『大砲とスタンプ』
講談社
速水螺旋人 (著)

大砲とスタンプ(1) (モーニングコミックス)  

文:誤字 様

 「素人は戦術を語り、玄人は戦略を語り、プロは兵站を語る」と言われますが、この漫画は珍しい兵站が主題の戦争漫画です。

大砲とスタンプ(5) (モーニング KC)
速水 螺旋人
講談社 (2015-12-22)
売り上げランキング: 17,253

 舞台は50年代から60年代くらいの技術を持つ架空の世界、ロシアっぽい雰囲気の大公国とドイツっぽい雰囲気の帝国の同盟軍がトルコっぽい雰囲気の共和国と戦争中。

 主人公マルチナは物資の輸送や補給等の後方支援が任務の大公国兵站軍の新米少尉で、やる気の無い上司や帝国の優秀な参謀を友に兵站軍を見下す味方の陸海空軍や腐敗した軍上層部と相争い、余力を持って共和国軍と戦います。

 「兵站はなんだか難しそう」「兵站話なんて退屈な話じゃないの?」って心配は無用、この漫画は事務屋が頑張るミリタリーほら話、物資調達に七転八倒するする中で戦費調達の為に味方の装甲列車を襲撃したり飯がまずいと反乱を起こした味方海軍歩兵の相手をしたり敵補給拠点を巡って味方の空軍空挺と競争したり敵国共和国と色々あって取引したりと、ありえないけどどこかで聞いたような、面白おかしくも色々と考えさせられる漫画です。

 また毎回作者の趣味全開のビックリ兵器が出てくるのも見所のひとつ、有翼ロケット装備の重装甲砲艦に始まり攻城戦車、野戦炊事ヘリコプター、重エアロサンなどなどの架空世界ならではの珍兵器が多数登場します(そして大体活躍せずに破壊される)

 軽いタッチで読みやすく、軍隊内の対立・汚職・官僚主義、時にガス戦争といった重い題材も扱いながらも生真面目な主人公と個性的な仲間たちが知恵と書類と力技で解決(?)していく痛快ミリタリーコメディ漫画となっています。

 よくある撃ったり撃たれたりの血肉沸き踊る戦いを書いた漫画では無く、リアリティにそれほどこだわりを持った漫画でもありませんが、なんとなく軍事について分かってきた、珍兵器とか面白いって興味を持ち始めた人から、なぜに補給や輸送と言った兵站問題はうまく行かないのか? 軍隊の非効率な官僚制とかなんとかならんものかと悩む業の深いマニアまでオススメの漫画です。

 第一話のためし読みが出来ますの気になった人は是非。
 最初はマルチナ少尉の生真面目で融通の利かない新米少尉ぶりが気になるところですが、だんだん問題児の多い兵站部に毒されながらも相変わらず空気を読まない活躍で”突撃タイプライター”の悪名を積み上げていきます。

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