらに捜索もレーザー(ライダー)で、終端誘導もレーザー、そしてミサイルの弾頭はもちろんレーザー水爆…(それはもうレーザーじゃない)
赤外線ミサイルシーカーへの指向性光波妨害装置は実用化されてるけどね
携帯ミサイル万能論さらば
海保「ダメです。」
単純な疑問なんですが、「中身はひとまず置く」ということは、原型機であるP-1とボーイング737とボーイング767の機体性能・飛行性能の比較ということですか? であれば原型機として777や787を採用するに越したことはありませんよ。
輸送機や旅客機ではないので「ガワより中身」だと思うんですが。
あと、E-2C×2機→P-1AEW×1機では、柔軟な運用が困難になる恐れがありますね。
E-2Cは現在13機いますが、導入当初は同時に三ヶ所を監視することを想定していた(つまり一ヶ所あたり4機)ともされてましたから
それを半数はおろか4機にまで減らしてしまえば精々一ヶ所の監視しかできなるでしょう
あとE-2の飛行隊が2つあるのは、本来の拠点であり北方を睨む三沢と、対中警戒の最前線である那覇空の合計2ヶ所で運用されているからなので、統合も難しいと思います…
それはE-767の後継まで待てって言われそうだけと、イージス艦だって8隻に増えたし!そもそもE-767が退役する頃にはAEW&Cがオワコン化してるかもしれんし!
ttp://www.mod.go.jp/atla/research/gaibuhyouka/pdf/MixedSensor_28.pdf
ミサイルを迎撃するから撃墜されない、複合センサでステルス機も弾道ミサイルも捕捉する、データリンクで陸地から大量の長距離SAMやSSMを召喚して敵を殲滅する、それどころか自分で長距離AAMを撃つ
まさに空中巡洋艦ならぬ空中戦艦じゃあああ!!!
だからP-1より、発電余裕も発展余裕も乗員数も多い大型機の方がよさげ
今のところアメリカからE-3系列の後継についてアナウンスが出てきていないので、777ベースになるか787ベースになるのかは何とも…。
ただE-3の更新に比べて、日本のE-2C更新はより近い将来の話なので、このように例を挙げてみた次第です。
あとP-1AEWなら、E-2Cに比べて1ソーティ当たりの滞空時間や監視範囲が大幅に増すと考えられるので、より少ない機体数でも充分柔軟な運用が可能なのではないかと考えています。
※18
E-7671機はだいたいE-2C3機分に相当するレーダー覆域を有していて、今現在はE-2C3機を周辺に配置して、E-767でその3機を監視しつつ3機の監視範囲の隙間を埋めるという運用になっています。
そして上述の通り、E-2C2機をP-1AEW1機で置き換えられるなら、今度導入されるE-2Dと合わせることで、現在以上の監視体制を構築できるのではないかと考えています。
…てなこと自分で書いていて、P-1AEW4機のみでは余裕に乏しい気がしてきたので、非常時には2機を常に滞空させられるよう、6機程度の導入がやはりちょうどいいだろうか。
※19
実は輸送機ベースのAEW機が世界でも少数派なのは、機器に対する電力供給量に問題があるからだったりする。
例えばAEW機の東の横綱であるメインステイなんかは、機体の電装系をベリエフ設計局がごっそりと別物になるまで改めてたりして(完成機がイリューシン設計局じゃなくて、ベリエフ設計局の製品として扱われるレベル)。
搭載機器への電力供給を考えるなら、どちらかというと旅客機ベースの方が望ましく、またP-1もこの辺は余裕を持った作りになってるんだそうで。
旅客機内の電力供給については、『宇宙よりも遠い場所』に出てきたシンガポール航空機(っぽい機体)には、エコノミークラスにすらモニターとゲーム機とAVプレイヤーが標準装備されていたのを思い出すと納得できるのではないかと…。
なるほど
セミアクティブホーミングや光波画像ホーミングミサイルは探知できませんね
終末誘導アクティブホーミングミサイル複数に対する迎撃手法は効果的なものありますかね?
