今月のF-35:F-35無双とデータリンクはアーセナルシップの香り、されど相変わらずのリアル炎上。および英国的現代空母運用術

文:誤字

img01
9月23日に行われた航空自衛隊向けF-35A初号機のロールアウト式典の一コマ、この式典の模様はLockheed Martin: Japan F-35 Rollout Celebration(https://www.youtube.com/watch?v=9a43GbHlxII)でいつでも見ることが出来る(出典:航空自衛隊HP http://www.mod.go.jp/asdf/news/release/2016/0930/

 米軍の最新鋭戦闘機F-35は最新技術を惜しみなく使った画期的な戦闘機であり、21世紀の空を征する戦闘機であることは間違いありません。
 しかしながらその野心的なコンセプトを理解せず、従来の戦闘機の延長線上で評価し、非難を行う場面も多々みうけられます。
 また様々な理由によって開発が難航したため、そのコンセプトに対する無理解と合わさって「欠陥戦闘機」のイメージを持っている人も少なくありません。

 
航空自衛隊向けのF-35A初号機の完成し、日本の空を飛ぶ日も近いこの最新鋭戦闘機、日々進化を続ける21世紀の戦闘機の先進性をより広く、より正確に理解し、間違った疑念を晴らし21世紀の戦闘機運用についての考えを更新していただくため、だいたい一ヶ月毎にF-35関連のニュースをまとめて更新してF-35の最新の姿をお届けしたいと思います。

注:なおこの記事は中学生レベルの英語力しか無い著者がグーグル翻訳さまの力を全面的に利用して海外の記事やそれを元にした日本語の記事を個人的感想をつけて要約して紹介しているものになります。
 内容には間違いや勘違いが多々含まれている可能性もあるので、元記事を確認したりわからないところはコメントするなどしてくれると助かります。

・ノーザンライトニング演習におけるF-35A無双
160829-F-VB174-003
ノーザンライトニング演習のために集まった各種航空機(F-16、E-3、F-35A、F/A-18、EA-18G) (出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Stormy Archer http://www.aetc.af.mil/News/Art/tabid/5119/igphoto/2001622572/Default.aspx)

 まずは8月末に終了したノーザンライトニング演習におけるF-35Aの活躍。

F-35A completes largest deployment to date
http://www.aetc.af.mil/News/ArticleDisplay/tabid/5115/Article/933621/f-35a-completes-largest-deployment-to-date.aspx
航空宇宙ビジネス短信・T2:: ★★★F-35が演習で110機を「撃墜」
https://aviation-space-business.blogspot.jp/2016/09/f-35110.html
この演習では航空優勢が確保できていない環境での制空攻撃、敵防空網制圧、敵防空体制破壊、GPS誘導爆弾による近接航空支援などの各種演習を行った。
この演習に参加した第33飛行団の14機のF-35Aは、全138ソーティーで敵戦闘機110機を撃墜し、GBU-12を24発を投下した。
また整備部隊やE/A-18グラウラー電子戦機などとの連携も確認し、双方から高い評価を得た。


個人的感想

 F-35は空対空戦闘では弱いのではないか? 的な懸念を吹き飛ばす凄まじい戦果。
航空優勢が確保できていない中で敵戦闘機110機撃墜とは恐ろしい子!
 個人的には整備部隊や電子戦機との連携を確認して高い評価を得たのも良い、F-35は机上のプランではなく、実地で使われる戦闘機なのだから他兵科の評価こそ重要だと思う。


 なおこの演習に関しては8月にも「引き継がれるイジメの伝統」って過激なタイトルの記事も出されています。

Vicious cycle: F-35A continues 5th-gen tradition of bullying legacy aircraft
http://www.aetc.af.mil/News/ArticleDisplay/tabid/5115/Article/929938/vicious-cycle-f-35a-continues-5th-gen-tradition-of-bullying-legacy-aircraft.aspx

 ステルス機と戦ったパイロットたち曰く、「後ろを手で縛られて戦うような状態」「一回の出撃で27キル取られた」「戦域に入って30秒で撃墜されたが誰も相手を見ていない」「巨大な空間で目隠しされているようだ」「肉眼で相手を探すしかない」
 これらのコメントは従来機でステルス機と戦うことが如何に難しいかを経験者の視点でよく表現されていると思います。


・F-35Bとデータリンクの組み合わせはアーセナル・シップの香り?

