台湾空軍軍史館航教館
文・写真:nona
2016年、台湾・高雄市では2つの軍事博物館が一般公開されました。そのひとつが、この空軍軍史館航教館。
空軍軍史館航教館は高雄市の岡山空軍基地に隣接し、高雄市の観光サイトでは日本語で紹介されています。
しかし地元住民の知名度はまだ低い様子。私が乗り込んだタクシーは完成したばかりの航空教育展示館ではなく、元から存在している空軍軍史館(長期休館中)に停車したのです。
ジェイティビィパブリッシング (2016-10-07)
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こちらが航空教育展示館の建物。運転手さんが行先を間違えたために、駅から30分もかかりました。(直行すれば20分ほど)展示館の辺りにはバス停や流しのタクシーがないため、タクシーの運転手さんに迎えを依頼しておくと帰りが楽です。特に今回のような雨の日は。
「浜松エアーパーク」のような館内。
この複葉機はカーチスモデル68ホークⅢ。日中戦争では上海の戦闘に投入されました。
カーチスP-40N戰鬥機。この機体は中国初のエースパイロットである周志開のP-40Nを再現した模型です。周志開は日本軍機5機を撃墜しているものの1943年に戦死されています。
C-47空中列車式(スカイトレイン)運輸機。C-47は太平洋戦争中、インドからヒマラヤ山脈を越え中国へ軍需物資を空輸する駝峰空運(ハンプ越え)に使用されたことが紹介されています。
この美齢号は1947年から首長専用機として用いられた機体ですが、その後は救難捜索機、練習機などに転用され1994年に退役しました。
ビーチクラフトAT-11カンザン高級教練機。
屋外展示のA-26Cインベーダー攻撃機。台湾では黒蝙蝠(コウモリ)中隊を編制し、中国大陸に対する上空偵察任務に用いました。
AT-6德州佬式(テキサン)教練機。
T-28A木馬式(トロージャン)教練機。
F-84G雷霆式(サンダージェット)戰鬥機。台湾空軍では1953年から1960年まで使用され、在役中に6度の空中戦を経験、人民解放空軍のMiG-17を2機撃墜しています。
F-86F軍刀式(セイバー)戰鬥機。世界初の空対空ミサイルによる空中戦を仕掛け、大きな戦果を収めたことが知られています。1958年に金門馬祖周辺で勃発した台湾海峡空戦では、MiG-17を保有する人民解放空軍を相手に、31対1というキルレートをたたき出しました。
F-100A超級軍刀式(スーパーセイバー)戰鬥機。
RF-101A巫毒式(ブードゥー)偵察機。台湾空軍は本機の長い航続距離を活かし、中国本土偵察に用いています。
F104G星式(スターファイター)戰鬥機。
F104D戰鬥教練機。
F-5F中正戰鬥教練機。
HU-16Aアルバトロス。胴体後部の2つの白い筒はJATO。短距離陸又は離水に用いるロケットブースターです。
S-2A追跡者(トラッカー)巡邏機。1967年から94年まで使用された対潜哨戒機。機首上部のレーダーと翼に取り付けられたサーチライトが特徴的。
S-2T渦輪追蹤者(ターボトラッカー)巡邏機。エンジンがターボプロップに換装されたトラッカー哨戒機の発展版。1994年には台南沖12.5海里にあった中国のロメオ級潜水艦の補足に成功したそうです。
波音(ボーイング)720中美号。ボーイング707-120型をベースに胴体を約2.5m短く切り詰められています。1961年に完成し、91年の除籍まで政府専用機として用いられました。
A/T-CH-1中興教練機。AIDC(漢翔航空)がT-28教練機の後継として独自開発した機体です。1973年に初飛行していますが、すでに現役を退いたようです。
XA-3 (AT-3A) 雷鳴號攻擊機。AT-3高級教練機に本格的な攻撃能力を持たせた試作機です。量産には至らなかったものの、本機の開発で得た知見をもとに、20機のAT-3がAT-3Bへ改修されました。
ここからは中国から飛来した亡命機が並びます。
上の写真はIl-28/轟炸五型爆撃機。1965年に台湾へ亡命飛行した機体です。
MiG-15戰鬥機。1961年に中国から亡命した機体です。
MiG-17/殲撃五型戰鬥機。1983年に台湾へ亡命した機体。MiG-15とそっくりですが、より後退翼角が強く、再燃機(アフターバーナー)も付加されました。
MiG-19/殲撃六型戰鬥機。1987年に台湾へ亡命した機体です。キャプション曰く、無人機に改造された機体が、未だに台湾の脅威となっているとか。(本当かな)
MiG-21魚床式(フィッシュベッド)戰鬥機。
この機は中国で生産されたJ-7シリーズではなく、ハンガリー空軍のMiG-21-F-13とのこと。1990年に当局が基隆港で没収したそうです。一体どこへ運ばれる予定だったのでしょう。
兵装の展示室もありました。手前の黒い航空爆弾はM117・750ポンド爆弾。
灰色の爆弾はCM-105・500ポンド・プロパガンダ爆弾。敵地に宣伝ビラを撒くための専用兵器です。