後方から迎撃ミサイル射つって、到達時間と射程はどうなってるんですかね
IRST(AIRBOSS発展型)で接近するミサイルを探知し、レーダの電波を浴びせかけてミサイルを壊すってコンセプトですよ
ttp://www.mod.go.jp/j/approach/others/service/kanshi_koritsu/h27/r-sheet/0304.xls (エクセル注意)
接近するミサイルを捕捉するセンサーとしては、「将来ミサイル警戒技術」として研究中の全周・赤外線式のミサイル警戒装置も用いられることでしょう
ちなみに電波・光波複合センサシステム(遠距離探知センサシステム)では、大出力レーダ、大型IRSTに加え、パッシブレーダも使用されます
これは自機以外の電波放射源からの電波およびその反射波によりステルス機などを探知するものです
後方からミサイル撃つってのは、要は脆弱かつ狭い見通し線内しか探知できない地上式レーダに代わり、早期警戒機側がSSMやSAMの目になるということですよ、NIFC-CAみたいな感じで
なるほどね。イロイロと教えていただいてありがとうございます。
E-2C13機+E-2Dの代わりにP-1AEWが6機でも少ないと思います。欲を言えば、損耗も考慮してチト過大ながらE-767が9機あれば完璧かと。その場合はP-1AEWは諦めて、E-2C、Dも不要になります。ただし、柔軟性や冗長性は低下しますが。
また教えてください。
うーん?
コブラホールのような弾道ミサイル探知機能かと理解してましたが、空対空ミサイルのような小型な目標まで検出可能なんですかね?
音速の数倍の小型ミサイルを迎撃に十分な時間を持って探知可能なのかな?
赤外線では探知距離落ちるのはもちろんの事、マイクロ波、しかもパッシブで遠距離からミサイルのような小型目標へ攻撃可能なほどの位置測定精度もある?
SAMのブースト段階でなくとも光波探知可能?
そういう未来的な指標への研究ならわかりますが、勢い実用化できるような対象ではないかと
迎撃手段としてのマイクロ波ビームも含めて
水平線を超えた目標へのミサイル中間誘導能力は有効だし実用もされてますけど
地上や艦上発射対空ミサイルの射程が、全面的に支援受けられるほど長くないのではないですかね?
数百km進出してたらカバーされませんよ
ミサイル警報装置といっても、母機や終末誘導のアクティブホーミングからの照射探知で、どっちにしろミサイル位置には関係ないか時間的余裕なさげです
セミアクティブや光波ホーミングではミサイル位置探知できないんじゃ?としたのはミサイルからマイクロ波でないからです
SAMを赤外線探知ならブースト段階感知で警報
ミサイルはブースト段階と加速した後では、射程を伸ばす為に固定燃料燃焼方式が少なく切り替わります。赤外線や紫外線発散が減少します
加速した後の飛翔時の警報探知距離はどのくらいのものなのかな?
ミサイル探知可能としても、空対空ミサイルは小さすぎて、全部事前に探知撃墜して無双できるほどの万能能力にはちょっと疑問符です
1つのセンサで高温目標に適した中赤外線と常温、低音目標に適した遠赤外線を同時に検知して画素や時間のズレなく1024×1024画素の画像を得ることができる。
この画像を処理する事で数ピクセルの高温目標や太陽光反射や市街地を背景とした目標が可能!
参考
「2波長赤外線センサを用いた 2波長融合処理について 」
http://www.mod.go.jp/atla/research/ats2015/image/pdf/o1-12.pdf
赤外線技術 ~より確実に、より精細に、暗いところでも見えるように~
http://www.mod.go.jp/atla/research/dts2012/R5-3p.pdf
さらに現在行われている「電波・光波複合センサシステムの研究」では光波センサとレーダーの情報を協調動作・データ融合を行う事でレーダーの探知・追尾距離が2割増できると実証済み!
これは合わせて使えば光学センサの価値が大きく変わるような気がして来るぜ〜
参考
外部評価報告書 「電波・光波複合センサシステムの研究」
http://www.mod.go.jp/atla/research/gaibuhyouka/pdf/MixedSensor_28.pdf
まぁ効果的な最新兵器が開発されるとそれに対抗する色々な技術・戦術が開発されるので、新兵器万能論なんて眉にべったり唾を付けて行うべき話ではあるんだけどね。
それでもこちらの作戦の幅を広げて対応を相手に強要するのには大きな価値があるし、過去には機関銃やレーダーのように戦場の有り様を大きく変えた兵器もあるわけだから、狐に騙されていると薄々感じながらも夢物語を語るのも時には必要なのではなかろうか?(注:個人の感想です
より大型の対艦ミサイルでさえマッハ3クラスともなると、レーザーを持ってしても対応が困難と開発メーカーからの話もありますね
捕捉照射に十分な時間が得られない
さてマイクロ波では如何に?
