第30回 2015年の海外艦艇公開まとめ(前編)
文:nona
今回は年末ということで、2015年に一般公開された7隻の海外艦艇をまとめました。
前編ではトルコのフリゲート「ゲティズ」アメリカの駆逐艦「マスティン」空母「ロナルドレーガン」について紹介いたします。
売り上げランキング: 69,043
トルコ海軍フリゲート、ゲティズ
6月5日、東京の晴海埠頭に訪れた「ゲティズ」。
「エルトゥールル号」遭難事故の慰霊に訪れた折、東京の晴海埠頭へ寄港しました。
全長約136m、満載排水量約4000t。元はアメリカ海軍のアメリカのペリー級フリゲート「ジョン・A・ムーア」。
自衛隊では「はつゆき型」護衛艦が規模や年代で近しい関係にありますが、設計思想は全く異なります。
今月にはエルトゥールル号遭難事件を題材とした映画も公開されたそうです。
従来のペリー級ではスタンダードミサイルを搭載するにもかかわらず、3次元レーダーは非搭載、ミサイル用射撃管制レーダーも一つにするという割りきった設計でした。
そこでトルコ海軍は「ゲティズ」MK41VLSとESSMの搭載に加え新たにSMART-Sレーダーを追加しています。
誘導は従来とに同様たまご型のレドームに収められたMk92射撃管制レーダーが実施します。
同艦の小火器類は珍しいドイツ系装備でした。
警備HK33(G3?)小銃。
こちらはMG3機関銃。MG42機関銃をNATO弾仕様に変更されましたが、銃身交換は従来と同様に右側のラッチから耐熱手袋で行います
マウントレールが付いたモデルも。
こちらはM2重機関銃。防楯裏には各国の対艦ミサイルの諸元と飛行特性が書かれています。
ペリー級の「スターク」はイラン・イラク戦争時、イラク側からエグゾセ2発を誤射されたことがありますが、沈没を免れ艦の優秀さを示しました。
ただ、被弾する前にミサイルを発見すべきですから、正確に動作しなかった電子戦装置は事件後に改良されたそうです。
76.2mm速射砲とMK92射撃管制レーダー。上部構造物に背負式で置かれています。背後にあるMk92射撃管制レーダーはミサイル誘導には対応しないそうです。
CIWSも艦尾方向に1基あるのみ。
上部構造から突出した小さな煙突。ペリー級は2基のガスタービンを持つものの、単軸推進のため速力は27ノットに過ぎません。しかもガスタービンエンジン2基は同区画にあるため、同型艦「サミュエル・B・ロバーツ」がペルシャ湾で触雷した際に2基とも浸水しています。幸いペリー級はアジマススラスターを備えるため、これで撤退に成功したようです。
「ゲティズ」艦内。
ここから先は撮影はNGでした。
ホストシップの護衛艦「たかなみ」艦尾から見る両国の海軍旗。日本は白地に赤い太陽、トルコは赤いフィールドに白い三日月と星。アジアの東と西の端の国であることを象徴する、印象的な意匠です。(よく見ると国旗と海軍旗では星の形の図案が異なるようです)
アメリカ海軍駆逐艦マスティン
アメリカのアーレイ・バーク級駆逐艦の39番艦として2003年に就役、2006年からは横須賀に配備されています。全長156m、満載排水量9600tの巨艦ですが、乗員は350名程度。大戦中のフレッチャー級よりも少しい多い程度ですから、乗員数ベースでは未だ「駆逐艦」です。
「マスティン」は近接武装が強力で防弾設備も充実しています。
重機関銃用の銃架。グリップのトリガーを絞ると連結された押し棒が前進し、M2のトリガーを押してくれます。M2のトリガーはかなり重いらしいので、使いやすくする工夫でしょうか。
銃架の足回りには約1インチの防弾プレートで防御されています。防弾鋼であれば12.7mm徹甲弾を止める厚さですが、相手が(北朝鮮工作船のように)14.5mm機関銃を備えていた場合
こちらのMK38 25mm機関砲で対処します。
複合材のヘルメット。
重防御な「マスティン」ですが見学時は少々汚れていました。ヘリパッドにはサビが浮き、
格納庫の機械もぼろぼろに。海上で艦が錆びるスピードは非常に早いと聞きますが
ありのままの姿を公開するのは珍しいですね。
壁に差し込まれた太い給電ケーブル。
実は「マスティン」は陸からの給電を受けていました。
どうやら横須賀基地には艦艇向け給電用の発電所があるそうで(左奥の煙突が複数並ぶ施設)各々の艦で発電するよりも経済的で低公害、とのこと。海上自衛隊でも採用される日も来るのでしょうか。
アメリカ海軍航空母艦、ロナルド・レーガン
ニミッツ級航空母艦の9番艦艇として2003年に就役しました。全長333m、満載排水量10万トンの巨艦です。今年の横須賀配備前から日本には数回寄港しており、2011年にはトモダチ作戦にも参加しています。
空母の一般公開はとてもレアなイベントなので、非常に長い行列ができました。2km超の行列を成していたとの話も帰ってから知りました。ただ10時ごろには解散が指示されたらしく、多くの方は入場できませんでした。
格納庫。
スーパーホーネット用のF414ターボファンエンジン。
排気側から除く内部。
格納庫の分厚い防火シャッター。
銭湯めいた壁画。
アメリカ海軍旗ファースト・ネイビー・ジャック。
Dont tread on me(俺を踏むな)の、真意は別にあるようですが。
エレベーター。飛行甲板まで10秒かからずに上昇。
自衛隊の「ひゅうが型」や「いずも型」では昇降に40秒ほどかかります。
レーガン元大統領のメメント。米空母の名前は海軍功労者の指導者から選ばれます。レーガン元大統領は任期中、アメリカの軍拡を進めた人物です。
手前はAGM-114ヘルファイア。射程は4.5海里(8km)ヘリコプターに搭載し、舟艇などの攻撃に使用します。
AGM-65マーベリック対地・対艦ミサイル。誘導方式はセミアクティブレーザー方式、射程は12海里(22km)以上。
AIM-120空対空ミサイル。
AGM-154 JSOW滑空クラスター爆弾。最大射程は50海里(92.6km)。ジェットエンジンを搭載する新型は500km以上の射程を発揮します。自衛隊もJSOWに類する兵器の開発を構想しており、現在は弾頭部の研究が行われています。
GBU-38 (?)500ポンド(227kg)のGPS/INS誘導爆弾です。
GBU-24(?)2000ポンドのレーザー誘導爆弾。
天井に吊るされた増槽。かつて米空母では飛行機ごと天井に吊るした時代もあります。
飛行甲板。
飛行甲板から見た揚陸指揮艦ブルーリッジ。
「レーガン」の武装(たぶん)Mk38 25mm機関砲。
Mk31発射機。RIM-116の発射機です。
ファランクスCIWSとESSM用のMk25発射機。
先程のイージス艦と同じく給電用のケーブルが。
原子力艦なのに電気を外からもらうというのは不思議な感じです。
(逆に送電していたのかもしれませんが)
後編に続く。
売り上げランキング: 250,176
コメント
特に給電用ケーブル繋いである状態は始めて見た
コメントする