先月のF-35:最新解説動画とシステムで学びなおすF-35、海兵隊での使い方と騒音レベル、またその売れ行きについて

文:誤字

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駆逐艦ズムウォルトの初航海をお見送りに来たF-35C、21世紀生まれには違和感バリバリの未来的シルエットの二つの兵器だが、22世紀の人間にはこれが当たり前になるだろう
(出典:在日海軍司令部公式ツイッターアカウント
https://twitter.com/CNFJ/status/788220166962286592

 最近にわかに評価が上がってきた最新ステルス戦闘機F-35、来年1月には海兵隊のF-35Bが始めて日本に配備されるということでニュースで取り上げられることも増えてきました。
 けれども画期的な超高性能戦闘機だと言うのに「ふとっちょメタボでダサい」「動きが鈍そうで強く見えない」「話を聞いても横文字ばかりで良く分からない」なんてことが多いのがこの最新鋭戦闘機の泣き所。
 そんなF-35の最新の動きをちょっとまとめてお送りする『先月のF-35』 先月の動きを知ればF-35のマッシブボディに隠された大きな頭脳と千里眼のようなセンサーが作り出す戦場の未来を少しだけ早く理解できるかもしれません。

注:なおこの記事は中学生レベルの英語力と半端な現代戦の知識しか無い著者が、グーグル翻訳さまの力を全面的に利用して海外の記事やそれを元にした日本語の記事を個人的感想をつけて要約して紹介しているものになります。
 内容には間違いや勘違いが多々含まれている可能性もあるので、元記事を確認したりわからないところはコメントするなどしてくれると助かります。

・F-35で見る戦闘機のIT革命

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F-35の各種システム、索敵や武器の使用のみならず、センサーフュージョンにより膨大な情報をパイロットにわかりやすく伝え、データリンクにより味方部隊との情報交換を円滑に行うことで作戦進行を助ける能力が非常に優れているのがF-35の特筆すべき点である(出典:F-35ライトニングプログラムhttp://secure.afa.org/media/scripts/ppt_pdf/F-35_Brief.pdf

 マイナビニュースで毎回深くて濃い軍事関連のお話を書いている井上孝司さんのコラム『軍事とIT』で大変示唆に富むF-35の特集が10月から始まりましたので紹介します。

『軍事とIT』
http://news.mynavi.jp/column/military_it/
第159回 特集F-35(1)精緻な組み立て工程
第160回 特集F-35(2)EO-DASとHMD
第161回 特集F-35(3)CNIとデータリンク
第162回 特集F-35(4)不思議の国のALIS
第163回 特集F-35(5)ソフトウェアの開発と飛行諸元の制限

 
『軍事とIT』という題名通りソフトウェアやシステムに関する話を中心に解説しています。
 上記の動画のとおりF-35にとってシステム周りこそが重要で、「これを理解せずしてF-35について語るな!」ってくらいなのに、残念ながらいまひとつ取り上げられる機会がイマイチ少なくせっかくの革新的な能力が知られていないのが泣き所。
 これからの戦闘機は従来戦闘機のように高出力エンジンや機動性の良い機体形状も重要ながら、中に詰まっているソフトウェアの能力こそが本領なのです。
 EO-DOSは戦闘機から死角というものを無くすだけにとどまらずAIM-9Xのようなオフボアサイト能力を持つミサイルと組み合わせることで空対空戦闘の様相を変え、CNIシステムは高度で持続的に進化するデータリンクを実現し、ALISシステムは整備やアップデートの円滑な進行を助け、「データ融合」「センサー融合」によって膨大な情報をパイロット及びデータリンク先の味方(戦闘機や上級司令部のみならず艦艇や陸上部隊のほか、大統領執務室からメディアセンターまで)とリアルタイムで適切簡単にやりとり出来る。
 このような高度なソフトウェアとシステムを有するF-35を従来戦闘機と並び評することなどまったく意味がないことなのです。

 
てかALISシステムへの非難とか費用の超過とか納品後の改修話とか一部兵器が使えないとか、F-35に対する厳しい非難の何割かはソフトウェア開発をハード(機体)開発と同列に考えているから生じているじゃないかと感じたり・・・
 ハード(機体)の変更は一大事だけど、ソフトウェア(システム)の変更は比較的安価で楽なのであんまり騒ぐモンでもないのじゃないかな? とは昔ロボコンとかやってたので実感として思います(なお変更は楽でも開発自体はソフトもかなり大変なのを忘れてはならない)

 
この連載ではこれ以外にも多くの情報通信関連の記事が多く載っているいるので、最新の軍事技術に興味を持つ軍オタ初心者から「軍事におけるイット革命って何じゃ? NCWとかC4Iとか、最近の若いもんは英数字ばかり使ってついていけんわい」なんて嘆いている軍オタおじさんにオススメの連載です。