Mk82・500ポンドスネークアイ爆弾。スネークアイとは、投弾後に金属傘が開傘し弾体を減速、弾着までの時間を遅延することで、母機に爆風破片が被らないようにする機構です。
銀色の爆弾はM116A2-750ポンドナパーム弾、右の黒い爆弾はGBU-10F/Bレーザー誘導爆弾。
AGM-12B空対地ミサイル。命中までの間、操作員がミサイルを遠隔操作し続ける必要があるため、たいへん扱いが難しい兵器でした。
AIM-9Bサイドワインダー空対空ミサイル。前述の1958年の台湾海峡空戦で実践投入され、ミサイルを持たない人民解放空軍機を相手に、一方的な勝利を収めています。
台湾国産の天剣1型赤外線誘導空対空ミサイルと、天剣2型アクティブレーダー誘導空対空ミサイル。
ボフォース40mm機関砲。
圧巻の航空機エンジン展示室。一部はカットモデルとなっています。
C-47運輸機に使用された、プラット・アンド・ホイットニーR-1830-92。キャプションの「馬力1200匹」という書き方が面白い。
C-123運輸機に使用された、プラット・アンド・ホイットニーR-2800-99W。馬力2000匹を誇る大出力エンジンで、F4U、F6F、P-47などの戦闘機に搭載されたことで有名です。
C-11運輸機に使用された、ライトR-3350-80B。B-29爆撃機のエンジンとしても知られます。
T-33教練機に使用された、アリソンJ33-A-35A。ダイソンの掃除機に似ています。このタイプは遠心式ターボジェットエンジンと呼ばれ、構造が単純な反面、性能向上の余地が少ないという欠点がありました。
F-86戰鬥機に使用された、ゼネラルエレクトリックJ47-GE-27。J33の遠心式ターボジェットから、より洗練された軸流式ターボジェットエンジンへ進化しました。開発にあたってドイツから獲得した技術が参考にされています。
F-100A戰鬥機に使用された、プラット・アンド・ホイットニーJ57-PW-21B。後燃器(アフターバーナー)が付加されました。
F-5E戰鬥機に使用された、ゼネラルエレクトリックJ-85-GE-21C。
F104G戰鬥機に使用された、ゼネラルエレクトリックJ-79-GE-11B。
ちなみにF-16戦闘機に本エンジンの改良型を搭載したF-16/79という機体も計画され、台湾に売り込まれています。ただし、フルスペックのF-16から最大出力が3割減少したモンキーモデルでした。
最後にお土産のコーナー。おすすめは飛行前斥除(REMOVE BEFORE FLIGHT)キーホルダー。値段は30元(約100円)。
次回は台湾海軍の左營軍区故事館を紹介いたします。
参考
Kaosyhungtravel 空軍航空教育展示館<http://khh.travel/Article.aspx?a=6928&l=3&stype=1058&sitem=6981>
航空教育展示館 【視覺超震撼!】國寶級飛機 讓你一次看個過癮<http://funny1997.pixnet.net/blog/post/65784387-%E3%80%90%E8%A6%96%E8%A6%BA%E8%B6%85%E9%9C%87%E6%92%BC!%E3%80%91%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%95%99%E8%82%B2%E5%B1%95%E7%A4%BA%E9%A4%A8-%E5%85%A8%E9%A4%A836%E6%9E%B6%E5%9C%8B>
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コメント
wikiで調べたら、大陸奥地へも偵察飛行しているんだね。今では考えられないことだ。sa-2ガイドラインで結構撃墜されている(ゲイリーパワーズもガイドラインでやられているのは有名)。当時は2万mまで撃墜できる滞空ミサイルはガイドラインしかなかったからね。勉強になりました。
nona様
60〜70年頃は大陸中共から台湾への亡命事件が結構あって、子供心にも記憶があります。
ww2から冷戦機までの米機と冷戦機の東側機並んで展示されてるなんてほんと珍しいですね。
U2は結構堕とされてるが何百何千撃ったんだろか
SR71だとゼロ
日本のT-2と同じ時期に台湾も国産練習機を作って攻撃機にも転用しようとしてたんだね、その後の両国ともF-16参考(?)の機体を作っているあたり色々と通ずるものがある。
mig17あたりまでニーンコピーエンジンで結構パワーアップしてるのかも知れない(調べてない
F86エンジンのは現設計はユンカースかあ
当時の技術力はイギリスかなり高いな
てか今もbaeやらRRやらかなり高いか
F-2とF-CK-1…?
台湾がT-2のような計画してたのは驚き
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