イベントレポート・第11回中国国际航空航天博览会(後編)
文・写真:nona
Mig-29、Su-27に続いてイギリス空軍レッドアローズの演目です。
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使用機体はホークT1.A練習機。機体の大きさは日本のT-4練習機とほぼ同じですが、エンジンは単発で主翼は低翼配置です。
チーム編成は9機で、さらに地上に予備機2機が控えていました。
機体背面には矢じりがペイントされています。
演目は日本のブルーインパルスに近い。これは「レインフォール」かな。
こちらは「バーティカルキューピッド」。
最後は中国の八一飛行表演隊(August 1st )のJ-10戦闘機の飛行展示。
演目はMiG-29のような密集状態での編隊飛行や旋回などが中心。でも煤を散らしながら飛ぶMiG-29よりは良い印象。J-10ではエンジンにSu-27シリーズのAL-31FNを使用しているそうです。
スモークを放出するJ-10。フレアの放出はありませんでした。
演技後に着陸したJ-10AY。J-10A戦闘機をベースとする八一飛行表演隊の専用機です。
こちらは複座型のJ-10SY。
なお今回の飛行展示から間もない11月12日、同隊中隊長で余旭飛行士が訓練中の事故で亡くなられています。中国でも珍しい女性の戦闘機パイロットでした。
八一飛行表演隊の着陸後はお昼休み。
地上展示の機体を観察。J-10の背後にある灰色の大型機はH-6爆撃機。原型は1950年代にソ連で開発されたTu-16爆撃機ですが、中国では2014年においても生産が確認されています。恐らく2016年現在でも生産は続いているはず。
最新型のH-6K型はエンジンがD-30KP-2(MiG-31戦闘機のエンジンからアフターバーナーを省略したもの)へ換装され、戦闘行動半径は1800kmから2200kmに、爆弾倉増槽を使用すれば3000kmまで伸長されたようです。
Y-20輸送機。本機のエンジンはH-6K爆撃機のD-30エンジンを国産化したWS-18。ただ輸送機に用いるには燃費で不利であるとか。ちなみに満載時の航続距離は4000km。
AG600飛行艇。SH-5型飛行艇の後継とされる新型の大型飛行艇で、中国航展が開催されている珠海市内の工場で製造されています。AG600はUS-2に似ていますが、機体は一回り大きく、さらに消防飛行艇としての機能も有しています。一方、US-2ほどのSTOL性能はない、とされています。
KJ-500早期警戒機。KJ-2000のような円盤型レーダーと電子機器用フェアリングをY-9輸送機に搭載したもの。
中国にはIL-76輸送機に円盤型レーダーを搭載したKJ-2000、Y-8輸送機に箱型レーダーを搭載したKJ-200、Y-8輸送機に円盤型レーダーを搭載したY-8AEW、Y-8AEWの輸出型とされるZKD-03(カラコルムイーグル)など、複数の早期警戒機を矢継ぎ早に開発しており、個人的に混乱しています。
なお KJ-500AEWの後方には地上用の対空レーダーが展示されています。なんでも対ステルス用のパッシブ・レーダー(写真左の横長の空中線)と、短波レーダー(写真左の縦長の大きな空中線)という話。
KJ-500早期警戒機の母体となったY-9輸送機。Y-8輸送機を近代化した機体ですが、そのY-8も元をたどるとソ連のAn-12輸送機でした。
Y-9輸送機の後ろにも対空火器が展示されていますが、詳細は不明です。
午後の飛行展示の機体。これはAG-300。中国製の軽飛行機です。
シーラスSR。アメリカの軽飛行機。
RX1E。中国で設計製造された軽飛行機。
型式不明のモーターグライダー。
ロビンソンR44ヘリコプター。
洪都FTC-2000山鷹(JL-9)練習攻撃機。戦闘機を改造によって2003年に初飛行した、武装も可能な高等練習機の試作型です。
主翼はMiG-21の三角翼からダブルデルタに、エアインテイクは機首から側面に、コクピットはグラス式に換装していますが、エンジンは従来と同じWP-7Bターボジェットエンジンの出力を制限した型です。
中国空軍は新規設計のJL-10練習機を採用し、旧態依然としたFTC-2000を選定しませんでした。あるいはFTC-2000はJL-10の開発失敗に備えての保険だったのかもしれません。
機体の後ろ半分はほとんどMiG-21。まるで接ぎ木されたみたいです。
このFTC-2000は離陸後は特になにもせず、そのまま会場を去っていきました。
小型機のフライトの後は、再びロシア・イギリス機の飛行展示。ただし内容は午前とほぼ同じ、さらに太陽の移動で滑走路の西側も逆行で撮影は難しくなります。
(チケットさえあれば)午後は海上で屋内展示を巡る方がいいかもしれません。
帰り際に偶然戦車を見かけました。写真はVT-4(MBT-3000)戦車。
砲塔背面のファンは室外機?
VN-12歩兵戦闘車。情報がなくて
この後はシャトルバスで市内へ撤収。ただ、不思議なことに料金の徴収も、切符の提示もありませんでした。なぜだろう。
次回は珠海の対岸、香港島の香港海防博物館について解説いたします。
参考資料
世界の航空機 1 最強のジェット戦闘機(編集デアゴスティーニ 監修 青木謙知 ISBN 978-4-06-256754-1 2004年8月25日)
戦闘機年鑑2015-2016(青木謙知 ISBN978-4-86320-975-6 2015年3月30日)
中国航空戦力のすべて(青木謙知 ISBN978-4-7973-5528-4 2015年3月25日)
中国国际航空航天博览パンフレット
イカロス出版 (2015-02-27)
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コメント
パキスタンへの輸出もインドが親露な分妨害くらって結果難儀
輸出名目としてもロシアは中国を信頼できるかな?
販売も厳しい、国威高揚にしては入場料お高めだしとりあえず航空ショーやってるだけって感じなのかね
ともかく自国製エンジン開発しないことにはロシアに警戒されて航空戦力拡張は無理だべ
贅沢言えば地上展示や売店等の様子も見たかったけど、これでも十分。
ご指摘ありがとうございます。
正しくはVT-4(MBT-3000)戦車でした。
訂正させてていただきます。
ありがとうございます
VT-4はここ最近の戦車でかなり好きな方なので掲載されててとても嬉しかったです
国産のWS-10エンジン次第だろうね
現状J-10やJ-16に国産エンジン搭載を増やして実績を積んでいて、輸出戦闘機のJF-17も次の生産分からはロシア製エンジンからWS-10に転換するらしいし、このまま何事もなければそう遠いことでもないだろう
あとは180 kN 級のWS-15が成功すればロシアとの関係もだいぶ変わる。成功すればだけど
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