空対空ミサイルは一旦ブーストで上昇して高空からの滑空を利用して射程を伸ばしますが、ロケットモーターの燃焼が終わっていれば光波探知は無理ぽ
後はレーダー探知ですが、小さなサイズでどのくらいで探知可能か
ロケットモーターの燃焼時間や探知距離など軍事機密に阻まれよくわかりませんが、サイドワインダーなど短射程ミサイルでは3秒程度となどと伝え聞く程度ですね
二段階燃焼でこれより追尾時間は上がっているようですが
アムラームのような長射程ミサイルにしても、燃焼工程、ミサイルの飛翔行程の効率化で延伸が図られていますが、全行程でロケットモーターをふかし続けるのは燃料容積面で不可能だと思われ
弱いレーザー光で赤外線シーカーを欺瞞する防衛装備も出ていますが、、、これはブースト段階でより探知しやすい地上からの短射程ミサイル対策のようですし
すでに※24の行政事業レビューには
>IRSTとの協調により、能力の範囲内で、高い電界をミサイル等に照射することができ、新たな自己防御の方法を検討することができる。
とあります
で、実際HPMの実現性はと言うと、既に戦闘機レーダーほどの大きさで800m先の電子機器を破壊可能、もちろんレーダーとしても機能する試作品があり
艦艇はもちろん、早期警戒機や哨戒機、果ては地上車両にまで搭載する構想があるようですよ
ttps://twitter.com/VVspyVV/status/804972223698079744?s=19
たとえば島嶼部における防勢作戦であれば、わざわざ島から何百kmも進出しておく必要はないでしょう
射程300km近いとされる17式SSMファミリーはもちろん、将来的には新対艦誘導弾なども配備されるでしょうし
SAMに関してもペトリオットへのSM-6の統合化、もしくは国産長射程SAMの配備が進むことでしょう
以下「将来ミサイル警戒技術の研究」事業評価から引用です
ttp://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/seisaku/results/23/jizen/honbun/06.pdf
>これらミサイル等の攻撃に対処する能力を向上させるためには、より遠方で警戒する能力を付加するとともに、航空機の全球方向の警戒を行うことが必要であり、このような赤外線型ミサイル警報装置の搭載が必須となるすう勢にある。
>ウ 既存の装備等によらない理由航空機搭載型赤外線ミサイル警戒装置は、国内に既存装備品はない。また、紫外線型ミサイル警戒装置は、紫外線の特性から現行の技術では探知距離の延伸に限界があり、要求を満足できない。
>代替手段として、次期輸送機(C-2)に搭載を予定しているAN/AAR-60があるが、紫外線ミサイル警報装置のため、希煙化が進んだミサイルへの対処能力に劣る。また、F-35に搭載している赤外線ミサイル警報装置があるが、その技術が開示される見込みは低い。
画像
ttp://www.mod.go.jp/atla/img/soubi_koukuu/img_soubi_koukuu03.jpg
ま、何が夢物語で何がそうでないかなんて結果論ですし、興味持つか否かなんて個人の勝手ですけどね
夢が無いのは残念だけど、厳しい現実も無視できないのでそういう態度も大事ですね。
って事で自分なりの現実認識に基づき気になる所を
<より大型の対艦ミサイルでさえマッハ3クラスともなると、レーザーを持ってしても対応が困難と開発メーカーからの話もありますね
水上の艦艇の場合は航空機と違って
・見通し線が狭く低高度で来られると対応時間が極端に少なくなる。
・相対速度が遅く艦体も大きいためミサイルを確実に破壊しないと被害を受ける。
という差異があります。
航空機であれば見通し線に縛られる事なく遠距離から発見・対応可能な上、機体は小さく相対速度も色々なのでレーザーにより敵ミサイルに近距離・瞬間的な誤動作を発生させるだけでも生存確率向上が期待できます。
また超音速ミサイルも常に超音速ではなく
<空対空ミサイルは一旦ブーストで上昇して高空からの滑空を利用して射程を伸ばします
ので燃焼終了時が最大速度、それからどんどん速度や高度が下がって行きます。