・現場でのF-35の使い方-海兵隊戦闘研究所での部隊運用


https://www.youtube.com/watch?v=Kg-dQi3kItA
海兵隊戦闘研究所(MCWL: Marine Corps Warfighting Lab)の次世代兵器実権動画、この動画で各種兵器の試験を行っているのが第5海兵連隊 第3大隊の隊員たちである。ドローンや無人車両と共に行動し、タブレット型の情報端末を操作する姿は正に”未来の軍隊” こういった次世代兵器の運用に精通した部隊が近くF-35と共に日本に展開する予定である

 そんなF-35を具体的にどんな風に前線で使うか、来年沖縄へ展開予定の部隊が行っている訓練が記事になっています。

Marine Grunts Will Train With F-35 Ahead of First Deployment
http://www.military.com/daily-news/2016/10/10/marine-grunts-will-train-with-f35-ahead-of-first-deployment.html

 海兵隊はF-35Bにより戦い方が変わると期待している。
 第5海兵連隊 第3大隊は来年太平洋に展開する第121海兵戦闘攻撃飛行隊(VMFA-121)と共に様々な訓練を行っている。
 これらの訓練は航空機と地上部隊の連携を改善するだろう
 海兵隊戦闘開発コマンドのロバート・ウォルシュ中将は最近のインタビューでMilitary.comに
「F-35を収得し、一緒に作戦を行うことによりこの戦闘機を使う新しいアイディアを搾り出している」
「強襲揚陸艦ワスプと共に配備され、技術面で画期的ないくつかの機能が持ち込まれるだろう」
 第5海兵連隊 第3大隊は今年初めに新実験部隊として指定されました、この異例の動きは将来の紛争における軍事活動の進化の展望をラピッドプロトタイピング(高速試作?)するものです。
 新しい装備の助けを借りて異種兵種や組織との間で行われた各種テストは来年以降も継続されるだろう。しかしこの部隊が最初に海外展開するF-35部隊に同行するという事実は何かを示唆しています。
 「われわれはこれを使用し、活用するつもりです」とウォルシュ中将は言いました。
 その一つの成果がリンク16に対する注目。JSFから地上部隊のスマートデバイスにリアルタイムに状況情報を提供できる
それは空軍には興味が無いかもしれないが、海兵隊の地上部隊には可能性を秘めている。
 「第5海兵連隊 第3大隊はこの偉大な探知能力とリンクすることが出来る。」「リンク16はF-35からリアルタイムで情報を収得できる方法です」
 ウォルシュ中将はまた前線航空管制大隊、統合末端攻撃統制官、そして航空部隊を調整する 海兵隊やVMFA-121と共に活動する他の部隊にも送りたいと希望しています
 F-35によって陸上と空中の間での会話に従事することが出来る。
 「F-35が何を出来るかをスマートに収得し、共に行動することが出来ます」「個々の部隊がより細かい仕事を開始できます」
 VMFA-121は1月に第31海兵遠征部隊の一因として日本の沖縄県に向けて出発し、海外に配備される始めてのF-35部隊になります。
 また同じ年に海兵隊のエセックス両用即応グループに配備されたF-35飛行隊が中東のIS対策の作戦に参加する予定です。

個人的感想
 
F-35については散々「戦闘機としての能力が低い!」って話が出ていますが、今回の記事に見られるようにF-35Bの高度なセンサー群をリンク16で地上の海兵隊と繋げれば従来の戦闘機とは全然違う使い方が出来るわけです。
 今後の海兵隊は最前線でも上空からの精密なリアルタイム中継映像が届けられるので、近接航空支援の精度が段違いに上がる上に地上の小型ドローンや無人車両と合わせて戦い方が大きく変わるはず?
 前回紹介したNIFC-CAのようにデータリンクを通じて従来の戦場の常識を覆す運用が可能となるので、正に戦闘機という枠組みには収まらない、戦場の姿形を大きく変える機体となるでしょう。


・岩国市長による米海兵隊F-35B視察


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米アリゾナ州の米軍ユマ基地で第121海兵戦闘攻撃飛行隊(VMFA-121)のF-35Bを視察する岩国市の福田良彦市長、海兵隊のオスプレイが駐機しているのが見える。一時期在日米軍のオスプレイ配備が政治的な問題となったので、このような視察も重要である話(出典:米海兵隊公式サイトhttp://www.mcasiwakuni.marines.mil/News/Photos/igphoto/2001657787/

 話は大きく変わりまして、上記の記事のように岩国へF-35Bが配備されるのが来年1月と迫っているので日本でも色々な動きが出てきています。
 まず10月13日に米政府から日本政府へF-35の配備を公式に通告

https://twitter.com/USFJ_J/status/790424082491650048
 また岩国市長が訪米して現地でF-35の戦闘機のデモ飛行を視察しました。


