【読者投稿】オーストラリアの潜水艦事情

文:タナカ

Tony Abbott pledges open tender for submarines to win over SA Liberals
http://www.theguardian.com/australia-news/2015/feb/08/tony-abbott-pledges-open-tender-for-submarines-to-win-over-sa-liberals

 個人的に興味があって追求している「オーストラリアの潜水艦事情」に関する話題を提供させていただきます。

 当初は、日本の潜水艦の導入につき(部分的な技術支援にせよ完成品の導入にせよ)前向きであるとされていたオーストラリア政府ですが、アボット首相率いる自由党に対する逆風の高まり等から、コリンズ級の後継につき、政府の恣意が介入しにくい入札が行われる方針へと傾きつつあるとの報道です。

日本が潜水艦のセールスで台頭する以前はドイツの216級が有力視されていたらしく、比較的ドイツは楽観視してたようですが、アボット政権の日本への急傾に慌てたのかメルケル首相自らが「政治的中立性」等をメリットとして売り込みに奔走する事態となっています。

214級に関する悪評等はありますが、世界的に潜水艦を販売しているドイツに対する信頼性に加えて、オーストラリア国内での建造を打ち出している点から、ドイツの提案にオーストラリア国民は肯定的な見方をしているように感じます(もっともオーストラリア人の友人に聞くところでは、日本と同じく軍事に関する話題ということもあって当該話題に関する関心事態が大きくはないらしいですが)。

ネットや雑誌を見る限り当初はかなり日本側が優勢との意見が多数を占めていましたが、先行きがかなり不透明になってきました。
一部の人は、日本から導入しなければコリンズの二の舞になる、とも主張しますが、潜水艦部隊の刷新が彼の海軍にとって非常に重要な位置付けである以上、コリンズやホバートの二の轍を踏むような事態は防止するような策を講じていると考えます。どのような選定結果になるにしろ、です。

また、オーストラリア人のブログなども拝見すると、オーストラリアと日本とでそうりゅうの性能に関する認識の差があるようにも感じました。
我々にとっては国産ということもあり色眼鏡を通してしまいがちですが、オーストラリアにとってみれば日本の潜水艦は完全に未知のものであり、中には「ロシア以上に性能がわからない」とする意見もありました。

軍首脳部には両国の一般人以上に情報を持っている者もいることが想定されますが、我が国の潜水艦の機密が少なくとも一般人のレベルではほぼ完璧に漏出されていないという観点からみれば喜ばしいといえるでしょう。

しかし、オーストラリアの国民にとってみればAIPを装備している分空間が圧迫されており、航続距離が少ないのではないか(報道ではコリンズの半分程度とされています)等の性能上の不安が呈示されています。
日本にとってみれば虎の子の存在である以上、現状のようなオーストラリアにたいしてそれを供給することに関する否定的な見解も国内にあります。

とりとめもなく多くの争点とおぼしき項目を吐き出してしまいました。
本報道の意義を一言でいえば、オーストラリアが建前としては日本への傾倒を撤回した、と解します。

なお、ここまでの記述から、私の見解としてオーストラリアに対する潜水艦の供給について反対であると思われるかもしれませんが、個人的な見解としては政治上の戦略的な観点からもこの件に関しては協力することが望ましいと考えております。
ただ、現実問題として両国の間に一定の溝があると考えていることも事実です。

<管理人>
非常に素晴らしい内容でしたのでほぼそのまま掲載させていただきます。

タナカ様にはお礼のメールを送信いたしましたが、返送されてしまいました。
もし、掲載に問題があればご連絡ください。


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