なので敵のミサイルがこちらのレーザーの射程内に入ってから近接信管が作動するまでの時間≒こちらのレーザーの照射時間は、状況によって大きく変わります。
つまりレーザーの照射時間は敵味方の距離や運動に大きく左右され、高速空対空ミサイルがレーザーで対応出来るかどうかは時と場合によるはずです。
<ロケットモーターの燃焼が終わっていれば光波探知は無理
「電波・光波複合センサシステムの研究」 では「レーダが追尾、IRSTが捜索」という協調動作の機能が紹介されています。
こういった協調動作をうまく動かせばブースト段階のミサイルを光学探知、燃焼終了前にレーダーで重点追尾 といった動作は可能のはずです。
敵の対策としてミサイルのIR対策やステルス化があるでしょうが、長距離の大型ミサイルの場合はIR対策やステルス化は難しく、敵のミサイルを探知できるか出来ないかはその時々だと思います。
マイクロ波に必要とされる出力とその効果については「電子装備の最新技術」という本に詳しい事が図と共に示されています。
これを参考にすると電磁波攻撃がアンテナ等から入るフロントドアの場合は2kV/mを越えると損傷が発生し、ケーブルや基盤等から入るバックドアなら200〜300V/mで誤動作が発生し、15~25kV/mで損傷が発生するようです。
図を参考にすると1キロ先の目標を狙うなら
誤作動(バックドア)で1GW
故障(フロントドア)で100GW
故障(バックドア)で30TW
が必要な感じですね。
高出力で確実な効果を という考えがある一方で、米軍では電子機器の高度化・高速化により誤作動を発生させるだけでも兵器としては十分という考えもあるようです。
う〜ん、こうして仔細に並べてみるとレーザー兵器の有効性も運用する機体次第な感じかな〜
小型高機動ステルス機なら相手ミサイルに対してレーザーが最大効率になる位置どりを行えそうだが出力に不安がある。
大型鈍重非ステルス機ならミサイルに対する位置どりは厳しいが探知能力の強化やレーザーの高出力化は比較的安易。
空中巡洋艦を現実のものとしようと考えるなら、高出力レーダーで敵を先に発見して敵射程外から長射程ミサイルを放ち、万一相手にミサイルを撃たれても高性能センサで素早く見つけて高出力レーザーで遠距離から撃ち落とす という運用がどれほど安全確実に出来るか?
また短距離から敵ステルスミサイルによる奇襲という最悪の状況をどれほど回避できるか? とかそういうのが大事になるのかな?
具体的な数字ありがとうです
キロワット級レーザーの射程に比べるとマイクロ波の射程はやはり大分劣るようですね
射程延伸は高出力化やマイクロ波減退との戦いでもありますか
射程のみならず、破壊に至る照射時間もどれほど必要なのかも気になるところですが
現行キロワットレーザーでも目標破壊能力はあります
しかし高速目標に対する問題は、破壊に至る照射時間を得られないというのもありますし、さてマイクロ波では?といったところです
※34
例にも上げられているように残念ながら実際のミサイル警報装置は、推進炎の探知やレーダー波被照射探知になっていますね
※35
遠距離からブースト炎を探知できるか、あさっての方向(上昇する)へ向かう小型なミサイルを遠方から捕捉追尾可能かという問題がありますね
センサー類などの技術発達は大いに実際の戦闘において貢献するであろう事は疑う余地はありませんが、万能か?というとやはりそうでないなと感じられました
ともかくありがとうございました
DIRCMやEODASは二波長赤外線式でなおかつミサイルの「追跡(発射検知のみでない)」ができるから、放射炎からの紫外線・赤外線放射だけでなく空力加熱による赤外線放射を探知できると考えるのが妥当ですよ
nonaさま、管理人さまに報告したいことが…
「専守防衛 日本!」なるものが今回と前々回の内容をコピペしてyoutubeにアップされてます。内容は概要見る限り全く同じと言わざるを得ません。
無許可かどうかわかりませんが、報告まで。
複数の動画投稿者が投稿記事をそのままアップしているようです。
まとめ記事はあまり強くはいいませんが、軍事講座および読者投稿記事は厳しく対応したいと思います。
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