140503-N-kk935-001
ホワイトサンズ・ミサイル実験場のUSS デザート・シップ(LLS-1)、タロスミサイルの試験の為に作られた海軍の地上設備、イージスシステムやスタンダートミサイルなどの各種艦載対空兵器システムの試験のためにも使用されている(出典:U.S. Navy http://www.navy.mil/ah_online/ftrStory.asp?issue=3&id=81844

 次はF-35の高度なデータリンクを使えばこういうことも出来るんだぞって話

Navy Conducts First Live Fire NIFC-CA Test with F-35
http://www.navsea.navy.mil/Media/News/Article/942188/navy-conducts-first-live-fire-nifc-ca-test-with-f-35/
The F-35 just proved it can take Russian or Chinese airspace without firing a shot
http://finance.yahoo.com/news/f-35-just-proved-russian-192811263.html
海兵隊のF-35Bと海軍が協力して水平線の先にある標的を探知、これをホワイトサンズにある海軍の地上施設「デザート・シップ(LLS-1)」へデータ送信、SM-6で迎撃した。
今回のテストは海上(今回は地上の試験設備だが)のイージス艦と空中のF-35の連携を確認したもので、イージス艦に搭載されている超射程SM-6ミサイルとF-35の優れた探知能力とステルス性の長所をあわせ、イージス艦が持つ探知範囲の欠点とF-35の兵器搭載能力の欠点を補うものとなる。

個人的感想

 USS デザート・シップ(LLS-1) って、メリケンの海軍さんは立派な試験設備を持ってるんだな~
ってのは置いといて、今回の試験は空中の戦闘機と海上の艦艇が連携して敵を撃破するという次世代の空海共同、データリンクの活用法のお手本のようなもの。
 もともとNIFC-CA(海軍統合火器管制-対空)というE-2Dとイージス艦の連携として進められていたものだけど、ステルス機というより攻撃的な機体との連携が可能になれば作戦の幅が大きく広がることになりそうだ。
 特に今回は兵器搭載能力に難があるSTOVLタイプのF-35Bが実験を成功させた ということで、これまでハリアーなんて微妙な機体で上陸作戦や敵地殴りこみなど危険な任務に駆り出されていた海兵隊の防空能力の飛躍的向上と、ステルス機に付き物の「ステルス性を優先するあまり兵器搭載能力を犠牲にしている」という非難を過去のものに出来る可能性が高い。
 今回はSM-6(射程約370キロ)で対空攻撃だったが、これに開発中のレールガン(射程370km)とかが加わるとさらに恐ろしいことに・・・(ガクブル

 このニュースについていくつか「アーセナル・シップの復活か?」というコメントが見られたが、流石は米帝、さらに一歩先を行ってました。
 ペンタゴン曰く、「アーセナルプレーンにB-52とかC-130とか良いよね」

Pentagon "Arsenal Plane" Could be B-52, C-130
http://www.scout.com/military/warrior/story/1650624-pentagon-arsenal-plane-could-be-b-52-c-130

 ステルス機の兵器搭載能力と言う欠点を解決するために爆弾や対空ミサイルを満載したアーセナル・プレーン(兵器庫飛行機)を検討していて、このまま行けば最新のJDAMに加えて中距離空対空ミサイルAMRAAM、空中発射デコイADM-160 MALD、長距離空対地ミサイルAGM-158 JASSM-ERなどなどの最新兵器を満載したB-52がF-35とご一緒する予定・・・
 どうも米軍ではすでにセンサー(F-35)と弾薬庫(イージス艦やB-52)の分離が規定路線っぽい?