Fukuda visits MCAS Yuma
https://www.dvidshub.net/news/212790/fukuda-visits-mcas-yuma
 日本国岩国市の福田良彦市長は米アリゾナ州の米海兵隊ユマ基地で岩国基地に配備される予定の第121海兵戦闘攻撃飛行隊(VMFA-121)のF-35Bを視察した。
 福田市長は「私の目標はF-35Bについての情報を収集することです。日本政府からすでに配備計画についてブリーフィングを受けましたが、しかし私は与えられた書類よりも現場で現実に音を聞いて直接の体験として確認したかった。」と述べました。
 第121海兵戦闘攻撃飛行隊の司令官はバルドー中佐は「(編注:騒音や)行われる訓練はすでに岩国に配備されているF-18ものと非常に似ています。私は以前岩国に配属していたので、(F-35Bの)初の部隊としてまた戻ってこれることを大変名誉にまた楽しみに思っています。」
 福田市長は本日の訪問がF-35Bに対する理解をより深めるものだと感謝を述べた。

日本語の記事はこちら
配備予定の最新鋭ステルスF35、岩国市長が視察「現行機と騒音に差なし」
http://www.sankei.com/west/news/161031/wst1610310046-n1.html

個人的感想
 一時は開発継続さえ危ぶまれた海兵隊仕様のF-35Bですが、現場からの評価は上々で安全性にも問題は無いようですね。
 難航続きのF-35開発ですがよくある開発中の事故による死亡者はおらず、部隊での運行が円滑・安全に進んで、近隣住民への騒音被害も従来機と変わらないと言うのは政府が調達し広く長く使われる装備品としては良い傾向です。
 兵器は色々な事が言われますが、危険な武器を内蔵しているので平時の安全性や整備性なども大事なのではないでしょうか?
 なおF-35AはF-16と同じくらいの騒音らしいです。

F-35 Not Much Noisier Than F-16, Say Dutch
http://www.defensenews.com/story/defense/air-space/2016/06/01/f-35-f-16-dutch-netherlands/85238616/



・燃料トラブル続報

 
また前回問題となっていた燃料管関係のトラブルも進捗が

Grounded F-35As Expected to Fly Again Soon
http://www.dodbuzz.com/2016/10/20/grounded-f-35as-expected-fly-again/
10月7日に修正を開始し「作業が完了するまでに約3週間かかります。」と述べました。
「非準拠ポリアルファオレフィン(PAO)の冷媒管の修正は15機のオペレーション状態のF-35Aで行われている」
「15機は年末までに飛ぶことが期待されている」
「これは、技術や設計問題ではありませんでした。それはサプライチェーン製造品質上の問題だった」「破片は非対応PAO管から来ました」
「これは規格に適合に失敗した下請業者です。」
欠陥が「非常に含まれています。」

Repaired F-35s Return To Flight
https://www.f35.com/news/detail/repaired-f-35s-return-to-flight
修復されたF-35は飛行を再開しました。

 というわけで、前回問題となったF-35の冷却管のトラブルはほとんど解決の目処がたったみたいですね。
 規格から外れた冷却管を作る業者が何故採用されたのか? 検査工程で何故不良品に気付かなかったのか? 損失に対する保障や賠償はどうなるか? などなど気になる話はまだ残されていますが、とりあえずF-35の計画全体に対する影響はわずかでしょう。
(トラブルの記事はCNNまで取り上げて大きな話題になるのに、このようにトラブルが解決されてもイマイチ扱いが小さいのはどうなんよ?)

 
あとは同時期にF-35の後部から火災が発生するトラブルもあったんだけど、あれの続報が全然出ないのは気になるところ・・・


・F-35の低率初期生産(LRIP) 9の契約締結

 そんなF-35の売れ行きは好調で、十月時点でいくつかの契約がなされています。

DoD awards $743 million contract linked to ninth lot of F-35s
https://www.flightglobal.com/news/articles/dod-awards-743-million-contract-linked-to-ninth-lot-430453/
最終的な締結に向けて交渉中の第9、第10パッチにおいて、米国国防省はロッキード・マーティン社に第9パッチのF-35に関する7億4300万ドルの契約を与えた。
契約のうち最大3億8500万ドルは米軍のF-35の製造および材料のサービスを減らすための構成機器の再設計や開発に関する別の3億3300万ドルは米軍以外が使うF-35A一機とF-35B一機のためのものです。
別の2億540万ドルは対外有償軍事援助(FMS)のためのもので”国固有の案件”です。イスラエルと日本はロット9での生産契約を要求しました。
プログラム当初の予定ではロット9とロット10で140機の生産契約を予定していたが、交渉は数ヶ月間停滞しています。

