第5回 ソマリア沖・アデン湾における海賊対処と自衛隊のジブチ拠点

文:nona

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http://www.mod.go.jp/js/Activity/Anti-piracy/anti-p3.htm

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 ソマリア沖で深刻化する海賊問題に対処するため、2009年3月13日に海上警備行動が発令されから早くも6年。海賊対処で大きな成果を挙げる他、近隣諸国からの邦人の保護などなにかと期待されるジブチ拠点。一方では逆に戦争の引き金となるのではないか、と考える方もいます。ユーラシア大陸の反対側、灼熱のジブチで活躍する自衛官の姿に迫りましょう。

■その1:施設編■

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 GoogleEarthでみるジブチ国際空港。紅海に面しています。

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 黄色の線で囲んだエリアが自衛隊のジブチ拠点。ジブチ国際飛行場北西の一角を使用し、2011年6月に開設されました。東西に約250~300m、南北に約500mの長さがあり、面積は12ヘクタールとのこと。

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記念撮影で使用されるゲート。長期の使用を念頭に、しっかりとした作りです。

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ジブチ拠点を訪れたジャーナリストの池上氏。

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 温度計は54℃を示しています。ただし温度計の設置環境を考慮すると実際の温度は幾分下がるかもしれません。ジブチの年間平均気温は29.9℃。紅海に面しているため湿度も高めで年間平均湿度は70%前後と蒸し暑い土地のようです。ところが湿度の割に雨は非常に少なく、1年の平均降雨日は僅か17日。

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P-3C用の格納庫。格納庫は1機ぶんのみで、格納庫の外に大型機3機分の駐機スペースを備えています。

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使用する建物の殆どはクーラー付きのプレハブ構造です。

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拠点内の食堂。ジブチ拠点の構成員の多くは海上自衛官。そのためか金曜日がカレーの日となります。

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食事の様子。

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他駐留国を招いての浴場見学。壁には富士山。

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レクリエーションやレセプション用の体育館も併設されています。

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隊員の部屋。任期終了に伴う荷造をしている、とのこと。個室なので幹部用かもしれません。

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 一般的な自衛隊PXと同等の国内商品が並び、カフェスタンドも併設されています。支払いはドル。開設当初は現地フランス人の綺麗な売り子さんがいたそうですが、後に「中国の女スパイ」と文藝春秋が書き立てています。当然ですが文芸春秋は訴えを起こされ、結果名誉毀損にあたるとの判決がなされました。こんなことが起きていたなんて。


■その2:隊員編■

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 左奥が海上自衛隊員、右手前が陸上自衛隊員です。隊員の服装は陸自と海自でも異なり、肩の国章など細部にもこだわりがあるようです。陸上自衛隊員は宇都宮の中央即応連隊などを中心に70名が派遣され、海上自衛隊員の航空要員は110名ほどが主に八戸、厚木、鹿屋、那覇のP-3C飛行隊からローテーションで派遣されています。

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 陸自隊員は砂漠迷彩を着用しています。以前イラク派遣時には陸上自衛隊では使用していませんでした。かつてのイラクで砂漠迷彩を使用しなかった理由は諸説ありますが(緑色はイスラムの神聖色である伝々)結局のところ一括で購入する予算の都合かもしれません。

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警備車両として軽装甲機動車が配備されています。隊員と同じく宇都宮の中央即応連隊の車両です。

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 夜の見回りに参加する警務官(MPあるいは憲兵)。外務省の渡航情報によるとジブチの治安は「十分注意」ではあるものの、イラクのサマワと比べれば遥かに安定しています。サマワであれば夜間にパトロールでもしようものなら隊員側が殺害されてもおかしくないほどの状況でした。

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http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/staff/djibouti/05.html
 自衛隊員が作成の協力した日本語のメニュー。日本語のメニュー表がある場合や、日本料理が食べられるお店もあるそうです。飲料水の調達も現地の購入によって賄っています。

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 ジブチにはフランス軍駐留部隊が駐留し、ジブチ独立後もフランス軍がジブチの国防を助けています。戦力はAMX-10RC装輪戦闘車やVAB装甲車を含む2個歩兵連隊、加えて上陸用舟艇やミラージュ2000戦闘機も運用しています。

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 2001年からはアメリカ軍がジブチ国際飛行場に駐留していおり、この駐屯地をキャンプ・ルモニエと呼んでいます。さらにソマリア沖海賊の問題が深刻化してからスペイン、ドイツ、イタリアが分遣隊を派遣しています。最近では中国も参加を検討しているとか。