・またまた炎上、F-35のエンジンと燃料周りのトラブル

 さてこんな風に絶好調なF-35ですが、残念ながら色々なトラブルも避けられない。
 まず15機のF-35Aで翼内冷却管ラインに”非適合材料”が使われたために破損してしまった。

15 F-35 Models Grounded Due to Wiring Issue
http://www.defensenews.com/articles/15-f-35-models-grounded-due-to-wiring-issue
ノルウェー向けのF-35Aの2機を含む15機のF-35Aの定期保守点検時に翼内燃料タンク内の冷却管の絶縁体が剥離、当局は原因については飛行機の性能に関わる技術的な問題ではなく製造時の欠陥であることを強調した。

 日本語、時事通信の記事はこちら、ただしこちらでは原因についての言及がない。

自衛隊導入予定のF35で不具合=燃料タンクの冷却管に剥離-米
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016091700128&g=soc

 さらにマウンテンホーム空軍基地でF-35Aが出火、負傷者は無し

F-35A Catches Fire at Mountain Home Air Force Base
http://www.defensenews.com/articles/f-35a-damaged-in-fire-at-air-force-base
パイロットがエンジンを始動した後、機体後部から出火した。
原因は不明ながらエンジン開発元のプラット・アンド・ホイットニー社は調査への協力を約束。
先日の燃料タンク内の冷却管破損(上記の記事のこと)との関連は不明。

 こんなのだからCNNに「先月IOC獲得したのに何やってんの? 君たち今まで4000億ドルも使ってるよね?」って記事を書かれちゃいましたorz

US Air Force grounds F-35 fighter jets
http://edition.cnn.com/2016/09/16/politics/us-air-force-grounds-f-35/index.html
F-35は一ヶ月前「戦闘準備が出来た」と宣言されたが、今回このこれまででもっとも高価な兵器システムに影響を与える決定がなされた。
障害のある機体は全部で57機で、そのうち15機が配備されており、残りは生産ライン上にある。
ロッキード・マーチンはこれまで108機のF-35Asを提供し、空軍はこのジェット機を1763機を購入する予定です。
「F-35は完成に近づいているが、未だにまだ開発中で課題が予想される」と空軍は言い、冷却ラインの不具合はすべてのF-35Aで発見されず、一つの下請け業者に限定されていると述べています。
ロッキードマーチンの担当者は「安全を最優先しつつ可能な限り早くこの問題を解決する」と語りました。

個人的感想

 製造ライン上の42機にも冷却管のトラブルが見つかったようですが、いちよう空軍の偉い人は「配管の問題はF-35プログラムの将来に心配は無い、12月までに解決する」「出火の問題は現在調査チームが調べており、今後必要な修正が行われるだろう」とおっしゃっています。


Top Air Force General: Recent F-35 Troubles Not Long-Term Problem
http://www.defensenews.com/articles/top-air-force-general-recent-f-35-troubles-not-longterm-problem

 まぁトラブル多くて先行き不安になるのは当然だよね~ けどなんだかんだ言われながら未だに墜落事故を起こしていないのは流石だと思う。
 調べた限り1975年には採用間もないF-15とYF-16Aとが事故で失われているので、問題は多いとは言え安全性に十分な配慮がなされているといえなくもないかもしれない?
 最近の航空機開発ではボーイング787も当初の予定では初飛行は2007年9月末・引渡しは2008年5月であったが、実際は様々なトラブルにより初飛行はの2009年12月・引渡しは2011年9月となり、さらに引渡し後もバッテリー問題による全機運航停止などいくつかの大きなトラブルに見舞われながらも死亡者も出さずに順調に運行を続けているので、開発中や採用初期のトラブルは現在の航空機開発に付き物で、それがただちに機体の将来の評価を左右するものでは無いと感じる。

 
またトラブルも設計上の問題かプログラム上の問題か製造上の問題か未知の稀な不具合かを精査する必要があり、今回の配管トラブルのような製造上の問題でF-35の将来に心配が無いというのはわかる話である。
 トラブルの問題点を精査せずに欠陥品とあげつらうのは、砂糖と塩を間違えて入れて作ったケーキを食べて「ケーキとはこんなしょっぱいものなんだな! ケーキなんて未来永劫地上から消えてしまえばいいのに!」とか言うようなものでは無いだろうか?
 個人的にはF-35は同一フレームでの3タイプ同時開発という設計上の無茶と、これまでに無いセンサーとデータリンクの高度統合運用やALGSという野心的な整備システムなどのプログラム上の難題がこれまでトラブルの原因となってきたが、これがだいたい解決されて製造上の問題に焦点が移ってきたのでこれはこれで着実な進歩を表しているような気がしないでもない(自信は無いが)