Norway requests 12 F-35As in proposed block buy
https://www.flightglobal.com/news/articles/norway-requests-12-f-35as-in-proposed-block-buy-430271/
ノルウェーは2021年から2022年に12機のF-35を購入する計画を議会に提出しました。
提案が承認された場合、ノルウェー空軍は合計40機のF-35を購入することになる。
また「まとめ買い」を行うことを可能にします。
F-35ジョイントプログラムオフィス(JPO)は2018年から2020年までの数百機のF-35購入をパッケージ化することに取り組んでいます。
この工程でJPOは初期運用試験評価(IOT&E)を完了するまで「多年度調達」を禁止する米国政府の政策をどうにかする必要があります。F-35は少なくとも2018年までIOT&Eを完了するようにスケジュールされていません。
複数年の調達とは異なり、まとめ買いは、企業の受注に米国や国際的なパートナーを拘束していないが、それはロッキードのサプライチェーンに確実性の高い需要見通しを提供します。
JPOはその長期的なコミットメントの変更で、3年間で 2億ドルのコスト削減を行いたいと考えています。
ノルウェーはまとめ買いを要求した最初の顧客です。

おかげでロッキード・マーティンの売り上げは好調って話があります

F-35 and Sikorsky propel Lockheed earnings growth
https://www.flightglobal.com/news/articles/f-35-and-sikorsky-propel-lockheed-earnings-growth-430724/
ロッキード・マーティンの第三四半期の売り上げは、シコルスキーの買収とより高いF-35の納品により前年に比べて15%アップした
F-35プログラムの増産と持続活動はロッキードに純売上高$ 300万ドルを集めました。それは同時に、昨年に比べて$ 267万ドル、約7%、この四半期の同社の航空部門を後押しした。
シコルスキーの買収はロッキードのヘリミッションシステム部門に昨年に比べて12億ドル、55%の増加与えました。
F-35プログラムも立ち上げ持続側の期待成長よりも高いと、ロッキード最高財務責任者ブルース・タナー氏は述べています
しかしF-35プログラムもバラ色ではありません。基準以下の燃料管納品は航空機の修正を余儀なくされました。
一方、ロッキードと米国政府は、低率初期生産ロット9と10の長期交渉を継続している。ロッキードはLRIP 9のための政府資金を受け取ったが、資金は十分ではなく、交渉はすぐに終了することを期待している。
F-35プログラムは、ロッキードの国際的な成長を拡大してきましたが、同社は、ミサイル防衛やロータリー航空機を含め、ジェット戦闘機のプログラムの外に他の国際展開を狙っています。中東でのミサイル防衛ではまた成長でき、ポーランドからはヘリコプター、フランスやドイツからはC-130Jへの持続的な関心も示しているとも述べています
バーレーンへのF-16販売が許可された場合、F-16ラインの延長も考慮している。

 しかしながら11月始めには実際に締結されたロット9の契約内容について、ロッキード・マーティンは「失望した」とのことです。

Lockheed ‘Disappointed’ by Pentagon’s Latest F-35 Contract
http://www.dodbuzz.com/2016/11/02/lockheed-disappointed-by-pentagons-latest-f-35-contract/
ペンタゴンとロッキード・マーティン社は数ヶ月の交渉の末、61億ドルで57機のF-35に関する契約を締結した。
F-35プログラム執行役員クリス・ボグダン中将は「公正かつ合理的な取引」で「我々は、F-35手頃な価格を維持し、当社の顧客のために可能な限り最高の価値を提供するために、産業界と誠実に交渉していきます」と述べた
しかしロッキード・マーティン社は「我々は、F-35 LRIP 9契約における片務契約的動きをする政府による決定に失望している」と声明の中で述べている。
ペンタゴンはまだLRIP 9と一緒に署名することになっていたLRIP 10に署名していない
業界関係者は「政府は、F-35に正しい経費のための公正な価格を認識する必要があります。」
また一方的な決定は、このようなリスク評価と配信スケジュールなどF-35を製造する際に基本的な問題に対処していないと述べました
 LRIP 9では42機のF-35A, 13機のF-35Bそして2機のF-35Cが2017年の早くに引き渡される規定です。新価格はLRIP 8契約から3.7%の減少したとプログラム事務局は述べています。一機あたりの価格では110万ドル低下しました。

 どうも販売元の会社のほうはまだまだお金がかかるからと言っているのに、買い手である政府の方が会社側に不利な契約をごり押ししたって状況でしょうか?
 楽観的な見通しで契約を獲得して散々な計画遅延で予算超過をしたのは企業側の責任かもしれませんが、それで無茶を押し付けられるという点では軍事関係企業も楽ではないな~ と思います。
 特にこの場合他に売る相手がいないので立場は弱そう(誰です兵器産業が儲かるって言ってる人は)
 しかしおかげで機体価格は単純計算一機あたり一億7百万ドル程度、低率初期生産ながら着実に機体単価を下げてきています。