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 ジブチ軍の装備を見学する自衛隊員。ジブチ軍は総数約5000名の小さな軍隊で写真のMi-24も実動機はたった2機とのこと。しかも戦闘機を持たない空軍がその代わりに配備しているものです。このような状況で領土問題を抱えるエリトリア、紛争状態のソマリアやイエメンといった隣国に備えなくてはなりません。そのためヤドカリがイソギンチャクを貝殻に付けるように、ジブチは宗主国だったフランスや後にアメリカの軍隊を駐留させています。加えてジブチの主な産業はエチオピアなど内陸国との中継貿易ですから、近海での海賊の出現は経済にとって大きな打撃でした。このため以前にも増して外国の軍隊に依存するようになっています。

■その3:航空機編■

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 海上自衛隊のP-3C哨戒機2機が常時配備されています。ジブチ拠点はこのためにあると行っても過言ではありません。アメリカ、スペイン、ドイツ部隊もP-3を運用しています。

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 KC-767空中給油機が定期的に飛来し輸送任務に従事しています。KC-767は貨物輸送も可能な機体であり、キャビンに最大32tの貨物を搭載できます。5t積載するごとに航続距離が約1000km低下しますが、日本からジブチであれば20tの貨物を積んだまま飛行可能です。

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 上記のKC-767も人員の輸送に対応しますが、保有機はたったの4機。ローテーションの問題からか人員輸送は前述の民間チャーター機で行われるようです。

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写真は日本航空ですが、全日空の場合もあるようです。

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 航空自衛隊のC-130H型輸送機(左)。C-130Hは車両などKC-767に搭載できない大型貨物の輸送に対応しますが、航続距離は約4000km(貨物5t)と短いものです。おまけに日本からジブチまで無数の紛争地域を避けなくてはならず、何度もテクニカルランディング(給油のための着陸)が要求されます。

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http://www.mod.go.jp/msdf/formal/notice/index.html
 なお上記の期待に加え、2015年の7月22日ごろにかけて、P-1哨戒機の実地試験が行われました。
今後は海上自衛隊のC-130R輸送/空中給油機やXC-2輸送機の参加も見込まれます。
邦人救出拠点として、中央即応連隊に導入が予定される輸送防護車(ブッシュマスター装甲車)の輸送も行われるかもしれません。


■その4:水上部隊編■

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 ジブチ拠点から発進するP-3Cと共同して2隻の護衛艦が船団を守ります。
護衛艦内に司令部が開設されている他、特別警備隊員や海上保安官も乗り組んでいます。


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 乗組員の服装も現地向けのものが採用されています。曹士が着用している水色の作業服ですが、日本の黒潮よりも明るい現地の海を意識しての色合いです。

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 しかし幹部自衛官はベージュ。(砂嵐には有効かもしれない)また曹士においても通常色の作業服も併用されている様子。服装についてはまだまだ移行途上なのかもしれません。ちなみに赤青の双眼鏡は艦長さんの階級(2佐)であることを示しています。

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 護衛艦には海賊との戦闘に備え、特別警備隊員が乗り組んでいます。肩の日章旗も低視認の色合いに変更されています。

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 89式での射撃訓練。ヘルメットにジークジオンなステッカーが貼ってあります。

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 手前の装置は長距離音響装置LRAD(エルラド)です。強力な不快音を発生させることで(陸上では)暴徒を鎮圧するために使用します。以前に捕鯨船に搭載されシーシェパードの撃退に使用したことがあり、Youtubeで作動音を確認できます。大音量の拡声器としても使用可能です。

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 M2の射撃訓練では、オイル缶やらポリバケツで薬莢を回収する様子が見られます。それでいいのか自衛隊。


参考および画像引用元
防衛省 統合幕僚監部 ソマリア沖・アデン湾における海賊対処
http://www.mod.go.jp/js/Activity/Anti-piracy/anti-piracy.htm

防衛省 自衛隊 ソマリア沖・アデン湾における海賊対処について 写真一覧
http://www.mod.go.jp/j/approach/defense/somaria/photo.html

海上保安庁 ソマリア沖・アデン湾における海賊対策
http://www.kaiho.mlit.go.jp/mission/chian/anti-piracy.html

外務省 世界一周「何でもレポート」ジブチ便り
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/staff/djibouti/index.html