・王立海軍の空母事情
45158230
進水直後の英最新空母クイーン・エリザベス、完成すれば英国海軍史上最大の軍艦となるが、艦載機となるF-35の計画遅れと財政難によりその運命は翻弄され続けている(出典:英国国防省
http://www.defenceimagery.mod.uk/fotoweb/Grid.fwx?archiveId=5042&search=45158230.jpg

 そして米国以外のF-35事情、迷走を続ける英国新型空母クイーン・エリザベスですが、米海兵隊のF-35Bとオスプレイをしばらく搭載したいって話まで出ているようです

British Naval Commander Wants US Marine Aviation on Aircraft Carrier
http://www.defensenews.com/articles/british-naval-commander-wants-us-marine-aviation-on-aircraft-carrier
米海兵隊のF-35BとV-22オスプレイが建造中の英国最新型空母クイーンエリザベスに配備されるかもしれない。
英新型空母クイーンエリザベスは、すべてが計画通りにいけば2018年には運用試験が開始される。
しかし予算不足でしばらく英国が空母での打撃任務を行うには十分な数のF-35Bを用意できないので、その間に米海兵隊のF-35Bが英空母に展開することが期待されている。
英空母の艦長は「2021年から英国の航空隊の配備が開始され2023年には海上運用が可能になるが、それまでの間空母をほったらかしにしたり英国の最も近い同盟国との相互運用について何もしないというのはありえるだろうか?」と述べた
この話は現在議論中で交戦規則、搭載する武器、展開する航空機数、いつごろから始まるのか、なにも決定はしていないが、このような相互運用を進めることはお互いに利益がある。
また米海兵隊のオスプレイを英空母で運用することは、英国の関係者にこの魅力的な航空機を宣伝する絶好の機会になるだろう。
オスプレイは英国が今すぐ買うには高すぎるが、特殊部隊や英国海兵隊による襲撃を迅速で目立たないもの出来る上に、その空中給油能力は本当に魅力的だ。

個人的感想

 最初読んだときは「自分の空母で他国の飛行機運用とか、ロイヤルネイビーもそこまで落ちたか・・・」とか思ったけど、よくよく読んでみると高額な飛行機と空母を必要数運用するのに悪くない話なんじゃないかと思えてきた。
 日本もいきなり空母フルセットで買うのは非現実的だが、なんとかしてヘリ搭載護衛艦に空きを作ってに海兵隊のF-35Bに展開してもらって色々と試してみるのはありかもしれない・・・

 
ってか上記のF-35Bとイージス艦の連携のような話が進むと「F-35Bのいない艦隊防空や上陸支援なんて考えられない!」って声が日米双方から上がってくる可能性が高いのでは?
 遠いエゲレス海軍のいつものおかしな話ではあるが、日本も注視する必要が出てくるかもしれない。


おまけ

 米海軍のF-35Cの艦上開発試験第3フェーズ(DT-III)の動画が公開されました。

F 35C DT III Highlight Video

https://www.youtube.com/watch?v=ZxWAErRfdZE&feature=youtu.be

 開発が一番遅れている艦載機バージョンであるF-35Cも順調に進んでいるようですね。
 ところでこの動画のF-35Cに装備されているサイドワインダー、0:35あたりで気持ち悪くグリグリ動いているように見えるんですが・・・
 最近の赤外線画像(IIR)誘導方式のシーカーってみんなこうなってるのね、初めて知ったぜ

参考:同様の誘導方式であるIRIS-Tのシーカー動画
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Iris.ogg

 って思っていたら、コメントで「サイドワインダーではなく恐らくペイブウェイIV」「動いているようにみえるのは単純に陽炎かと」「スマートボムのセンサカバーが風で揺れてるだけちゃうんか?」ってコメントが
 確かに調べてみたらこれはペイブウェイ系統の爆弾でした、先端部のウェザーベーンが風で揺れてるのか陽炎で揺れているのかはちょっとわかりません。

最後に

 F-35についてはこれ以外にもたくさん動きがあってとても紹介しきれないくらいなので、みんなも色々と調べて21世紀の戦闘機について理解を深めてみよう!