第31回 2015年の海外艦艇公開まとめ(前編)
文:nona
後編では観艦式に参加した、韓国の「テ・ジョヨン」インドの「サヒャドリ」、オーストラリアの「スチュアート」フランスの「ヴァンデミエール」を紹介いたします。
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韓国海軍駆逐艦テ・ジョヨン(大祚榮)
李舜臣級駆逐艦の3番艦として2005年に就役しました。
全長約150m、満載排水量約5500tと、年代と規模は自衛隊の「たかなみ型」に近いようです。
同型google検索で二番目にヒットした「ニコニコ大百科」の記事ではかなり見くだされいます。
が、そういう問題はどこの国の海軍でもあること。
ヘリ格納庫ではプロモーションビデオが上映中。李舜臣が日本と戦った文禄・慶長の役の話もありました。
格納庫にはなぜか自販機。悲しいかなコーラは売っていません。
どことなく日本の中古自販機の雰囲気が。
物資弾薬用のエレベーター。2014年には韓国客船セウォル号の救難活動中、乗組員を挟み込んで事故死させたことがあったそうです。扉の上の写真は遺影、でしょうか。
艦橋。手前にMk41LSが32セル、K-VLSが24セル搭載され、SM-2対空ミサイル、対潜ミサイル、対地ミサイルが搭載できるとのこと。ただ韓国語Wikipediaでは「天竜巡航ミサイルを運用することができない欠陥を抱えている。」と書かれています。詳細は不明。
礼砲。海上自衛隊では練習艦「かしま」にも2門装備されています。戦闘艦に搭載するのは珍しいですね。
艦橋上部にはMk31発射機。
そして船体後部にゴールキーパーCIWSと型名が不明のデコイランチャー。
ゴールキーパーはA-10攻撃機の30mmガトリング式機関砲を使用する大型CIWS。
敵味方識別装置や昼間カメラを持つため、誤射の危険を減じています。
もう一種類のデコイランチャーKDAGAIE MK2。
観艦式期間中、1隻だけ電飾が青いデジョヨン。
オーストラリア海軍フリゲート スチュアート
オーストラリア海軍のアンザック級フリゲートの4番艦として2002年に就役しました。
全長118m、満載排水量3600tと自衛隊の「はつゆき型」より一回り小さな艦です。
「スチュアート」は就役直後から北朝鮮の密輸船拿捕に貢献し、その後はペルシャ湾やソマリア沖で活動。実働の経験が豊富です。
ハープーン発射機は艦首に設置。
特徴的なV字型煙突。アンザック級は速力よりも航続距離や経済性を重視し、機関はディーゼルのみ。
ヘリ格納庫。
SH-2G スーパーシースプライト対潜ヘリコプター。
SH-60シリーズより古い世代のヘリコプターですが、改修のおかげか古臭さはありません。
座席のクッションに親近感が。
国籍マークにはカンガルー。カンガルーは一見可愛い動物ですが、他方ではマッチョでマッシブな一面があることも知られています。
ドアガンにM3M(GAU-21)。M2重機関銃のカスタムモデルです。連射速度を2倍の1200発に増やし、加熱対策の放熱カバーと弾詰まり防止のメタルループも追加。
銃架にはグリップと照準用のホロサイトとレーザーサイト、さらに空きのレールが1本用意。
ヒゲとサングラス。
インド海軍フリゲート サヒャドリ(サヒャディ)
2012年に就役したインド海軍のシヴァリク級フリゲート3番艦です。全長約146m、満載排水量6200トン。建造には9年の歳月をかけ、2012年にようやく就役しました。
シヴァリク級は東側と西側との武装が混在するカオス艦になっています。
インドらしいですが。
「サヒャドリ」の艦首には8セルのVLSがあり、ブラモス超音速対艦ミサイル、またはクラブ対艦ミサイルを搭載します。
艦砲はイタリアのオットー・メララ76.2mm速射砲。
イスラエル製のEL/M-2221射撃管制レーダー。速射砲とバラク短距離艦対空ミサイルの管制に使用。
用途が不明の光学装置。艦砲あるいはミサイルのバックアップでしょうか。
