台湾空軍清泉崗基地營區開放・前編

文・写真:nona

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 中国旅行から4週間後、今回は2泊で台湾へ行ってまいりました。お金も時間もない旅でしたが、台湾は交通の便が良く(円安とはいえ)物価も安いので気軽に楽しめるのが嬉しいところ。

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 最初の一枚は台湾の台中駅。ここから会場の清泉崗空軍基地まで翌朝にタクシーで移動しました。料金は500台湾ドル(1800円)ほどです。

 
台中駅までの道のりは、前日の夜にLCCの飛行機で日本を出発、深夜に台北桃園空港に到着し、在来線の特急電車で深夜に台中駅へ。予約していたドミトリーに宿泊、朝7時に出発の過酷な12時間でした。

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 清泉崗空軍基地のゲート。隣接する台中空港ターミナルとは反対側にあります。外国人の見学にあたって、開催の1カ月前までに国際郵便で基地宛の見学申請を送る必要があります。よって入場の難度は高め。でも無料です。

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 清泉崗基地の広大なエプロン。かつて清泉崗基地にはアメリカ空軍B-52爆撃機が駐留し、現在は台湾の戦闘機メーカー、AIDC(漢翔航空工業)が工場を置いています。2009年のニュースではありますが、AIDCから日本の三菱航空機のMRJへ、フラップやラダーなど5部位が供給されることが発表されています。

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 基地内には数多くの戦闘機シェルターが置かれていました。(写真のものは建材置き場ですが)。台湾島は日本列島のように縦深がないため、戦闘機を防護する設備が欠かせません。

 
対する中国軍は清泉崗基地にそっくりの演習場を砂漠地帯に作り、来る実戦に備えていたことが知られています。やはり台中関係は穏やかではない様子。

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 この日最初のフライトは清泉崗基地所属のF-CK-1。

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 続いてF-16A 戦闘機。ながらくアップデートされずにいた同機でしたが、ついに来年からF-16Vへ改修され、レーダーはAN/APG-83SABR(セイバー) AESAレーダーへ換装されます。

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 台湾空軍のミラージュ2000戦闘機。おフランス製のΔ翼戦闘機です。

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 続いて台湾空軍のアクロバットチーム、サンダータイガース(雷虎特技小組)の飛行展示です。一般にアクロバット飛行を公開したのは、2014年の死亡事故以来とのこと。

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 使用機はAIDCで開発されたAT-3「自強」練習機。初飛行は1980年で、現在はF-CD-1をベースにXAT-5という後継機の開発が進められています。

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 「六機與單機對衝的特技」と呼ぶ大技。編隊と単機が空中ですれちがいました。

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 編隊宙返り。

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 向下式炸彈開花。ブルーインパルスではレインフォールと呼ばれる大技です。そういえば空が曇ってきました。本当に雨が降りそう。

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 バーティカルキューピッド…のはずですが、スモークが雲に重なり視認できません。

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 サンダータイガースの着陸後は、各戦闘機の飛行展示。まずはF/CK-1。垂直尾翼が特別塗装の機体です。

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 F-CK-1はIDFや経国と呼ばれる台湾の国産戦闘機で、1996年に配備が開始され、130機が導入されました。

 
1970年代に台湾は次期戦闘機としてF-16の導入を希望していましたが、同時期にアメリカと台湾が国交を絶ったことで、同機の輸出は認可されませんでした。しかしアメリカは自国企業との協力による戦闘機開発を認めたため、台湾はF-CK-1の開発が可能となりました。ただしF-16の導入により生産数は削減されています。

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 F-CK-1の機体設計にはF-16を開発したジェネラルダイナミクス社が協力しており、各所にその特徴がみられます。しかし、こう下面から見るとノースロップ社のF/A-18にも似ているような。ちなみにノースロップ社はF-20戦闘機を台湾に提示したものの、売り込みに失敗しています。

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 F-CK-1のエンジンはギャレット社(現ハネウェル)TFE1042-70の双発です。これはAT-3練習機のエンジンを戦闘機用に強化したものですが、最大出力は二基合わせても82kN。F-16の2/3、F/A-18Cの1/2に過ぎません。それでも機体規模が近しいJAS-39、中国のFC-1と同等の推力重量比を確保しています。

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 次はミラージュ2000。

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 台湾では1996年から単座の2000-5Eiを48機、複座のDiを12機導入しました。導入から20年が経過していますが、F-CK-1やF-16のようなアップデートがあるかは不明。台湾空軍における立ち位置が微妙な機体です。ただ、1995年の台湾海峡危機の際、フランスはアメリカに先んじてミラージュ2000の売約を取り付けています。当時は貴重な即戦力でした。

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 ミラージュのような無尾翼デルタの登場は1950年代には登場していたものの、ミラージュ2000ではフライバイワイヤなど先進技術を用いたことで、デルタ翼機ならではの機動性を維持したまま、不安定な操縦性の改善に成功しています。台湾空軍でも低速で迎角をとったまま水平飛行や、機首で円を描くように機体を振るデモを実施していました。

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 最後はF-16A戦闘機。台湾には1997年から導入が開始され恐らく150機が調達されました。元はアメリカ州軍で使用されていた機体らしいのですが、何度も改修が重ねられ、もう何が何だか。

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 F-16は3機の戦闘機の中で一番パワーが感じられました。「どうぞ回してみてください、いい音でしょう?余裕の音だ、馬力が違いますよ」。

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 F-16の着陸後、ほどなくして雨が降り出してしまい、午後の空中分列式は中止となりました。残念ながら致し方ありません。

 
次回は地上展示兵器について解説いたします。


参考

戦闘機年鑑2015-2016(青木謙知 ISBN978-4-86320-975-6 2015年3月30日)

世界の航空機 1 最強のジェット戦闘機(デアゴスティーニ編集 青木謙知監修 ISBN 978-4-06-256754-1 2004年8月25日)

AIDC IDF經國號戰鬥機<http://www.aidc.com.tw/tw/military/idf>

なぞの施設AREA09Annexへようこそ 中国奥地の砂漠に台湾空軍基地そっくりの地上絵:台湾侵攻作戦の演習場か<http://area09.air-nifty.com/annex/2006/08/post_c4a2.html>

三菱航空機 台湾のAIDC社がMRJのスラットやフラップなど5つの部位を供給<http://www.flythemrj.com/j/news/date/news_090122.html>

フォーカス台湾 主力戦闘機F16、2017年から改良開始へ 2022年の完了目指す/台湾<http://japan.cna.com.tw/news/apol/201510230007.aspx>

ロッキードマーチン F-16V Takes Flight <http://www.lockheedmartin.com/us/news/press-releases/2015/october/f-16v-takes-flight.html>

平成28年度防衛白書 第I部 第2章 第3節 4台湾の軍事力など<http://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2016/html/n1234000.html>

臺中觀光遊網 105年臺中市清泉崗航空嘉年華<http://travel.taichung.gov.tw/zh-tw/Event/NewsDetail/1795/105%E5%B9%B4%E8%87%BA%E4%B8%AD%E5%B8%82%E6%B8%85%E6%B3%89%E5%B4%97%E8%88%AA%E7%A9%BA%E5%98%89%E5%B9%B4%E8%8F%AF>