第43回 カナダ海軍フリゲート「ウィペニグ」の親善訪問

文:nona

 2016年1月31日から2月3日にかけ、カナダ海軍の「ウィニペグ」が東京・晴海埠頭に寄港していました。今回は出港の模様を撮影してまいりました。

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 海上幕僚監部の発表によると「ウィペニグ」の入港は1月31日の午前11時に東京の晴海埠頭。出港は2月3日の10時。[1]タイミングを合わせればレインボーブリッジの真下を通るタイミングで撮影できます。

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 晴海埠頭に停泊する「ウィペニグ」(左)と、ホストシップの護衛艦「ゆうぎり」(右)。

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 当初告知されていた艦艇は「きりしま」でしたが、変更があったようです。北朝鮮による弾道ミサイル実験[2]に関連したものかと思いますが、海上幕僚監部からは特に発表はありませんでした。

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http://www.navy-marine.forces.gc.ca/en/fleet-units/frigates-home.page
高速回頭するハリファックス級。

 「ウィニペグ」は全長134m、全幅16m、満載排水量4770トン。[3]1995年にハリファックス級フリゲートの9番艦として就役しました。ホストシップの「ゆうぎり」は全長137m、全幅14.6m、基準排水量3500トン[4](満載排水量は約5000トン)。「ウィペニグ」は「ゆうぎり」より小さいものの、上部構造が低いため安定感がありますね。

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http://www.navy-marine.forces.gc.ca/assets/NAVY_Internet/docs/en/hcm_felex_factsheet.pdf
ハリファックス級の改修箇所一覧。魚雷とソナー以外のほぼすべてのセンサー、戦闘システム、兵装が換装された。

 「ウィニペグ」は就役から20年が経過していますが、2012年に開始された近代化改修で戦闘力が大きく向上しています。その費用は300億円。(性格にはハリファックス級全12隻の改修費が43億カナダドル[6]、約3700億円)。1隻あたりでも3.5億カナダドル(約300億円)に上ります。

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 いよいよ出港。タグボート2隻の助けを借りて離岸。

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 と思わせておきながら、なかなか出港せず。結局レインボーブリッジをくぐったのは11時すぎ。2時間近く待たされてしまいました。
 最初に晴海埠頭のターミナルへ行けばよかった。

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 先導する「ゆうぎり」。遠景にはCNタワーならぬ東京スカイツリー。

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https://en.wikipedia.org/wiki/CN_Tower#/media/File:Toronto_-_ON_-_CN_Tower_bei_Nacht2.jpg

 カナダトロント市のCNタワー。1976年に竣工、高さは553m。見た目はスカイツリーにそっくり。

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 先に出港する「ゆうぎり」。舷側がサビでにじんでいます。

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 「ゆうぎり」に続いてウィペニグも出港。

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 真正面のウィペニグ。

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 ボフォース70口径57mm速射砲Mk3。オットー・メララ76.2mm速射砲と大きさはほとんど一緒に見えます。

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http://www.navy-marine.forces.gc.ca/assets/NAVY_Internet/videos/en/337-felex-trials-460x258_b.mp4

 砲塔周囲の囲いに落ちる57mm薬莢。

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 「ウィペニグ」の艦橋。かなり低い位置にあります。

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 艦橋側面に設けられた木製の手すり。低温時に手が張り付かないようにする対策でしょうか。寒冷地で金属に素手で触ると皮膚が張り付いて「とんでもない事」になるそうで・・・。

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 アンテナマスト。改修で搭載された装置はSMART-S・遠距離用3次元レーダー、SG180シージラフ、短距離低空・対水上レーダー、CEROS200射撃管制レーダー2基。これに加えて遠近1基ずつの航海レーダー、砲管制用と視察用FLIR、ESM装置、IFF応答機、データリンク装置(DLPS)を備えます。

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http://www.defenseindustrydaily.com/modernizing-canadas-halifax-class-frigates-05062/

 これら換装された電子装置の配置図。製造企業も多岐にわたりますが、互換性は維持されているのでしょうか。

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 ラインメタルMASS(Multi Ammunition Soft-kill System)デコイ発射装置。米海軍や自衛隊のMk 36 SRBOCデコイ発射装置と異なり、自由に旋回できます。

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http://www.navy-marine.forces.gc.ca/assets/NAVY_Internet/videos/en/337-felex-trials-460x258_b.mp4

 装填作業の様子乗員。4発弾倉になっているようです。

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http://www.navy-marine.forces.gc.ca/assets/NAVY_Internet/videos/en/337-felex-trials-460x258_b.mp4

 発射されるデコイ。

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 ウィペニグの煙突。ハートの落書きが見えますね。煙突の側面にはメイプルリーフのエンブレム。

 ハリファックス級の機関は17.7MW(約24000馬力)の加速用ガスタービン2基と6.5MW(約9000馬力)の巡航用ディーゼル1基によるCODOG推進。CODOGということでガスタービンとディーゼルの併用は使用できませんが、それでも30ノット+の速力を発揮できるとしています。[3](日・英wikipediaによると速力29ノット)[7]

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 煙突を挟むように設置されたESSM用のMk48垂直発射装置とハープーン発射機。発射機がまる見えになっています。めずらしい配置ですが、ダメージ・コントロール上問題はないのでしょう、たぶん。

 煙突と後部構造の間にあるハープーンはGPS誘導に対応したBlock2型に換装されました。Block2型は地上目標の攻撃が可能になっています。海上自衛隊でも潜水艦用にUGM-84Lサブ・ハープーンBlock2を48発導入するようですが、[8] 対地攻撃能力を期待して、というよりミサイルに対地攻撃能力がたまたま付いていたという感じです。実際に対地攻撃の意図があるかは不明。

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 上部構造から突き出したMk32魚雷発射管。旋回装置はオミットされ、発射管も2本に減じています。カナダ海軍によると使用魚雷は従来と同様にMk46短魚雷、ソナーも現状維持とのことで、対潜戦闘は重視していないのかもしれません。[3] 再装填作業は艦内からできるので、乗員は真冬のカナダでも凍えずに済みそうです。

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 最後にヘリパッド。格納庫には従来のCH-124シーキングかCL-148サイクロン(シコルスキー S-92ヘリバス)など、大きめのヘリコプターを搭載できるスペースを備えています。[3]

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http://www.navy-marine.forces.gc.ca/assets/NAVY_Internet/videos/en/337-felex-trials-460x258_b.mp4

 ヘリコプター格納庫。

 以上、東京に寄港した「ウィニペグ」でした。今回は近くでの撮影はかないませんでしたが、カナダ海軍の訪問は毎年あるそうなので、また来年に期待です。

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http://www.navy-marine.forces.gc.ca/assets/NAVY_Internet/videos/en/337-felex-trials-460x258_b.mp4


■出典(2016年2月6日閲覧)■
[1]海上幕僚監部 カナダ海軍艦艇の来日に伴うホストシップの派出等について
[2]防衛省(日本) 弾道ミサイル等に対する破壊措置等の実施に関する自衛隊行動命令について
[3]カナダ海軍 ROYAL CANADIAN NAVY HALIFAX-CLASS CANADIAN PATROL FRIGATE
[4]海上自衛隊 あさぎり型護衛艦
[5]カナダ海軍 Halifax-class Modernization / Frigate Life Extension Additional Information
[6]カナダ海軍 Halifax-Class Modernization (HCM) / Frigate Life Extension (FELEX)
[7]Wikipwdia ハリファックス級フリゲート /Halifax-class frigate
[8]アメリカ国防安全保障協力局 Japan – UGM-84L Harpoon Block II Missiles