シチェーリ1中距離艦対空ミサイル用の単装発射機。シチェーリは24発が艦内に収容されます。こちらに射撃シーンの動画があります。
シュチーリ用のMR-90射撃管制レーダー。「サヒャドリ」は4つのMR-90を装備。
ロシアのフレガート3次元レーダー。FRESCAN方式とVスキャン(交差スキャン)方式の組み合わせで測高ができますが、2方式を組み合わせた理由は不明。
イスラエルのAMDR三次元捜索レーダー。(イージス艦用のAMDRとは別物)。「サヒャドリ」はバラクとシチェーリの別系統のミサイルを運用するため、3次元レーダーを2系統装備しています。
AK-630CIWS。30mmガトリング式機関砲を使用。弾倉は艦内に埋込み、射撃管制レーダーも別置きのため外観はコンパクト。
ただし射撃管制装置がどこに置かれていたかはわかりませんでした。
RBU-6000ロケット爆雷投射機。
現代では枯れた技術の兵器ですが、まだまだ使い道があるようです。
サヒャドリ艦内。
艦のステルス性を維持するため、シヴァリク級では舟艇は艦内に格納できます。
海自の護衛艦でも完成予想図にはあるものの、残念なことに就役時には省かれる設備です。
乗組員と等身大パネル。
ヘリコプター格納庫。
夜のサヒャドリ。
フランス海軍フリゲート ヴァンデミエール
フロレアル級フリゲートの5番艦として1993年に就役しました。
「あぶくま型」と年代は近いのですが、全長約94m、満載排水量2900トンとより小さく作られています。
武装もかなり省略され、速度は20ノットとかなり低速。
そんなヴァンデミエールはフランス領ニューカレドニアに配備され、フランスが持つ太平洋領土を警備しています。
上部構造の20mm単装機関砲
M2重機関銃。
エグゾセ対艦ミサイルやミストラル対空ミサイルも装備できるそうですが
見学時は撤去されていました。
AS 565ヘリコプターの格納庫。
奇麗な艦内。
艦橋。撮影OKは珍しいですね。
艦内図。
酒樽らしきもの。
飾り気のない「ヴァンデミエール」。
以上、前後編合わせ7隻の外国艦艇でした。「マスティン」「レーガン」「テ・ジョヨン」「サヒャドリ」は「全部載せの戦闘艦」でしたが、「ゲティズ」「スチュアート」「ヴァンデミエール」はむしろコストを重視した印象を受けました。
海上自衛隊では「全部載せの戦闘艦」が多い傾向にありますが、「多機能護衛艦(DEX)」ではこれまでと異なる設計がなされる、とも言われています。一体どんな艦が求められているのか、どのような形でコストを削減していくのか。来年も目の離せない軍事界隈です。
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コメント
あと「スチュアート」の艦載ヘリは、機体の特徴を見る限りではシーホークのような気が。
SH-60そのまんまでした。「古臭い感じがしない」とまで書きながら気付きませんでした。
ご指摘ありがとうございます。
EON-51電子光学照準システムにつきては
日本語版wikipediaの「シヴァリク級」が検索でヒットしたものの、
参考文献のサイトはリンク切れ。
英語版wikipediaにはEON-51の記述がありません。
ただ別ページではインド海軍の「Mk.IV LCU」で機関砲照準用に搭載された、とありました。
https://en.wikipedia.org/wiki/Mk._IV_LCU
ここで検索ワードをいくつか試した所、
公式の広報資料と思しきPDFを得られました。
http://drdo.gov.in/drdo/pub/newsletter/2007/sep_07.pdf
ただしセンサーの配置は現在のものと異なるようです。
「サヒャドリ」の光学機器については「世界の艦船」か「軍事研究」のバックナンバーを調べてみれば判ると思うので、機会があれば調べてみては。
自分で調べてみれば、調べたい事以外にその過程で知り得たものも自分の知識とすることに出来るから。
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